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食料問題②

 歌恋の言葉を信じ、三人で目的の場所を探す。

 途中、ゴブリンに遭遇することもあったが、彼女の安全を考え戦闘は回避する。


 入り組んだ通路には死角が多く、視線が届かない場所にもゴブリンは存在していた。

 本来ならば戦闘は避けられない所だろう。

 だがティセの広域探索と海斗の気配察知を併用することで、姿の見えないヤツらの気配をはっきりと感じ取っていた。


 先ほど歌恋を助けた際に脳内へと響いた『レベルアップ』の言葉。

 彼女の言葉を信じ行動を開始する直前、海斗は歌恋が準備をしている間にステータスを確認していた。


 藤堂海斗 レベル:3

 スキル:隠密(初級) 気配察知 ???


 その際に確認した情報には、新しく『気配察知』と言う表示が追加されていた。

 新しいスキルの効果を要約すると、『半径一〇メートル以内の気配を察知する』と言った内容。


 一見するとティセの能力と被っているように見える。しかしそれぞれの能力には明確な違いがあった。

 ティセの『広域探索』はレーダーのように広範囲に渡って敵の位置を知ることができる。だが弱点として大雑把な配置しか分からない。

 対して海斗の手に入れた『気配察知』は感知できる範囲は狭い。しかし間を隔てる障害物がなければ細かい配置まで確認することができた。

 驚くほどの相性のよさ。それぞれの長所が互いの短所を打ち消し、完璧とも言える索敵を可能としていた。


 それにレベルアップの効果は新しいスキルだけではない。

 海斗の運動能力は平均的な三〇台の男性の枠を出ない。むしろ最近運動不足気味だったことを考えると平均を下回っている可能性さえある。


 あの時、三匹のゴブリンを蹂躙した時の凄まじい動き。もし仮に海斗の年齢が二〇台前半の頃であったとしたなら出来たものだろうか?

 ――いや不可能だ。それは考えるまでもない答え。

 一瞬で距離を詰める走力。そしてゴブリンを蹴り飛ばした脚力。

 いくら小柄とは言え、一五〇㎝近くある生き物を軽々と宙に浮かせ数メートルも吹き飛ばすことなど出来ないだろう。


 例えば大晦日にテレビで放送される格闘技特番。人生の大部分を戦うことに費やした競技者達の集う祭典。

 今の海斗であれば、そんな場所に集う戦士達でさえ不可能な芸当が出来てしまいそうだ。


 自らの能力の向上に思わず笑みが漏れそうになる。

 これは優越感。自分が特別な存在になったかも知れないという、ほの暗い感情が起因となって生じたもの。

 海斗の中に今までの人生で感じることのなかった気持ちが芽生え始めていた。



「うーん、多分こっちだと思ったんですけど……」

「マスター! 待って! この先……」

 ティセは二人の前に出ると、真剣な表情で通路の先を指し示した。

 目の前の道はまだまだ真っ直ぐに続いておりモンスターの姿は見えない。だが少し先にティセは気配を感じ取ったようだ。

 歌恋の隣を歩いていた海斗は一歩前に出ると、彼女を静止する。


「俺が前にでる。二人は少し離れて着いてきて貰ってもいいか?」

 歌恋とティセが頷いたことを確認し、海斗は警戒しながら一人先行していく。

 少し進んだ先で海斗は二人に向かって合図を送る。

 自身の口元に人差し指を当てる仕草。それは『静かに』と伝えるためのジェスチャーだ。


 二人が立ち止まったことを確認した海斗は、気配を殺しながら壁際に張り付く様に一歩一歩通路を進む。

 直ぐ先で通路が右手側に別れておりその先が大部屋になっているのが分かる。

 境目ギリギリで足を止め、広間の様子を窺う。


「――――ッ」

 思わず出そうになる声を抑える。

 目の前に広がるのはまさにモンスターハウスとも言うべき状況。


 確認出来る範囲でも一五、いや二〇近い数のゴブリン。

 しかし何よりも目を惹くのは、別のもの。

 こんな場所にあるはずのない物。

 部屋の奥に存在する建造物。


 それは――カフェだった。

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