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崇拝されるが、勘弁してください  作者: 子猫ポイズン
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隊長の愚痴


「遅い!どうなっているのだ!たかだかゴブリン程度の斥候に何時間掛かっておるのだ。この間抜けどもめ!」


 ザコースは苛立っていた。

 ゴブリンがいると言われる森の中に斥候を放ったのだが、2時間たった現在どの部隊も戻って来ず森のすぐ近くに陣取っている本隊は何も出来ず立ち往生していた。

 そして、時間が経つにつれてザコースの苛立ちは募り今では愚痴を言いながら兵たちに当たるようになってきた。

 しかし、疑問に思っているのはザコースだけではない。

 兵たちの間にも斥候が帰ってこない事に疑問を持つ者たちが増えていき、隊の雰囲気は少しずつ悪い方に変わっていく。

 そんな中、ザコースがいる場所から少し離れたところで隊の隊長と副隊長が愚痴を言いながら会話に花を咲かせていた。


「ふむ、不味いな。隊の雰囲気が悪くなってきている。これではいざゴブリンどもが出てきた時に少なからず戦闘に支障をきたすかもしれん。まぁ、ゴブリン相手だそこまでの深手にはなるまい」


「そうですね、隊長の考える事も一理ありますが所詮はゴブリンですので、戦闘経験のない奴らにとっては良い実践になるんじゃないですか?日頃、あれだけ言っていますので」


「確かに、騎士になった者たちは冒険者達を軽んじる傾向にあるな。実戦経験がある者はともかく、騎士になったばかりの奴らは特にな。そして、ザコース伯もそうだからな。俺も頭を悩ますよ」


「ご愁傷さまです。それも隊長の役目と考えて、諦めてください。しっかり上に媚を売って予算踏んだ食ってくださいよ。それでないと我々が楽に戦えませんので」


「はぁ、俺も戦場で剣を振るうだけを考えていた頃が恋しいよ。隊長になってから、実戦外の戦場に踏み入る事が多くなったからな」

 

「そう聞くと上に上がりたくないですね」


「そう言うな、いつか頃合いを見つけたらまとめてお前にやるよ」


「げぇ!今考えただけでも鬱になりそうな事を言わないでくださいよ。おや、隊長。部隊の前方が少し騒がしいですね。もしかして」


「ああ、斥候が帰って来たようだな。これから情報の擦り合わせをして、ゴブリンどもあぶり出すぞ。忙しくなりそうだな」


 会話をしていた隊長と副隊長は、会話を切り上げ斥候の情報を聞こう部隊の前方に進もうとする。

 が、その時悲鳴が聞こえた。

 男があげるなんとも情けない悲鳴が轟く中、隊の状況を確認する為に副隊長に指示を出す。


「俺はここでいる者たちのを指揮する。お前は前方の状況確認を行い、すぐさま合流。その後、事態の制圧を行う、急げ!」


「はい!」


 部隊が陣取っている場所で、悲鳴が聞こえる。

 そして、耳を澄ませると悲鳴や怒号の聞こえる中、何かがぶつかる金属音も聞こえる。

 まるで、一歩先には戦場が広がっているかのような感じだ。

 そんな中、かっぷく良い男が肩を揺らしながら隊長の方に歩いてくる。


「どうなっているのだ!うるさいではないか!いったい日頃どのような教育を行っているのだ」


 ザコースが怒りをあらわにしながら、怒鳴りこんできた。

 事態の情報集を迅速に行おうとした隊長にとっては厄介者でしかない。


「只今、副隊長を行かせ事態の確認を行っています。ザコース拍におきましては何があるかわかりませんので安全な場所で、しばしお待ちください」


「ふん!何も分かっていないのかこの無能が!」


 これだから、物見遊山で来た者邪魔なんだよなと隊長を思い、想像の中で何度か殺し気持ちを落ち着かせる。

 そんな中、副隊長が急ぎ帰って来る。

 

「どうだ状況は?」


 上がる息を体全身で抑え込みながら、喋ろうとする副隊長の言葉は


「はぁ、はぁ、ぜ、ぜ、うぐぅ!はぁ、前方の様子ですが斥候から帰って来た者と迎え入れた者の間で戦闘が始まりました。何が何だか分からぬ間に、味方同士で切り合い戦場が広がっています」


「「なに?」」


 ザコースと隊長の言葉が重なる。

 何故、突然そのような事になっているのか頭が言葉の意味に理解が追い付かない。

 そんな中、隊長は事態を収める為に行動しなければいけない。


「とにかく我々も前方に行き戦闘に参加する。このまま見殺しなぞできん。そして、戦闘に参加する者すべてに面をかぶる事を禁ずる。また、出会った者全てに面を脱ぐように言え!もし面を付けたまま近づいて来る者がいれば容赦なく殺せ!行くぞ!」




 隊長が激を飛ばし戦闘を行おうする少し前、部隊の前方では森から出てきた斥候隊を迎え入れようとしていた。

 森から出てきた斥候隊は全員フルフェイスの面を被っていた。

 森に入る前は、基本的に首から吊るしていた者たちが大半で戦闘でも行わない限り被ることもない。

 ましてはゴブリンどもだ、その小さな体から繰り出される攻撃が大人頭部などに到達するわけもない。

 少し違和感を感じながら、でもその違和感は特に気にするほどのものでもそのまま斥候部隊を招き入れる。

 そのまま斥候部隊を隊長のところに案内しようと一人の男が彼らに背を向け手で合図する。

 そして、男は背中に強烈な熱を感じ、振り向い所に一人の血にまみれた剣を持った斥候隊の者を見る。

 そして、男はそこで永遠に意識を無くすのだった。

 意識を失う中で男は、相手のフルフェイスの中に不気味に笑う黒い人ではない何かを見たのであった。

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