十八話 観測イマジナリティ
午後五時二十分。
明日が休みということもあり、私は家でだらだらと過ごしていた。
本当ならこのままだらだらと過ごせるはずだったのに。
スマホが鳴った。
ナズナさんからのビデオ通話だ。
とりあえず出てみた。
そこに映し出されていたのは、ナズナさんと他数名が長机を囲んでいる様子だった。
「セイカちゃん~?これ見えてる?」
「はい、見えてますよ」
何となく、本当になんとなくなのだけれど、ナズナさんがこんなにも軽くしゃべっている中に、厳格な雰囲気を感じ取れた。
「今、各局の局長さんとその一行とで、会議をしているんだけどね」
局長が集まる会議でこんなにも軽く話していいのだろうか。
いや、普通はダメだろ。
メンタルどうなってるんだ。
逆に、既に壊れてて無敵状態ということか?
「七告が起こっているんじゃないかって話になったんだけど」
「七告ですか……」
「私的に起きているのか分かる人、セイカちゃんくらいだと思うんだけど」
「んー……。あーでも、一週間くらい前に、いつもと違う音が聞こえたときから、異常な現象が周りで起きている気がしますね」
「あれか、私に電話かけてきた時のやつか……」
祓務局の局長が「その音とはどのようなものだ?」と口を挟んだ。
かなり説明しがたい現象であるため、できる限りの説明をしたつもりだが、あまり理解できていない様子だった。
「いつもは、まぁそんな感じなんですけど、その違う音っていうのが、ラッパというか鐘というか……セプテット?みたいな、いろんな音が混ざり合った感じで、それでも、一つ一つの音は独立していて、確かに聞き取ることができました」
「我々はそのような音をここ最近────というか、人生で一度も聴いたことがない」
この『人生で一度も聴いたことがない』という言葉は、私の中ではかなり響く。
こういうのを聞くと、私が壊れているのか、優れているのか……どちらか一方に定めようとするために、頭で議論を始める。だが、過程はどうあれ、そのほとんどはマイナスの結果になってしまう。
すると祭務局の局長がするっと、話に乗ってきた。
「ラッパというと、やはり黙示録だな……」
全員、気難しそうな顔をしている。
七告が起きているということにしたくないのだろうか?
怪異事務管理所は、そういった現象を管理するためにあるのではないのか?
────何かを隠そうとしている?
「あー…!今思い出したんですけど、数日前。下校の時、学校の前にナズナさんがいると思ったら、二輪のクチナシだったんですよね」
「クチナシか?」
「はい、クチナシです」
「その話、詳しく」
つい、数日前のことを思い出しながら、できる限り鮮明に話した。
少し話疲れ、画面外に目をやり、伸びをする。
そして、画面を見ると、完全にフリーズしていた。
バグっていた。というか、なにかを実行するための計算などで、重くなって動かなくなってしまったのだと思う。
しっかりプログラムが処理をできている。そういうわけだ。
「ああ、ようやく動いた」
あちら側はもう、何か解決したようだった。
「蓬莱セイカさん。とりあえず、七告は起きているという結論に至りました。そして今はまだ第一告目だという認識でこれから進めていきます」
「はい……起こっているでいいんですね……」
「これ以上議論を続けると、余計に話が複雑になるだけだと判断しました。あと、セツナが七告関連の話をすると暴れるので」
「暴れるんですか……」
何か拘束するものでも持ってきていないのだろうか?
なんかもう、怪異事務管理所という組織が心配になってきた。
「最後に、蓬莱セイカさんには、その『いつもと違う音』というのを聴いたら我々に報告してください。いつでもいいです。聴いたら直ぐに」
「分かりました……聴いたら直ぐに。ですね」
そして、ビデオ通話が終わった。
いつの間にか六時になっていた。
体感20分くらいだった気がするのだけれど。
ふと、「はあ」とため息が出る。
責任感が、増えているのがわかる。
プレッシャーが、どんどん積み重なっていく。
でも、誰かのためになるなら。
そう思った瞬間────
スマホに通知が来た。




