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変わり果てた場所

「やっぱりそうか……」


 自室の中央にあるテーブルの上。

 広げられた紙片に視線を向けながら海斗は呟く。


 細かい図形が記されているソレは、仕事帰りにコンビニで調達した物。

 駅から東側が描かれた地図だ。


 最近のコンビニは凄い。

 まさか必要な箇所だけ印刷して購入出来るとは思わず、普通に驚いてしまった。


 購入したばかりの地図だったが、既に原型を留めていない。

 紙面は赤い印が無数に書きこまれている。


 一見無作為に見える赤いマーク。

 しかしそれには明確な意図がある。


 今まで遭遇したゴブリンの位置情報。

 ヤツらの出現ポイントを、記憶の限り書き出したのだ。


 最初は全く思いもしなかったこと。

 だが出現率が上がったことで疑念を持った。

 ヤツらの分布に、ある一定の法則があるのではないかと。


 それはこうして形にすることで明確になる。

 記された赤色が、ある場所を中心として円形に広がっていたのだ。


 海斗の指先が地図の表面をなぞり――一点で停止する。


「…………ッ」


 思わず息を飲む。

 海斗はその場所をよく知っている。


 ある意味、当然の結果だったのかもしれない。

 緑の異形が街に溢れた時点で、なぜ疑わなかったのか。

 それは一番最初に思いつくべき可能性だろう。


 だが海斗はそう思いたくなった。

 あの日の戦いが。

 必死になって達成したことが、無駄だったと否定されてしまうようで――


 だが物理的に地図上に示されたマークは、無情な現実を突きつけている。

 認めるしかないだろう。全ての元凶は――あの公園だ。

 気付いてしまった以上、再びあの場所に赴かなければならない。


 海斗は立ち上がり、引き出しに仕舞い込んでいたモノを取り出す。

 手の平には二つの球体。

 ビー玉程度の大きさの――マテリアル。


 今は特に用途を持たないオブジェ。

 しかし元は武器だったものだ。


 何か役に立つこともあるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きながら、二つのマテリアルをポケットにねじ込む。


「さて……行くか」


 スマホを手に取り、出発の準備を整えると――

 海斗は振り返ることなく自室を後にした。



「この前より……増えてる?」


 公園の周りを確認し、変化に気付く。

 以前――歌恋を見かけた時――よりも警備が厳重になっている。

 だがこの場所が全ての元凶だったと考えれば、それも当然のことかもしれない。


 目的地である公園。その周囲をぐるりと覆い隠す仮囲い。

 鉄製のものものしいソレは、目隠しなどではない。

 今にして思えば、中にいるモノから人々を護るための防壁だったのだろう。


 見るからに厳重な警備体制。

 警備員の数からも、普通に侵入すればすぐにばれてしまいそうだ。


 しかし海斗の顔に焦りの色は見えない。

 それは既に『普通』と言うカテゴライズから外れた人間ゆえの余裕。


 海斗は意識を集中し、意図的に『隠密』を発動。

 ゆっくりと囲いから距離をとり、狙いを定めるように防壁に視線を向ける。


 海斗は屈伸を行うと、助走をつけ――大地を踏みきり跳躍した。

 ふわりと浮き上がる身体。

 軽く鉄壁を跳び越え、海斗は防壁の内側へと着地する。


「……大丈夫、そうだな」


 即座に建物の影に隠れながら周囲を窺う。

 警備員に気付かれた様子はない。

 センサーが張り巡らされている可能性も考慮していたが、杞憂だったようだ。


「それにしても……」


 呟いた言葉には若干の呆れが見える。


 仮設のコンテナハウス。

 制服を着込み、武装した状態で警戒にあたる複数の自衛官。


 ここはどこかの前線基地なのだろうか?

 そう考えてしまうような光景が目の前に広がっていた。


 いつまでも呆気にとられている訳にはいかない。

 気を取り直した海斗は、目的となる場所――

 ダンジョンに続く階段が存在した場所へと視線を向ける。


 建物の影から覗き見たその場所には、仮設と思えないしっかりとした建造物。

 更に入り口にはゲートまで設置されており、見ただけで重要な場所であると分かった。


 明らかに一段階レベルの高い警備体制。

 門は固く閉ざされており、今の海斗には侵入の手段が思い浮かばない。


 何か方法はないかと思案しながら、暫く建物の様子を眺める。

 最悪強行突破するか?

 そんな考えが浮かんで来るが、流石に国に喧嘩を売るような真似はしたくない。


『こんな時、ティセがいてくれたら』


 思わず側にはいないパートナーのことを考えてしまう。

 もし彼女がいれば、こっそりとゲート内の様子を探ることもできたかもしれない。


 だがそもそもティセを取り戻すために、この場所まで来ているのだ。

 卵が先か鶏が先か、と言う訳でもないが、何とも言えない気持ちになってしまう。


 一瞬でも隙が出来ればなんとか出来るのに。

 そう考えながら油断なく建物に視線を向けていると――

 突然ゲートが開き、内部から外に出てくる人影が見えた。


 シルエットは小柄な女性のように見える。

 しかし薄暗いからだろうか?

 相手の姿が上手く確認できない。


 目を凝らし、人影の詳細を探っていると――


「……あっ!?」


 思わず声が漏れる。


 相手の正体に気付き、海斗は納得する。

 暗がりに全身真っ黒な格好では、よく見えないのも仕方ないと。


 ゲートから現れた人影。

 それは先日ゴブリンと戦っていた、謎のヒーローだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「引き出しに仕舞い込んでいたモノを取り出す。手の平には二つの球体。」 いつ、また巻き込まれるのか分からないのに、身体から離していたの。剛毅といえるのか、とても言えないね。
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