表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/128

脱出①

 海斗は神秘的な光と共に、漆黒の鎧が空気に溶けていくのを見届けた。

 軽く目を瞑り黙祷を捧げた後、二人に向かって振り返る。


「……海斗さん、それって」

「俺にも分からない。でも……持ってけってことだと思う」

 漆黒の騎士が何か言葉を発したと言う訳ではない。

 だが、海斗には散り際の騎士がそう言っているように思えた。


 もしかすると敵対する以外の道もあったのではないか。

 そんな気持ちが浮かんで来るが、今はまだ感傷に浸ることはできない。


「この場所に、外に出る手掛かりがないか調べてみよう」

 歌恋に視線を向けながら、自らの考えを告げる。


「手掛かりですか……」

 彼女は海斗の言葉を聞き、周囲を見回しながら少し考える様子を見せる。


「ねえねえマスター……アレ」

 海斗の袖を引きながら、一点を指差すティセ。

 その先には女神像――が胸に抱くモノ。


「やっぱり、あの赤い球が怪しいよなぁ」

 海斗はやはりそう考えるよなと言わんばかりの様子で頷きながら、自らの考えを口にする。


「う~ん多分なんだけど、あれ……ダンジョンのコアなんじゃないかな?」

「ダンジョンコア……ですか?」

 ティセの言葉に歌恋は首を傾げる。何となく意味は分かるが、それが想像と一致しているかは分からない。

 自身の考えが正しいか確認するために、海斗はティセに視線を向けながら続きを促す。


「あーそのコアって何なんだ?」

「えっとね、ダンジョンって必ず核になる物があるんだよ。そいでそれを中心に魔素が集まって、どんどん大きくなるみたいなんだよね」

 身振り手振りを交えながら、ティセはダンジョンコアの説明を行う。


「つまりあの玉を何とかすれば、いいってことか?」

「うん。多分あの玉が何かのキーになってると思う」

 どうした物かと思考を巡らせながら宝玉に視線を向ける。


「でも触れて大丈夫な物なんでしょうか?」

「う~ん、どうなんだろ? アタシも実際見るのは初めてだし……」

 彼女の心配はもっともなことだろう。この部屋の扉には自動で閉ざされる仕掛けが施されていた。

 怪しい玉に何の仕掛けもないと考えられるほど、楽天的にはなれない。


「直接触れるのは避けた方が良さそうだな」

 少し考え、手に持つ漆黒の大剣に視線を向ける。


 恐らく激闘による疲れもあったのだろう。海斗は深く思考を巡らせるよりも、取りあえず行動することを選択した。

 おもむろに女神像へと近づくと、大剣の刃先で軽く宝玉を突く。


「……あ!」

 思わず声を発する海斗。罠がないか軽く触れるだけのつもりだった。だが刃は宝玉に突き刺さり――


「……え?」

 歌恋の驚きの声に応える様に赤い宝玉は――真っ二つになった。


「ちょっ、マスター!? なにやってんのさ!!」

 驚き目を見開くティセ。


「…………」

 海斗は無言のまま押し黙る。

 自分の自身の手によって宝玉が二つに分かれてしまったのだ。

 平静を取り繕っているが、宝玉を破壊した張本人である海斗が一番焦っている。


「これ……どうするか」

 綺麗に左右へ別れたソレに視線を向けながら海斗は考える。


 だが何も思い浮かばなかったのだろう。ゆっくりと歌恋に視線を向ける。

 しかし彼女もどうしてよいのか分からなかったのだろう。

 困った表情を浮かべながらおろおろとした様子を見せていた。

 続いてティセに視線を向けるが、彼女も両手で頭を押さえながら唸り声を上げている。


 誰一人解決策を提示出来ない地獄の様な状況。

 しかし二人の様子を見て、海斗は逆に冷静になってきた。

 他人が焦っていると、それを見ている人は冷静になれると言うヤツだろう。


 この場で責任を取るべきは、軽率な行動を取った張本人。

 そう考えた海斗が、空気を変えるため口を開こうとした瞬間――


「……なっ!」

 割れた宝玉が浮き上がり、粉々に砕け散った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ