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第97話 手強き相手

 突然浜の近くに現れた海神ネプテューヌの巨大な口から放たれる水ブレスはまるで狙い撃ちしたかのようにソラ、キリア、エンディの三人のいる所に直進していった。


 そして、浜に打ち付けられた水ブレスはそのまま敵味方もろとも横薙ぎに払っていくとまるで爆発が起きたかのように軌道にそって爆発が起きていく。


 そのブレスの範囲内にいた者は当然ながら、その周囲にいたものもブレスの余波で吹き飛ばされていく。

 辺り一面は巻き上げられた砂埃、そして水を含んで泥状にとなった砂が空から降って来ていた。


 カイン達が率いる兵士達に多大な被害が及ぶ中、ブレスの直撃を受けたエレン達は――――エレンが咄嗟に張った結界によって全員生き残っていた。


「ソラさん!?」


「ソラ、大丈夫?」


「う、うん......なんとか」


 しかし、結界の発動が僅かに遅れたせいか水ブレスの僅かに食らってソラのわき腹は白い服を染めるように赤くなっていた。


 歯を食いしばりながら意識を覚醒させるソラ。自力で回復魔法をかけながらキリアとエンディに告げてる。


「キリアちゃん、エンディちゃん、二人は私に構わずネプテューヌを弱体化させて。このままじゃこの島がめちゃくちゃになるのも時間の問題」


「そうですね。ですが――――」


 そう言ってキリアはソラの腕を首に回すと肩を貸した。


「ソラさんに構わないことはちょっと出来そうにありませんね」


「そうね。ソラはカイの大事な人だし、それに現状を打破するにもいち早く前線復帰してもらわないと困る。

 だから、それまでの時間は私達が稼ぐからソラは治療に専念して。負い目を感じるならカイのことは諦めてもらうけど?」


「それは出来ない相談だね。わかった。少しの間任せていい?」


「任せてください!」「任せて!」


 キリアはそのままソラを一旦後方へと運んでいく。その間、エンディはその二人への攻撃を防ぐためにその場に残り、静かに気を高めた。


「ここで私が竜化出来たらもっと楽になれるんだろうな......いつも、いつまでも自分の弱さが憎い。でも、今の私でも必要としてくれている仲間がいてくれる」


 エンディの体から白いオーラが溢れ始めた。それは前までルナリスの魔力を通してでしか発動しなかった天恵者の力。


 それがソラが負傷してしまったせいか、はたまた仲間を守るための勇気によるものか、どちらにせよそれは神に与えられた唯一の力であり、同時に同じ神であるネプテューヌには無視できぬ存在となった。


 ネプティーヌはその脅威を排除しようと再び水ブレスを放っていく。しかし、エンディは右腕を伸ばし、そこからに魔力を集めていくと片手で水ブレスを受け止めた。


 そして、その手から魔力を放出すると水ブレスを一気に拡散させた。さらにそのまま左手を握りしめるとまるで投擲するように拳を投げ飛ばす。


 その瞬間、エンディの拳から巨大な拳圧が放たれて、それは物理的干渉力を持つようにネプティーヌを殴り飛ばした。


 それによって、ネプティーヌは大きく体をのけ反らせていく。しかし、ぐるりとすぐさま体を元に戻すと吠えた。


――――グオオオオォォォォ!


 それは痛みを表す咆哮か、もしくは怒りを表すものなのか。その直後、ネプテューヌの攻撃方法は確かに変わった。


 ネプティーヌは海面から渦巻く水を海面からニョキニョキと生やし始めたのだ。その見た目は触手のようにうねっていて、しかしドリルのように回転もしているの触れればひとたまりもないだろう。


「全員! 全力回避!」


 エンディがヒリヒリと感じる生物的危機感に従うように周囲に注意を呼び掛けた直後、それらの渦巻く水はそれぞれが意思を持つように砂浜に向って襲い掛かって来た。


 それらの攻撃に直撃してしまった兵士や、腕の一部でもその渦に触れてしまった兵士はその渦に引き込まれて、中の猛烈な水圧によってすぐさま圧死していく。


 そのせいか渦巻く水のいくつかは兵士により血で真っ赤に染まってしまっていた。さらに、兵士達に被害が出たのはこれだけではない。


「ネプティーヌが何かしてくるぞ!」


 カインが叫ぶと同時に、ネプティーヌは海面から尾の一部を出すとそれで海面を思いっきり叩いた。それによって上がる巨大な水柱に向かって爪を立てて薙ぎ払う。


 その瞬間、水柱からは散弾のように高速の水弾が四方八方に広がっていき、さらには振るった爪が斬撃となって飛んできた。


 その水弾は貫通力をもっているのか無差別に多くの死傷者を出し、斬撃に関しては言わずもがな喰らえば死であった。


「不味い、このままでは......!」


 エンディは焦りに口を歪めると両手の拳を地面に思いっきり叩きつける。

その衝撃によってエンディの前には一時的ながら巨大な砂の壁が出来上がり、その壁の範囲内ではあるが被害を防ぐことに成功した。


 すると、渦巻く水が両サイドからエンディをすり潰そうと襲ってきた。

それをすぐさま避けたエンディだが、またもは他からもそれは襲ってくる。


 エンディは天恵者の力で向上した身体能力を活かしながらそれぞれの攻撃を避けていった。

だが、周囲をチラッと見るとその僅かなタイミングでネプティーヌが姿を消していることに気付く。


「どこに?」


「エンディさん! 左です!」


「!?」


 エンディはネプティーヌが巨体であるために動き回りながらの制限のある視界の範囲でも見つけられると思っていた。


 しかし、渦巻く水がエンディを少しずつ左側に背が向くように、死角になるように誘導してたことに気付かず、さらにはネプティーヌがその死角を突くように這いずるようにして突撃したことで発見が遅れた。


「ぐっ......!」


 キリアの声で紙一重直撃を防いだ。しかし、かみ砕くようにして開かれたその口をエンディは両手足で抑えるのに精いっぱいで、そのまま押されるがままに背後から襲い掛かってくる渦巻く水には対処のしようがない。


 さらにはネプティーヌもゼロ距離から水ブレスを放とうと魔法陣を展開し始めた。

その挟み撃ちは現状のエンディの防御力では確定しは待逃れない。


 しかし、エンディは信じていた。これまで自分が生きてきたのは自分一人によるものではなく、たくさんの仲間がいたからだと。


「もうこれ以上、私の目の前から仲間を奪わせはさせません――――嵐颯二曲撃(デュエルバーミリオン)


 キリアは手元に身の丈以上ある地面に固定した風の弓を作り出すとその弓にセットされた二つの矢を両手で掴んで弦を思いっきり弾いていく。

 そして、限界まで引っ張るとタイミングを見計らって射撃した。


 その矢は砂浜に矢の軌道を描くように高速で移動しながら、エンディの直前で二手に分かれるとネプティーヌと渦巻く水それぞれを横から撃ち抜いた。


 それによって、渦巻く水は爆散、ネプティーヌは貫くどころか相変わらず刺さりもしないが、エンディの危機的状況を打破するには十分なほどには吹き飛ばすことに成功した。


「大丈夫、エンディちゃんさん!?」


 思わずエンディに駆け寄って声をかけるキリア。それに対し、エンディは感謝の言葉を述べた。


「えぇ、なんとか。キリアのおかげよ、ありがとう」


「いえいえ。にしても、どうにも相手はタフですね」


「そうね。基本的に海から顔を出すから私が直接攻撃するのも難しい。

仮に攻めに行っても、躱されて海に落ちたのならそれこそ死を意味する」


「――――となると、私の出番ってわけですね」


「ソラさ――――ではなく、ルナリス様の方ですか?」


 すると、いつの間にかそばに居てひょこっと顔を出したソラ。

しかし、その目には特有の五芒星が出ているので、今のソラの肉体の主導権はルナリスが操っているということなのだろう。


 そして、ルナリスは二人、否、三人に申し訳なさそうな顔をした。


「ごめんなさい。私が力を溜めるために熟睡していたばっかりに、エンディは危ない目に遭うし、ソラは傷つくしで」


「いえ、ルナリス様が謝ることではないです」


「そうね。それにその攻撃をしてきたネプティーヌもまた違う。その憎むべき首謀者は今カイが相手にしてくれてるはず。

それにルフトとトトがネプテューヌの弱体化に動いてるはずでもあるから、今の私達に出来ることはとにかくここを死守すること」


「そうですね......」


 ルナリスは不意に周囲を見た。現状、三人が主だってネプティーヌを相手しているが、その他の浜の方では普通に浜から上がって来た魔物をカイン達が対処している。


 戦況から見ればほぼ無限のように魔物が襲って来ていて、かつ先ほどのネプテューヌの攻撃によって不利的状況は否めない。


「とにかく、私達がネプティーヌの注意を引き続けなければいけないということですね」


「そうなるわ」


「そして、ネプテューヌ様もそう簡単に事を済ませてくれはしなさそうです」


 そして、三人が眺める海には未だに無傷を誇るネプテューヌが覇気を纏った顔で見つめていた。


*****


――――遺跡前


―――――バババババ


 そんな音が響きながら動き続けるカイに追尾弾のように襲ってくる水の斬撃。

それらを両手の銃で撃ち弾き、躱し、時には斬撃同士の相殺を狙いながらケイネスに近づいていく。


 ケイネスはそんなカイに距離を取らせるように目の前の水をまるでこねるかのように手を動かすとそれをさらに両手で圧縮していく。そして、それを接近してきたカイに投げた。


「爆氷」


「.......っ!」


 それがカイに近づいた瞬間、一瞬にして大きさ五メートルほどの無数の棘が生えた球体が出来上がった。 それに対し、カイは咄嗟に前の水を蹴ってその攻撃から避けていく。


「あぶなっ! まさか水だけでなく氷も使えるとはな」


「氷も水だろう? そして、この場は俺のテリトリー。お前は俺の手のひらの上ってことだ!」


 ケイネスは目のまで両手を組んだ。すると、カイの左右からは僅かに手のように形どられて見える水圧が両手からカイを挟み込み、動けなくさせた。

 そこへケイネスは先ほどの氷の塊を勢いよく押し込んでいく。


 その氷に直撃したカイはそのまま下の地面へと叩きつけられるとケイネスは右手を伸ばし、さらにドリルのように激しく回転させた水のブレードを氷に突きつけ、そのまま下にいるカイへと攻撃し――――


「がっ!?」


 しかし、それよりも僅かに速くカイの右手の銃口がケイネスの頭に突きつけられ、そのままケイネスは吹き飛ばされた。


「頭にゼロ距離から撃って少し血を流す程度のかすり傷.....これは骨が折れそうだ」


 どこかひょうひょうとしているカイにケイネスは大いに口元を歪めて告げる。


「その余裕のある態度、すぐに消してやるさ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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