聖書の確認
<アスカの旅団が所有するキャラバンの中>
「─── ほらねっ!?」
「そんなバカなっ・・・!
こんなことが有り得るのですか・・・!?」
私と【イカレ修道女】の前には聖剣の件が書かれた聖書が広げられていた。
無数にある聖書の中でも区分では歴史書にあたる『選定の書』には次のように流暢な筆記体で記述がなされていた。
”剣は人を選ばず、ただ“断つべきもの”に応じてその手を選ぶ。”
”その手が何者であれ、剣はそれを拒まない。”
他にも、確かに私の認識が正しかったことを示す記述が幾つも散見された。
「”剣は人を選ばず”・・・?
そんなはずはありません・・・。
正しくは、”剣は主の御心に適う者のみを選び、その御手により正しく振るわれる。
選ばれぬ者が触れることは許されない。”であるはず・・・。」
「往生際が悪いですよ、シスター。」
シスターは納得いかなそうに頤に手を当てて考えているが、目の前に私の認識を肯定する聖書がある以上、どうあがいても正しかったのは私の方である。
「ほらシスター、どんな気持ちですか?
腐っても聖職者でありながら聖書の内容を覚え間違えていた気分は?
もう一度 修道院に戻って神学を学び直して来た方が良いんじゃないですかぁ~?」
「うるさいですよ、アスカ。」
「アダッ!」
猫パンチの如く、軽く頭を叩かれた。
ぐすっ、いいもん、今回は私の勝ちだもんっ・・・。
「・・・納得がいきません。
この聖書は偽典なのでは?」
「は?
【傷だらけの男】が私に偽物を寄越したと?
殺しますよ?」
「そういう意味では・・・。」
・・・分かってる。
少なくとも教会では正典と認められていない内容の文書と言いたいのだろう。
「・・・まぁいいです。
それで?
仮にこれが偽典だとして何だというんです?」
「簡単ですよ。
私は間違っていなかったということになります。」
そう言ってシスターは私の聖書を手に取った。
不敬とか聖書改変とかの大罪疑惑よりも、シスターからすれば自分が間違っていない方が重要らしい。
「コレ、暫く借りても構いませんか?
私が間違っていないということを何としても証明したいので。」
「まぁ・・・別に構いませんが。」
内容は一通り覚えてるし・・・。
「感謝致します。」
シスターはそう言って、偽典疑惑のある私の聖書を背嚢に仕舞った。
・正典:
教会が信仰・教義・倫理の判断基準として認めた文書群。
論文とかでココ以外から文章を引用すると怒られる。
・偽典
一般的に正典とは特に認められない文章群。
別に偽物とか偽造文書とかではないが、それに準ずる扱いになる。
論文の引用元をココに属するどれかにすると、真面目に異端審問が起こるレベル。




