食料問題③
手招きで二人を呼び寄せ、三人で目の前の光景を確認。
落ち着いて話をするため、ティセと歌恋を伴い少し通路を戻り一息吐く。
ダンジョンの中に何故カフェが。しかも何となく見覚えのある形状。
店舗らしきものがあったかも知れないと聞いてはいたものの、あまりの場違いさに驚きを隠せない。
「あんなにゴブリンがいるなんて……」
歌恋は一度目にしていたからだろう、ゴブリンの多さが気になっている様だ。しかし海斗としてはカフェの方が気になる。
少しおしゃれなプレハブ風。SNSのネタになりそうな店舗。
「……あれって公園のカフェだよな?」
「はい。多分ですけど、間違いないと思います」
この場所へとやって来る前にいた公園。その中にあったカフェに間違いなさそうだ。
しかしどういうことだ? 地揺れに巻き込まれこの場所に落ちてきたのだろうか?
ダンジョンにカフェという異常すぎる光景。歌恋が口にするのを戸惑った理由もよく分かる。
「でも藤堂さん。どうしますか? カフェの中になら何か食べる物があるかもですけど、流石にあんないっぱいゴブリンが居たら……」
「流石にあの数を一度に相手するのは厳しいかな。不意を突いたとしても五、六匹くらいが限界だと思う」
「うーん。やっぱりそうですよね。食べ物は必要ですけど、無理して怪我でもしちゃったら大変ですもんね」
海斗は自身の身を気遣う歌恋の言葉に嬉しさを感じてしまう。
とはいえ何とかして食料を手に入れる必要がある。
「何かいい方法があるといいんだけど……流石にゲームみたいに一匹ずつ釣り出すなんて無理だろうし」
「気付かれたら多分一斉に襲ってくると思うよ~」
「ですよね。でもそうなったら……」
「ああ、体力的にもずっと戦い続けるってのは厳しいかな」
「食事したり休んだりしないと、疲れて倒れちゃいますもんね」
「そうだね。食事や休憩は……ん?」
海斗はふと疑問を感じた。そう言えば最初に遭遇したゴブリンは――あまり思い出したくないが――食事をしていた。
ヤツらも生きている以上、人間と同じ様な欲求があるのではないかと。
もしも生命を維持するために食事を必要とするのであれば、他の欲求――そう睡眠も必要なのではないか。
不意に生まれた考え。しかし海斗はそれが正しいのではないかと強く感じていた。
「なあ、今思ったんだけどさ……ゴブリンも生き物だろ。生きてる以上、眠ったりするんじゃないか?」
「あっ……確かに! うん。私もそう思います!!」
「うんうん。アタシもマスターの言う通りだと思うよ~」
三人の意見は一致した。もしもゴブリンが眠るのであれば対策の立てようもある。
「全部じゃなくていい、半分でも眠ってれば、多分何とか出来ると思う」
「そうなると少しゴブリンの様子を見る必要がありそうですね」
歌恋の言葉に頷き、これからの行動を話し合うことにした。