再会
「じゃんじゃじゃーん! ティセちゃん、ふっかーつ!!」
スマホの画面から勢いよく飛び出してくるティセ。
彼女は元気に両手両足を広げ、その存在を強く主張してくる。
「…………」
「…………」
ティセの視線の先では固まる海斗達の姿。
それはまるでコントの一場面のようで――
鵜坂にいたっては、口をぽかーんと開けたまま、完全に硬直していた。
「……あれ?」
反応がないことに疑問を覚えたのだろうか。
ティセはこちらを見つめながら、首を傾げる。
彼女は何かを探るように、海斗の周囲をくるくると飛びまわる。
一通り確認が終わったのだろうか?
目の前で制止したティセは、上目遣いでこちらの顔を覗き込んでくる。
「ほらほら、マスター! こっちこっち……あれ? 見えてない?」
彼女は両手を振りながら、ここにいるよと全身を使ってアピールする。
しかし海斗はなんの反応も示さない。
「むむむむむ……えっ!?」
どうしたものかと、唸り声をあげてたティセ。
その表情に浮かんでいた困惑の色が、一瞬で塗り変わる。
「ちょ、マスター!? ど、どうしたの!! ええっ!?」
ティセは一点を見つめながら声をあげる。
慌ただしく動く両手から、彼女の心情が伝わってくる。
視線の先には海斗の顔。
見つめる彼女の瞳には、頬を流れる雫が映っている。
ティセはあわあわと手を振りながら、助けを求めるように周囲に視線を巡らせる。
突然の涙を目にしたことで平静を失っているようだ。
「……ッ」
「わぷっ!?」
海斗は無言のまま、ティセをぎゅっと抱きしめる。
力が強すぎるのだろう、彼女は少し苦しそうにしていた。
しかしすぐ優しい笑みを浮かべ――
「マスター……ただいま」
「ああ……おかえりティセ」
首元にぽんぽんと触れる、小さな手の平――
そしてお互いの温もりを感じ合いながら――
二人は帰還の挨拶を交わしあった。
「えっと……幻覚、とかじゃないですよね?」
恐る恐ると言った様子で鵜坂が声をかけてくる。
その視線は海斗の首元から、チラリ顔を出す少女に注がれていた。
背中に隠れならティセは様子を窺っている。
どうやら彼女にとっての見知らぬ人物、鵜坂を警戒しているようだ。
なにをそんなに訝しんでいるのか?
不思議に思っていた海斗だったが、少し考えればその理由は明白だった。
プロテクター付きの黒い全身タイツを着た女性。
しかもフルフェイスのヘルメットをかぶっている。
初見であれば完全にヤバイ奴にしか見えない。
これは警戒されても仕方ないだろう。
「ほらティセ……」
「で、でもマスター……」
海斗は挨拶するように促す。
しかしティセは怯えた様子で前に出ようとはしない。
とはいえ彼女を責めることは出来ないだろう。
目の前にいる相手は、夜道で出会えば秒速で通報すべき容貌。
むしろ海斗が側にいるとはいえ、逃げ出さないティセを褒めるべきだ。
「大丈夫だ。ちょっと……いや、かなり……相当怪しいけど、安心していい」
「マスターそれ……なにひとつ安心出来る要素がないんだけど……」
たしかにティセの言う通りだ。
自分で発した言葉のはずなのに、一ミリも安心出来る要素がない。
「ちょっ、センパイ! 私ってどんな扱いなんですか!?」
目を吊り上げた鵜坂は――ヘルメットに隠れて表情は見えないので想像なのだが――こちらに迫ってくる。
「……うおっ!?」
「……!?」
海斗は思わず声を上げ、仰け反ってしまう。
距離を詰めてきたのは仮○ラ○ダーのような相手。
戦闘を終え冷静になったことで、その異様に若干恐怖を感じてしまった。
「……センパイ」
「悪いんだけど、ヘルメットを外してくれ」
少し悲しそうな声を出す鵜坂に、助言する。
「えっでも……」
「流石にちょっと……な?」
だがそこ――ヘルメット――になにかこだわりでもあるのだろう。
少しだけ抵抗を見せる鵜坂。
だがこちらが折れないと気付いたのか、おずおずと素顔を見せる。
「これで大丈夫だろ……ほら、ティセ」
小さな少女はこくりと頷きながら、海斗の前に出て――
「アタシの名前はティセ! マスターのサポート役だよ!!」
元気に挨拶をする。
しかし若干恐怖が残っているのだろう。
海斗の着ているシャツ、その肩口を掴んだまま離そうとはしない。
「あっ、私は……」
そんなティセに視線を合わせながら、鵜坂は自己紹介を始めた。




