誉の無い者たち
───── ズドンッ
私が喉から愛剣を抜くと、【鋼の戦車】は糸が切れた操り人形のように鈍い音を立てて崩れ落ちた。
・・・てっきり最期の最期に もう一暴れくらいするかと思ったが、大人しく死んでくれたな。
何か、自らの死に納得でもしたのだろうか?
「─── あなた方の首領は死にました。
さっさと おとといって下さい。」
私は兜のバイザーを上げて、周りに無数にいる黒装束の魔族達に向けて声高に宣言した。
コイツらが決闘後に一斉に襲い掛かってくるという面倒を避ける為に、私はチャリオットと『残党を見逃す』約束をしたのだ。
「「・・・・・・。」」
───── チャキッ
「あぁ、そうですか。
あなた方は首領と同じく、誉を捨てたのですね。」
どうやらチャリオットとの約束に込められた趣旨を破って、首領亡き後も任務を続行しようとする黒装束の魔族に、「まぁ、私でも そうするだろうな」という諦観を抱きながらも、私はバイザーを下げ直しながら思わず毒を吐いた。
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<十数秒後・・・>
「・・・っ!」
《魔術の ───》
「─── 止めなさい、【歩く災害】。」
積み上げられた黒装束の魔族の屍の上で、私は逃げようとする最後の一人を《魔術の弾丸》で仕留めようとするルイン・ウォーカーに待ったをかけた。
「・・・いいのかい、アスカ。
こういうのは取り逃すと後々面倒になるよ?」
「約束を破る不名誉に比べたら、そのくらいの面倒なんて取るに足りませんよ。」
こちとら信用商売だぞ。
覚悟が決まった連中と違って、将来の為に誉なんて幾らでも掻き集めておきたい。
「それより せっかくですから金目のものを回収しますよ。
これだけいるんですから、一人くらい高価な物を持っているでしょう。」
私は血糊がベッタリと付いた愛剣を軽く拭いてから鞘に仕舞うと、折り畳んで背嚢に仕舞っておいた革の大袋を広げた。
近くの魔族の死体のポーチから金貨や銀貨を見つけると、それを大袋の中に入れる。
誉?
この世界じゃ追い剥ぎは勝者の特権で、不名誉でも何でもありませんよ。
「それもそうか。
回収した品は直接 研究費の足しにして良いんだろうね?」
納得したらしいルインが、短杖を仕舞うと慣れた手つきで近くの魔族の死体を物色し始める。
最初は死人からの追い剥ぎを みっともないと敬遠していたルインだが、それが結構な利益になると分かると、元々の共感性の低さもあって嬉々として追い剥ぎをするようになった。
いやはや、金は人を変えるね。
「勿論です、ウチのローカル ルールじゃ そういうことになっていますから。」
私は新しく見つけた金貨にベットリと付いていた血を拭き取りながら、ルインの言葉を肯定した。




