二十四話 流れ
朝。体調は……そこそこだった。
昨日の場所的怪異と七告関連の何か。それによる体調不良の地続きのような感じだ。
極低頻度で吐血もする。
まぁ、休みなだけ随分と気が楽だ。
とりあえず、ルーティンとなっている洗顔を行う。
私の家は二階建てで、マイルームは二階にある。
洗面所に行くために、階段を下りることくらい、普段なら容易にできるというか、簡単だとか難しいだとかの話じゃなくて、それを当たり前として行えるはずなのに、今日は階段を下りる難易度というものが存在しているかのように思えた。
鏡を見る。
いつも通りの自分だ。
蛇口を捻る。
ジャーという雨とかとはまた、違う音。
「ケホッ」
思わず咳が出た。やはり少し血が混じっている。
……何をしようとしたんだっけ。
ああ、洗顔か。
手を桶のようにして水をくむ。そして顔にバシャっとかける。
すげぇ冷たい。
一気に眠気が覚めた。
タオルを手に取り、顔を拭く。
「さっぱりしたぁ~」
もっとさっぱりとしたいなら朝風呂がいいんだろうけど、そこまではやらなくてもいいと思っている。少なくとも、私は。
リビングには誰もいない。
親はまだ寝ているようだ。
少し早く起きてしまったらしい。
「何もすることないな……」
多少の寂しさというか、孤独感というか虚無感的なものに襲われる。
なんとなくテレビをつけた。
ニュース番組だった。そんなに興味はない。でもこの時間帯だとしょうがないだろう。
「次のニュースです。全国の病院で、謎の記憶が流れ込んでくる入院患者が、訴え出てきているそうです」
記憶が流れ込んでくる?
「主に輸血パックを使用した患者の間で流行っており……」
──────なんだ。
なんだこれは。記憶が流れてくる?
輸血パックを媒介して、なにか怪異的な現象を体内で起こしている?
だとしてもなぜ……
いや、怪異だからそのなぜっていうのはないだろうし、あったとしても通用はしないんだろう。
今日は日曜だから通常、業務はない。
だが私の本業は学生であり、本来仕事をする平日にはいくことができない。
だから私は休日に怪異事務管理所へ行くことがほとんどだ。
平日に行くのは何か身に怪異現象が起こり、ナズナさんに直接報告へ行くときくらいだ。
だから今日、行く必要がある。
でも今現在、朝早すぎるので向かうこともできない。
────静寂を突き通すリビングで、異質ともいえる存在が鳴った。
「お腹すいた……」
適当に食パン焼いて食べよ。
ああ、また眠くなってきた。
『……チーン』
────あ、立ったまま寝てた。
お皿お皿……。
「あっつ、あつ」
ほかほかでカリカリだ。
いい感じに湯気が立っていて、麦のいいにおいがする。
「バターはどこだ~」
お母さんはよく冷蔵庫の奥のほうに入れている。
いつも隠れている。
「あった」
よし、これでOK。
とりあえずこれで十分だ。
「いただきます」
カリッと音が鳴る。
香ばしい麦の香りが鼻と口の中で漂う。
そしてバターのまろやかでコクのある、食欲をそそられてしまう味と香り。
最高だ。結局こういうのが美味い。
「ごちそうさまでした」
食器類を洗い、ソファに座り込む。
このまま寝てしまいそうだ。
寝る……夢視。
夢視ってどんな感じなんだろう。
ちょっと体験してみたい気もするし、怖いからしたくない気もする。
でもやっぱり、怪異と話すというのは興味がそそられる。




