二十六話 不可逆
私は怪異だ。
その中でも統括怪異という分類らしい。
私は怪異事務管理所という組織に利用されている。
でもまあ、よくしてもらっている。そういう、拷問的なことはされないし。人権のようなものが与えられているようだ。
多分、怪異事務管理所は怪異と人間の共存を望んでいる。だから、意思疎通が可能な私のような怪異は、統括怪異として、こうやって保護される。
だが、怪異は怪異でありそのほとんどは人間に害をなす存在。だから処理されてしまう。
私は頭がいいから、そんな惨めで無様な最期は送りたくない。
だからこそ、私は怪異事務管理所に色々な情報を提供している。
そんな無様な最期、それは七告での死。
七告はいわば世界の再構築。怪異はそれを理解している。
再構築を例えると、金属の模型があったとしてそれをまた溶かして、同じ型でまた同じ形を作る。
そうするとまた同じようなものができる。
同じようなものってだけで、完全に同じ世界ではないのだ。
あるものはそのままに、あるものは混ざり、あるものは消える。
それが七告。
でも、それはまだいいのだ、人などの物体はまだ型に収まる。だが、私達怪異は元からの形作る素材の存在ではない部外者。だから世界のバグとして処理される。そうすると存在は抹消される。この世界のバグを消すプログラムが一度に何回も働かないといけないくらい、怪異が発生すると、一旦世界ごと抹消する。それが七告の正体。
怪異事務管理所はそれが起きるのを防ぐために、昔から名前が変わり今に至るまで怪異を処理し続けた。
だが今、起こってしまった。
私もいつ消えるか分からない。
怖い。恐ろしい。
そんな感情から私達は生まれたはずなのに、今度は私達がそんな感情を生んでいる。そうしたらどうなるんだろう?
本来存在しないものから生まれた。存在するはずなかった存在しない存在か……。
ああ、そういえばあのセイカとかいう小娘。七告の音を聞けるとか誰かが言っていたな。
なんだっけ……ああ、局長か名前は……雅だっけな。祓務局のほうが庵だったか。いや違うな、怪務局のほうのナズナだ。
確か前の会議で、その蓬莱セイカが七告の起こりを聞くことができるんだから、そうしたら対策できるみたいな話をしたのか。
……多分無理。
七告は強制的なプログラム施行、完全な不可逆、止めることはできない。
自分で説明するだけで、色々吐き出してしまいそうだ。
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私が聞こえる音に対し、ナズナさんは対策を考えてくれている。いつその対策というものが出来上がるのか、どのくらいの効果なのか、そもそもできるのか分からない。だが、できるかもしれないという希望があるということによって、私はその希望の光を追って暗闇を進めることができる。
正直、私はできないと思っている。別に技術力がダメとかそういう話じゃなくて、音を対策するというのは七告に対抗するということ、それは世界に対抗するということと同義だ。
だからできない。
でも、怪異が人の感情で生まれるように、このできないという感情が具現化というか、本当になるかもしれない。想いが重いと、おもむろに出来上がっていくのかもしれない。世界の裏で気づかないうちに。
だけど私は信じるしかない。
ナズナさんは私を信じてくれている、だからこそ今の私がある。
私も、ナズナさんを信じるべきだ。
信じないといけないんだ。
「……ん」
異常なほどに、胸が脈打つような音がした。




