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異形の領主 ~追放された俺は《決闘領域》で異形国家を築く~  作者: 葵 直虎
第七章 志とは、人を繋ぐ道標
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第七十三話「領主の剣」

盗賊の頭領と朔也は静かに向かい合っていた。

周囲では雷堂たちと盗賊の戦いが続いている。

だが二人だけは動かない。

頭領は大太刀を肩へ担ぎ、不敵に笑った。

「領主自ら来るとはな。」

「逃げると思ってたぜ。」

朔也は静かに刀を構える。

「逃げるつもりはない。」

「この道を守ると約束したから。」

頭領は鼻で笑う。

「きれい事だ。」

「そんなもんで人は守れねぇ。」

そう言うと、一気に間合いを詰めた。

大太刀が唸りを上げる。

重い。

朔也は刀で受け止めるが、その衝撃で数歩後ろへ押し込まれた。

(強い……。)

力だけではない。

踏み込みも速い。

戦い慣れている。

このままでは押し切られる。

朔也は静かに息を整えた。

(なら——。)


——発動条件を確認。対象:知性あり。

——スキル【決闘領域】、展開。


ーーー


景色が変わる。

風が止み。

剣戟の音が消える。

雷堂も。

悠真も。

兵も。

盗賊も。

すべてが静止した。

動いているのは朔也と頭領だけ。


頭領は辺りを見回し、小さく笑った。

「これが噂の決闘領域か。」

「権藤を倒したって話は聞いていた。」

「なるほど。」

「面白ぇ。」

大太刀を構え直す。

「逃げられねぇなら。」

「勝つだけだ。」


朔也も刀を構える。

「俺も。」

「負けるつもりはない。」


二人は同時に地を蹴った。

激しい剣戟が響く。

頭領の一撃一撃は重く、朔也は受け流すだけで精一杯だった。

「どうした!」

「その程度か!」

大太刀が横薙ぎに振るわれる。

朔也は身を低くしてかわす。

そのまま斬り返す。

しかし。

「甘ぇ!」

頭領は柄で受け止め、朔也を蹴り飛ばした。

朔也は地面を転がり、すぐに立ち上がる。

(やっぱり強い……。)

その時。


——《勝機視界》、一時的発動。

——相手の隙を視覚化:右肩、赤。


赤い光が見えた。

(そこだ!)

朔也は一直線に踏み込む。

だが。

「読んでたぜ!」

頭領は笑いながら身体をひねる。

赤く光る場所へ届く寸前、大太刀の柄が朔也の刀を弾いた。

ガンッ!

朔也は再び距離を取らされる。

「目がいいだけじゃ勝てねぇぞ。」

頭領は余裕の笑みを浮かべた。


朔也は息を整える。

(避けた……。)

(いや。)

(違う。)

(見えていた隙へ誘導された。)

頭領は経験で戦う男だった。

隙を見せることすら戦術にしている。


朔也は静かに目を閉じた。

焦るな。

雷堂さんの力を借りれば勝てるかもしれない。

でも違う。

これは俺自身が越えなければならない戦いだ。

勝機視界は未来を決める力じゃない。

勝つための"きっかけ"を教えてくれるだけだ。

もう一度、相手を見ろ。

呼吸。

重心。

足運び。

大太刀を振るう癖。

すべてを観察する。

頭領が再び突っ込んできた。

「終わりだ!」

大太刀が振り下ろされる。

朔也は半歩だけ踏み込んだ。

その瞬間。


——《勝機視界》、再発動。

——相手の隙を視覚化:右脇腹、赤。


今度は違う。

頭領の体勢が完全に崩れている。

朔也は迷わなかった。

「はあぁっ!」

刀の峰が赤く光る場所へ正確に叩き込まれる。

鈍い音が響く。


「がっ……!」

頭領の身体が大きく揺らぐ。

続けて朔也は一歩踏み込み、峰で胴を強く打ち据えた。

頭領は膝をつき、大太刀を取り落とす。

「見事だ……。」

悔しそうに笑う頭領。


——スキル解除。勝者:神谷朔也。


ーーー


世界が元に戻る。

兵たちの怒号が一斉に耳へ飛び込んできた。

目の前では頭領が膝をついている。

「頭領!」

盗賊たちが動揺した。


雷堂は豪快に笑う。

「決まったな!」

「また一つ強くなったな、朔也。」


頭領が倒れたことで盗賊たちの戦意は一気に崩れた。

武器を捨てる者。

逃げようとして兵に取り押さえられる者。

勝負は、完全に決していた。

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