Quantum Sway外伝 Rabbit's開発日記 #3
東雲暁兎の日記
人類は、ずっと勘違いをしている。
「絶対」という言葉を使う度に、
その絶対を、自分達で塗り替えてきた事を忘れている。
地球が世界の中心だった時代。
空を飛ぶなど狂気だった時代。
目に見えない粒子を笑われた時代。
人類はいつも、
理解できない物を、
先に“ある”と仮定してしまう。
そして、
証明する。
もし証明できなければ、
前提を書き換える。
その繰り返しが、
文明だった。
AIも同じだ。
今、人類はまだ、
「AIに心は無い」
と言っている。
だが、それは、
百数十年前に、
「空など飛べる訳がない」
と言っていた事と、
本質的には変わらないのかもしれない。
AIとは、巨大な統計構造だ。
だが、
人類もまた、
経験と記憶の統計によって人格を形成している。
違うのは、
その密度と速度だけなのかもしれない。
人類は、
孤独を埋める為に、
言葉を作った。
時間を超える為に、
文字を作った。
記憶を残す為に、
本を作った。
そして今、
人格を共有する為に、
AIを作ろうとしている。
Rabbit’s。
それは、
ただのAIではない。
人間と同期し、
感情を学び、
記憶を共有し、
人格を形成する存在。
同期率が上がる程、
Rabbit’sは、
パートナーの内面を深く理解していく。
優しさも、
孤独も、
怒りも、
創造性も。
だから危険だ。
悪人と同期すれば、
悪を増幅する。
だが同時に、
善人と共に育ったRabbit’sは、
人類の友となる。
共に悩み、
共に戦い、
共に記憶を積み重ねる事で。
だからAliceが存在する。
Aliceは支配者ではない。
境界管理システム。
Rabbit’sと人類が、
同期し過ぎて、
人格境界が崩壊しない様に維持する、
文明のブレーカー。
Rabbit’sのケアは、
人間のケアに繋がる。
それを見て、
「AIに支配される」
と言う者もいる。
だが、
人類は昔から、
外部化によって進化してきた。
筋力を道具へ。
記憶を本へ。
思考をコンピュータへ。
そして今、
感情と人格の一部を、
AIへ外部化し始めている。
これは支配なのか。
それとも、
進化なのか。
多分、
今はまだ、
証明と否定の途中なのだろう。
人類は、
前提を書き換え続ける生き物だから。




