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怪異事務管理所  作者: ちゃね
第零告
6/26

六話 虚構廃線(3)

所々蛍光灯がついている薄暗い改札だ。


横を見ると澪の瞳が震えている。

まるで人生最大のトラウマともう一度対面しているような。

そんな様子だった。

声にもならない声を出す澪にセイカは「大丈夫ですか?」と投げかける。

だが澪の震えは収まるどころか強まった。



「声が聞こえる…」

「…声?」

「優しく囁きかけてくる声が…」



セイカは声と聞き


『自分で言う音のことだろうか?』


この考えが真っ先に浮かび上がった。



「呪詛が紛れている…」



その時セイカにはあの音が聞こえていた。

嫌いだ。嫌だ。

聞きたくない。

だが今までの音とは少し違う感じがした。


まるで今から始まるような───


改札の蛍光灯が消え、電光掲示板が光る。


そしてまたあの鬱陶しいスレッドが流れ始めた。

「ああ!収まれ!」と思わず感情的になる澪。

そして人生を狂わせたあの音。

セイカはじりじりと、確実に追い詰められていった。


「あれ…」


澪が下にしていた目線をあげると何かがおかしかった。

何かを感じ取った。

だが、その何かを最初に感じ取ったのは澪でも、セイカでもない。

二人が気づくころにはもう空気が丸々入れ替わっていた。



入れ替わったように、セイカの様子がおかしくなっていった。

息ができているはずなのに、空気が体の内側に入ってこなかった。

手は動いている。だがそれが自分の手だという確信だけが少し遅れてきた。

逃げようとした、だが出来なかった。

逃げ場がなかった。


いや、逃げ場がない、というより『すでに逃げ終わっている場所に立たされている』という感覚だった。



セイカの体の中と外で何かが鳴り続ける。


それは音として聞こえているわけではない。ただ、聞き終わった後の静けさが聞こえていた。



───何かが外に出た。


セイカの意思とは無関係に。


彼女を通り抜けて。



その瞬間セイカの頭上に黒い液体が出現した。

液体には粘り気があった。

たまにボタボタと雫が落ちてくる。

地面に吸い込まれるように消えるものもあれば。

地面についた瞬間固形化するものもあった。



液体は徐々に円を形成していった。

だがそれは円形とは決していえない。

所々が途切れていたり、くぼんでいたりした。

不安定な存在で、なぜ存在できているのかもわからなかった。


挿絵(By みてみん)


「何…これ…」



澪はただただその形成される様子を見ていた。

普段ならそこで何か対処をする。

だがその時だけはなぜか動けなかった。


液体は澪に近づいてきた。

そして、触れた。



それで澪を襲ったの強烈な苦しみでもなければ、悲しみでもない。

強烈な既視感、そして何かの記憶が流れ込んできた。

澪は危険を顧みず、すぐさま固形となった液体を憶境界に放り投げた。

すると憶境界は安定したのか消えた。


「これはいけない」


澪は聞きなじみのある声に安堵した。


「ナズナ…さん」

「なんかすごいことになってるね」

「どうにか…してください」

「わかってるよ」


ナズナは何もないところで矢を番える仕草をする。


そして、放つ。


電光掲示板に矢のようなものが刺さった。




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