Need not to know.
───── ドサッ
───── ゴトッ
私の愛剣によって首と胴体が泣き別れした魔族が斃れる。
そして大聖堂の床に魔族の血が流れた。
これがホントの『魔族の穢れ』よ。
・・・で、コイツ誰?
「・・・警備の方ですか?」
あんだけ毛嫌いしておいてダブスタ [1] で魔族の警備を雇っていたのかと案内の助祭に確認してみるが、助祭は高速で首を振った。
どうやら大聖堂勤めの助祭も知らない人らしい。
・・・ホントに誰なんだ、コイツ。
私は試しに倒れ込んだ魔族の胴体を引っ繰り返してみた。
私が首を斬った魔族は、黒装束は黒装束でも まるでライダースーツのような ぴっちりとしたレザースーツを纏っており、腕部だけ異様に分厚い装甲が設けられていた。
・・・某大怪盗の映画 [2] で こんなヤツ見たな。
それにしても、どっかで見覚えあるな この装備。
例の映画じゃなくて現実で。
どこだっけ・・・?
そこまで考えて、ふと前任の旅団長である【傷だらけの男】が似たような見た目の魔族と度々会っていたことを思い出した。
・・・あれっ、もしかして私やったか?
「ルーク、もしかしてコイツってスカーズの手先ですか?」
「・・・。」
【動く要塞】が頷いたのを見て、私は顔を片手で覆って天を仰いだ。
・・・やっちゃったなぁ。
私、スカーズとは敵対したくないんですけど・・・。
「・・・そういう話なら、今回の依頼は無かったことにした方が良いですかね?
別に私、スカーズが聖剣欲しいならあげますよ?」
特にスカーズから そういう裏事情の引継ぎを受けていない私は、スカーズの頃からの副団長をやっているリビング・ルークに依頼継続の判断を委ねる。
スカーズが「お前が知る必要は無い」と言っていたので、敢えて詮索はしてこなかったのだ。
信頼できる年長者から知る必要が無いと言われた事を無理に探ったとして、良いことは大抵一つも無いのがオチだし。
「いや・・・そういうことは無い。
スカーズは、聖剣を求めない。」
確信めいた口調でリビング・ルークは断言した。
ふむ・・・そういうことなら別に良いか。
「じゃあ、これから同じような奴と遭遇しても・・・殺して問題ありませんね?」
一応、確認する。
何度も言うようだが、私はスカーズと敵対したいワケではないのだ。
「・・・問題ない。」
リビング・ルークは重々しく頷いた。
そこには単に同族を殺すことを肯定する以上の重みがあるように見えた。
まぁ・・・ルークが大丈夫っていうなら良いんだろう。
何と言っても『知る必要は無い事』だし。
[1] ダブスタ:
ダブルスタンダードの略。
自分に都合が良い時と悪い時で善悪の基準が変わるような、不公平な態度や判断のこと。
[2] 某大怪盗の映画:
某大怪盗が公国の姫君の心を盗む映画。
悪の伯爵の手先として、今回の魔族と似たような装備の暗殺者が出てくる。




