転生先は有料物件。
「本当に告られたと思ってたの?バカじゃん!」
甲高い女どもの笑い声。うるさいくて、気持ち悪い。
「あんたみたいなハゲが本気で告白されるわけないでしょ!」
取り巻きの女が追い打ちをかける。
そうか。そんなに面白いか。
俺は最悪の気分だ。
「ん、、、、」
目が覚めた。また見てしまった。昔の思い出。とくに嫌な思い出を。
わざわざ思い出させてくれてどうもありがとう。おかげで人間不信を継続できそうだ。
「12時か、、、」
時計の針は12時半をさしていた。
俺は布団からでる。
立ち上がれ、、、くっそ、、たてねぇな。
たちあがれ!あがれ!おそれ、、、おっと危ない。
腰と膝の関節がいてぇ、、こりゃ立てそうにないな。俺は枕の横のスマホを手にとる。
そしてスマホのロックを解除しようとして——やめた。
布団に入ってまた目を閉じる。
——あの子を産んだのは間違えだったわね——
また思い出した。二つ前の俺を産んだ母の言葉。
——自分が世界で一番不幸だから寝てていい。とか思ってんだろうな——
今度は父の言葉。
頭に浮かぶ言葉の数々。
なんで生まれちゃったんだろ。
俺って死んだ方がいいのかな。
そんなことわかってるよ、、でも死ねない。生存本能が邪魔をする。
ピロン。
通知だ。スマホから鳴った。
俺はスマホを再び手に取って画面を覗く。
へぇ、、今なら漫画10%offか。え、一冊だけ?
クソじゃねぇか。
そしてまた通知が来た。
今度はなんだ?
“ゆうと”
高校の同級生だ。LINE交換してたっけ。
なになに?
「ひさしぶり、元気してるか?飲み行かね?」
なんだこれ。あぁ、クラスの奴らで飲んでて暇だから俺を誘い出してまたなんかするんだろ。
奢らせたり、脱がせたり、
あいにくもう人に見せられる体じゃねぇんだよ。
行かない。 それだけ送った。
返信がきた。音でわかる。でも俺がその返信を見ることはなかった。
「よし、寝るか。」
睡眠薬を飲む。
何粒飲んだだろうか。
ただ、人生で最も心地よい眠りだった。
「人生で最も心地よい眠りはどうでしたか?」
俺の心を読んだかのようなセリフだ。
「、、、ここ、、は?」
「黄泉の国の入り口です」
俺は仰向けで寝ていた。
目のピントが合い始める。
美しい女性が俺の顔を覗き込んでいた。
「そうか。それは良かった。じゃあ天国に案内してくれ。」
「いやです!」
「わかった。」
簡潔に返事をして目を閉じる。
「ちょっと!寝ないでくださいよ!」
俺は目を開ける。
「いやでーす」
再び目を閉じる。
「ちょっとぉ、、!話を聞いてくださいよ!」
女は俺の体を触った。
「触るな」
女の腕がビクッとした。
それから10分ほどたった。
小声で「どうしよう、、どうしよう、、」とか聞こえてきてうるさかったので話を聞いてやることにした。
「ちっ、、うっせぇな、、なんだよ、」
「あ、やっと起きてくれたぁ!えっと、、私は天使です!一応新人です、、それと、、あなたはこれから異世界に転生して、、そのために体を選ばないといけなくて、、、」
この十数分なにしてたんだよ。
「とにかく!この三体から体を選んでください!」
「やだ」
「え!?」
天使は三体の人の体を出した。
「な、なんで嫌なんですか!?私の経験では大半の人が喜んで転生して、、」
新人なら大した経験してないだろ。
「だって怖いし、あ、でも俺がこれから行く世界には他にも転生した人がいるのか?」
「えーと、、通常はあなたが元いた世界のどこかに転生するんですけど、、まあ、、色々事情があって!」
笑顔と勢いで乗り切ろうとする天使。
俺は騙されないぞ。
「色々ってなんだ。説明しろ」
「説明はこちらとしても都合が悪いです。体はこれでいいですか?短めのオールバックにスーツ。しっかり筋肉もありますよ。ムキムキってほどでもないですけど運動神経はいいはずです。造形も自信があります」
いや無理でしょ。
「説明しないならいかない。」
天使はため息をついた。
「はぁ、、わかりましたよ、、現在あっちの世界ではでかーい戦争がおきてるんです。で、現在優勢な方が勝つと世界が破滅、もう片方が勝つと世界がハッピーでもこのままいくと世界がなくなっちゃいます。だから劣勢な方に助っ人としてあなたを送り込みたいんです」
だいぶざっくりした説明だ。
「説明はこちらとしても都合が悪いんじゃなかったか?それと俺一人じゃどうにも———
視野が狭くなる。最後に見たのは、、天使の笑顔だった。
「ん、、、」
目の中に光が差し込む。
視界が安定してきた。
ここは、、、ん?
俺は大木に寄りかかっていた。
あたりは平原。とおくにうっすら山がみえる
風が肌をくすぐる。
動くか?
自分の体に問いかける。動けそうだ。
俺は立ち上がった。すると膝に乗っていた何かが地面に落ちたのに気がつく。
「お面?」
白いお面だった。目だけ開いている。シンプルなものだ。
「ちょうどいいな」
俺はお面をつけた。
顔を隠したいからだ。
なんで顔を隠したいんだ?
生まれ変わるって思ったよりあっさりだな。
ていうか、身体は見た感じ成長し切った大人だけどこれは転生なのか?まあ転生か。
さて、やることは一つ。歩こう。
何分歩いただろうか。足がだんだん疲れてきたころ、後ろからリズミカルに何かが来る音がした。
後ろを振り向く。馬車だ。
「おーいにいちゃん!こんなところでなにやってんだ?」
「すみません。迷ってしまいまして。」
「ならうしろのってけよ!まちまでつれていってやるよ!」
「ありがとうございます。」
お優しいおじさんだ。
馬車に乗った。馬車には小さい箱がいくつか乗っていた。
俺はそれに寄りかかる。
「つかれたなぁ、、」
俺は目を閉じた。
目を開けた。
路地裏?
俺は狭い路地裏で寝ていた。
空は赤く染まっている。
いや何故ここに下ろしたんだあのジジイ。
とりあえず立ち上がる。歩いてすぐ、左を曲がると広場が見える。
大きな噴水が真ん中にあった。
俺はそこの縁に腰掛ける。
つかれた、、、
ていうかこれから何すればいいんだ?
まずは金?その前に寝床?飯は?
はぁ、、つかれるなぁ、、
「やあ」
若い青年の声がする。
「珍しい服を着ているね。どこの国の人?」
見上げるとそこには色白で高身長の青年がいた。
「日本人だ」
「ニホン?聞いたことないな。その国はどこにあるの?」
「ググレカス」
「つめたいなー」
ん、、、?
「ググレカス地方だ。教えてやったのに冷たいはないだろう」
「え、、?地方?そ、、そっか、、」
俺は立ち上がり青年と距離を取る。
「なんだと思ったんだ?」
「いや、、ググレカス地方、、そうだよね、うん。」
「なんだと思ったんだよ」
「そ、それは、、」
「何者だ」
青年は観念したようだ。
「私は天使アンジーの弟、ヘルメスです。どうぞよろしく」
「天使アンジー?」
青年は首を傾げる。
「あれ?ここにくる前に天界で会いませんでしたか?」
あいつか。
「あれの弟?確かに言われてみれば似てる、、か?」
よく見たら似ている。目の色とかあいつも透き通った青だった。
「もしかして俺をサポートしてくれたりするのか?」
「えぇ、サポートさせていただきます」
よかった。天使の弟ならこいつも天使なんだろ?十分頼もしい。特にこういうよくわからんところだとな。
「あなたずいぶん冷静ですよね。天界に来た時から見てましたが」
見てたんなら姉ちゃん助けてやれよ。
「そうか?そうだな。」
「冷静な自分かっこいいとか思ってます?」
「○ね」
「天使は死にません」
ヘルメスとはいい関係を築けていけそうだ。




