魔法
あーね、竜ね。
この世界なら良く出る方ですよ。
昨日だって昼食にドラゴンの肉を焼いたくらいですからね、ハハ・・・。
─── そんなワケないだろ。
出ねぇよドラゴンなんか。
それこそ ここ半世紀は人里にドラゴンが出た事例なんて無いって【傷だらけの男】言ってたぞ。
仮に人里に出たとして、何で私が護衛としている商隊を襲うかな・・・。
こんなとこで油売ってないで、お伽噺みたいに王城にでも行けよ。
多分お前達が好きそうな黄金の一つや二つくらいあるから。
「どうする団長?」
副団長の【動く要塞】が冷静に指示を仰いでくる。
こういうときに慌てないの流石ですよ、ルーク。
「どうするって・・・私達がやるしかないでしょう?」
私は そう言いながらグリムヴェイルに飛び乗った。
「─── 私は冒険者ですよ?
ドラゴンくらい・・・まぁ、何とかなります。」
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<Side:傭兵>
「─── 囲め! 陣形を崩すな!!」
男は目の前に突如として現れた災害を前にして必死に指揮を執っていた。
───── 竜。
それは正しく災害であり、人の敵う存在ではない。
それに挑むのは、竜巻や洪水に挑むのと同じである。
しかし、仕事として商隊の護衛を任されていた以上、逃げるワケにもいかなかった。
この世界において一度失墜した信用を取り戻すのは、現代のソレよりも更に難しい。
男は そこから這い上がろうと思えるほど強くは無かった。
獣の唸り声。
人の悲鳴。
馬の嘶き。
全てが、恐怖を煽る。
正に悪夢の中にいるようだ。
「─── 今だ! 撃て!! 突撃ィ!!!」
男の合図で弓兵が矢を放ち、騎兵が槍を抱えて突っ込む。
ドラゴンが煩わしそうに巨体で薙ぎ払うが、その試みの幾つかは成功し、ドラゴンの身体に矢と槍が生えた。
獣の絶叫。
それは明らかにドラゴンが苦痛を覚えている証拠だった。
「・・・やれる! やれるぞ!!」
男は思わず歓声を上げた。
竜殺しになれるかもしれない興奮が全身を走った。
─── しかし次の瞬間、男は一瞬で炭と化した。
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・・・何をやっているんですけ、あの人達は。
よく分からない魔物の類が出たら私達が対処するって、私ブリーフィングで言いましたよね?
もしかしてアレですか?
こっちのこと舐めてて完全に話聞いてなかった感じですか?
案の定 ドラゴンの魔法に焼かれて揃いも揃って炭化してますし・・・。
そう、ドラゴンは魔法を使う。
それもかなりレベルが高いものを種族全体がデフォルトで使える。
今あのドラゴンが使ったのは初歩的な発火魔法だ。
ただし自身の周りにいる傭兵全ての体内から数千度にも及ぶような高熱を発生させるなど、人間の魔法使いでも出来る芸当ではない。
人間なら生物を直接発火させる時点で抵抗されるし、仮に発火させられても せいぜい数百度が限界だ。
数千度の熱など及ぶべくもないだろう。
そのことを踏まえるとドラゴンが どれだけ理不尽な存在か良く分かる。
その気になれば人間なんてアリみたいに踏み殺せる、正に災害そのものだ。
特に今見せた魔法なんて、ゲームで言えば敵対判定が処理された瞬間にプレイヤーキャラが蒸発して死ぬみたいな芸当である。
流石にクソゲーと言わざるを得ない。
「まぁ・・・私なら、やれないことは無いのですが。」
私は兜のバイザー(顔面部分の装甲)を下げた。
予定外ではあるが・・・竜退治を始めよう。
・竜殺し:
竜を殺した英雄に与えられる称号。
最高の栄誉の一つであり、歴史を遡っても この称号を持っている者は数えるほどしかいない。
・魔物:
この世界では皆 大小 関わらず”魔”の要素を持っているが、その中でも特に通常の生物から逸脱したような生物群を指す。
要は人間の主観であり、生物学的に言えば別に魔物も この世界においては通常の生物である。
・魔法:
通常の物理法則から外れた不思議な力・技術。
才能の世界であり、人間で その世界の門を叩ける者は少ない。
ドラゴンにとっては種族全体にデフォルトで備わった能力であり、人を灰燼に帰す魔法など別に珍しいものでも何でもない。
・抵抗:
生物の周囲では魔法などの不思議な力が減衰する現象のこと。
これがある為、魔法使いは「対象の体内を発火させて殺す」などの身も蓋もない魔法を使うことが難しくなっている。
ただし、ドラゴンなどの一部の怪物達にとっては その限りではない。
・竜退治:
割と凄いこと。




