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コンデュリング・ソード  作者: ルイルイseda
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第2話 『セダ』

 巨大な人喰い熊が倒れ、そこに現れたのは小柄な少年だった。

黒いとんがり帽子に、白黒のローブを身に着けている。

片手には1m70cmほどの長杖を携えていた。

その如何にも魔法使い然の少年は、こちらに向かってすたすたと歩いてくると、


『………大丈夫?『セダ』」


と言い、右手を差し出してきた。


―――え、『セダ』って誰だ?


この子は俺を『セダ』という名の誰かと間違えているのか?

と思ったが、彼の善意を棒に振るわけにもいかないので大人しく手を取った。

ローブの裾から覗いた華奢な腕で支えてもらい、そのまま、よいしょと立ち上がる。


「あ、ありがとう……」


小さくぺこりと頭を下げると、


「え、あ、いや別にいいんだけどさ……」


と少し驚いたような、慌てているような声で返答された。


「なんでよりにもよってこの森で一番強い巨大熊―――『モルトウルス』と戦うかなぁ……」

「へ?モルトウルス……って、今のヤツか?」


俺が聞き返すと、彼はなぜか、再び不思議そうな表情を浮かべた。


「………セダ?生まれたころから言われてただろ、この森ではモルトウルスが出るから気をつけろって」

「いや、ごめん俺セダじゃ………………」


―――セダじゃない。


そう言おうとしたが、俺は静かに閉口した。





……なんで?





……なんでだよ……。





「………セダ?」


魔法使い然の少年が、俺の顔を下から覗き込んだ。

幼さの残る顔。

リスのような、茶色の大きな目が俺を捉える。


「…………あ、……」




―――俺は、『セダ』なのか?




俺は釈然としない思考を無理矢理切り替え、笑顔を作った。


「……ちょっと驚いちゃって、思考が追い付いてないや。………とりあえず、帰ろう」


眼前の魔法使いは杖を背中に背負ってあるホルダーにしまうと、「なんか、怪しいなあ」と、ボソリと呟いた。


 俺――〈セダ〉は命を救ってくれたこの少年の背中を追って、鬱蒼と茂った森の中を歩いて行った。

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