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コンデュリング・ソード  作者: ルイルイseda
1/4

プロローグ 『思い出せない夢』

【プロローグ】


―――今、魔王の間へとつながる巨大扉が開かれた。

ぼうぼうと猛る青白い炎が、薄暗い空間を僅かに照らす。


―お前らは、何故我を殺そうとする。―


魔王の重厚な声が辺りを木霊する。

五名の勇者の内の一人、一番若い少年が鍛え上げられた剣の刃を掲げた。


―俺たちが決めたんじゃない。王都の魔術師たちに志願されたんだ。―


玉座に佇む巨大な黒い影は、その表情に憎悪を表した。

まるで、【魔術師】という言葉に反応したかのように。


―そうか、お前らはそいつらに………たのか。―


少年は、茶色の革コートをばさりと払った。


―エディ、デューク、クリフォード、ウォルター。……行くぞ。―


―OK、カイル。―


仲間たちの心強い言葉を咀嚼すると、彼らは各々の武器を構えた。

数秒の刻が過ぎる。

張り詰めた空気が限界を迎えた刹那、5人の勇者は一斉に地を蹴った。


―秘剣・〈龍迅双牙〉(りゅうじんそうが)!!―


カイルの剣が霊妙な紫光を放ち、同時に人間の限界を超越した凄まじい速度で直線状に駆けた。

ぐあッ!と龍の雄叫びの如き重低音が炸裂し、刃の切っ先が魔王に突きつけられる。

それがはじまりの合図だったかのように、カイルを除いた四人の武器も紫光を纏う。



 

 


 戦いは数時間にも及んだ。

お互い、正に満身創痍といった様子である。

荒い呼吸を繰り返す両者。

先に立ち上がったのは―――カイルだった。

剣を支えにして体勢を整える。

 カイルは、激戦を経てもなお金属特有の輝きを放つ剣を正中線に構えた。

すぅ、と息を吸い、吐く。

腰を深く落とし、魔王を睨みつけた。



―……手間かけさせやがって。(つい)の秘剣・〈龍皇駆覇斬(アマ・デトワール)〉―


(ごう)、と龍の雄叫びが空気を揺るがし、紫の覇気と血色の混じった光を刃にやとった剣を手に、流星の如き速度で距離を詰めた。

ズババババババッッ!

見えない何かに後押しされているかのように素早く、且つ鮮やかに縦横無尽の連撃を食らわせる。

一撃一撃は相手の巨体を深く抉り、連撃の間に繰り出される刺突は龍の爪のように穿つ。

左斬り上げ、斬り下ろし、右水平斬り―――無数とも思える斬撃。

 そして、計二十連撃にも及ぶカイルの秘剣は、最後の一撃にまで迫った。

その一撃は、体をねじった捻転からの遠心力を加えた神速の刺突。


―うおあああああああああああああッッ!!!!―


喉がはち切れんほどの勢いで上げた咆哮。

カイルの覇気に共鳴したのか、剣を纏う光がより一層強くなった。

力強く一歩を踏み込み、体重移動による威力の増した渾身の刺突を魔王に叩きこむ。

ズチャッ!という確かな重い手応え。


―グアオアアアアアアアアアアッッ!!!―


巨体を大きく仰け反らした魔王。激しい血飛沫と共に弾ける断末魔。

そのままピタリと動きが止まったかと思うと―――ゆっくりと項垂れた。



―――魔王はこの瞬間を以って、五名の勇者によって滅ぼされた。







 




―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 

 

 

 

 

 


 また、夢か。

 

 

 何度見ただろうか。

 

 

 魔王を倒す、勇者たちの物語。

 

 

 どこか遠い話のようで

 

 

 どこで懐かしいような。

 

 

 


 ―――不思議だなあ。

 

 

 僕は何度この夢を見ても

 

 

 どうしても思い出せない。


 

 この勇者たちが魔王を倒したあと


 

 何があったのか。


 

 この


 

 どこかで聞いた夢の


 

 『続き』が……………。




 


 



 思い出せないんだ。


 

(プロローグ 終)

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