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とある老司祭と、偽物の聖剣。

「─── おぉ、来たか君。

てっきり死んだものかと思っていたよ。」


「勝手に殺さないで頂きたい・・・。」


滅多に人が訪れないような辺境にある小教会に、アスカ達の案内をした助祭が足を運んでいた。

その手には片手で持てるほどの小さな革袋があり、しかし後生大事そうに両手で しっかりと抱えている。


対するのは使い込まれた司祭服を身に纏った老人だった。

穏やかそうな その老人は、やはり しかし目が笑っていない。


「それで・・・例の物は?」


「・・・えぇ、確かに受領しました。」


そういって助祭は革袋の中に手を突っ込む。


─── そして中から明らかに革袋の体積を超えた大きさの片手剣が姿を現した。


「まさか希少な『魔法袋(ソーサリー・サック)』を、こんなことの為に用意されるとは思いませんでしたよ。」 [1]


「こんなこととは何か、こんなこととは。

偉大な遺物の真贋を確かめることは、我らに課せられた至上命題であろうに。」


そう言って老司祭は、震える手で魔法袋から取り出された片手剣 ─── アスカ達が大聖堂の最奥から盗み出した聖剣を手にした。

そう、彼こそが匿名の大口スポンサー『枢機卿』である。


「ふむ・・・やはり何の力も感じないな。

我々の想像通り、大聖堂に安置されているという聖剣は偽物であったか。」


「・・・分かっていたので?」


大聖堂に勤める助祭は、少し驚いたような顔で老司祭に尋ねた。

それなりに長く大聖堂に勤めている助祭ですら【イカレ修道女ルナティック・シスター】が偽物と断じるまで本物と信じていたのに、それを老司祭は最初から偽物と分かっていたように言う。


「ふん・・・我々が何世紀にも渡って探し求めているものを、ぽっと出の聖堂騎士団などに見つけられるものか。」


「ぽっと出ですか・・・。」


少なくとも聖堂騎士団にも100年近い歴史があるのだが、それでも老司祭にとっては つい最近出てきた新興組織に過ぎないらしい。

確かに この老司祭が背負っている組織を考えれば100年の歴史が何だと言いたくなる気持ちも分からんでもないが。


「もうよい。

この偽物は別の者の手で適当に聖堂騎士団の手に返させよう。

よくやってくれた、追って沙汰は知らせる。」


それだけ言うと、老司祭は助祭に下がるように言う。

助祭は一礼して小教会を後にした。


それを確認した老司祭は、背後の像へと跪き祈りを捧げ始める。

その像は、本人により首を斬られたという勇者の像であった。




「・・・まだ、貴方のように呪われた者は現れぬようです。

今日もまた不幸な英雄が生まれなかったことを、神に感謝致します。」




[1] 魔法袋(ソーサリー・サック)

 袋の口に入れば どれだけ大きなものでも入ってしまう、文字通りの魔法の袋。

 体積ではなく収納数で上限があり、今回用意されたものだと どれだけ小さなアイテムでも10ほど入れれば それ以上 入らなくなるが、今回に限っては警備の目を誤魔化す為に聖剣が入れば それで良かったので何の問題も無かった。

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