相席した魔族への懺悔
「─── そう、あの人は死んだのね。」
私が自身の仕事について打ち明けると、目の前の魔族の少女 ─── ルカは そうとだけ言ってビールの入った大ジョッキを呷った。
良くあんな麦汁を そんなに呑めるなと思いつつ、私は同じように真水の入ったジョッキを傾ける。
最初に見かけたときは あまりの威圧感に20代後半くらいかと思ったら、聞けば何と同い年の15だったらしい。
奇妙な偶然もあったものだ。
大ジョッキを卓上に戻し、見ていて気持ちが良い勢いでステーキを平らげ始めるルカを改めて観察する。
背は魔族の中でも大柄であるはずの【動く要塞】がチビに見えるほどの3m弱。
身体は女性らしく細身でこそあるものの、ステーキを口に運ぶ為にナイフを動かす度、大蛇が首をもたげるようにして そのしなやかでありながら圧倒的な大きさの筋肉が姿を現した。
髪は黒で、綺麗なストレート。
前髪が垂れ下がっているほど長く、後ろ髪は腰の辺りまで伸びていた。
魔族特有の青い肌に黄金の瞳を持ち、平原人でいう白目部分が黒いので正に魔神か悪魔を連想させる。
容姿としては綺麗系なので、インド神話の女神あたりが近いか。
しかし何より特徴的なのは頭部に王冠のように生え揃った3対 ─── 計6本の角だった。
通常 魔族の角は一対 ─── 計2本であり、多くても4本だったはずだ。
それが6本ともなると、ソシャゲでいうURかSSR辺りではないだろうか。 [1]
つまり激レアだ。
何か良い事あるかもしれない。
「あの人には世話になった。
・・・苦しんで死んでなければ良いのだけど。」
「さぁ・・・喉を一突きだったので それほど苦しんでは無かったと思いますけど・・・。」
「それなら良かった。
世の中には もっとずっと酷い死に方は幾らでもあるもの。」
ルカは それだけ言うと、話は終わったと言わんばかりに食事を再開した。
私も手元の黒パンを口に入れる。
それから少しだけ私が殺した【鋼の戦車】についての話をした。
なんでもチャリオットはルカの組織のNo.2だったらしい。
私でいうところの【動く要塞】にあたる お目付け役のような存在でもあったという。
そういう話を聞くと、やっぱり悪いことをしたかなという気にならんこともない。
もっとも、仕事の邪魔をしてきたのは あちらだと私は思っているが。
(まぁ、許してくれるみたいですし・・・良いか。)
そう考え、私は湿っぽい話を ここまでにすることにした。
気分を変える為、私は酒場の女給にルカのものより小さいステーキを注文する。 [2]
「すみません、彼女のやつの半分くらいのステーキを ───」
「─── あっ、私の追加分も持ってきて。」
ルカもチャリオットについての話は終わったものとしているらしく、早速 食事の おかわりを女給に注文し始めていた。
[1] UR および SSR:
前者はウルトラ・レア、後者はスーパー・スーパー・レアという意味合いである事が一般的。
[2] 女給:
女性の給仕であればウェイトレス、性別を考慮しないのであればウェイトスタッフと言う。




