第四十話「白金城への道」
初投稿です。
夜が明け、空が白み始めるころ。雷堂邸の中庭には、集まった義勇軍たちが列を成していた。人数は百五十程度で犬飼軍よりは数が少ないのは明白だが、誰もが確かな意志を胸に秘めていた。
朔也はその最前列に立ち、静かに目を閉じる。耳に入ってくるのは、剣の鞘が鳴る音、鎧の軋む音、そして、風の音——。
「皆、今日この場に来てくれてありがとう... 俺たちはこれまでこの白金領領主、犬飼忠範の圧政に苦しめられてきた... しかし、これからは違う。俺たちで変えるんだ!」
朔也は全員の気持ちを代弁するかのように伝えた。
「行くぞ」
「おー!」
その一言で、行軍が始まった。
———
道中、義勇軍は町や村を通り、白金城を目指す。通過するたびに、道端から住民たちが顔を出し、兵士たちに食料を渡す。時には、年若い者が加わりたいと願い出ることもあった。
茜はその度に、柔らかくも真剣な口調で語りかける。
「……戦いは、命を奪うだけじゃありません。皆さんの村のお年寄りや子供など一人じゃ生きられない方を守らという形で一緒に戦いましょう!」
「...あぁ!嬢ちゃんも無事生きて帰ってこいよ!」
「生きて……帰ってきます。誰一人、欠けることなく」
道の脇に咲く草花も、どこか緊張を帯びているかのようだった。
宗二や陣内は、義勇軍の兵士たちが緊張しているのに気づき、声をかけていた。
「おい、まだ白金城にはついてないぞ... もう少し楽にしたらどうだ?」
「い、いえ... 正直、いざ戦いになったと実感して、怖いんです...」
宗二からの言葉に、とある村から義勇軍になった若者が恐る恐る答えた。
「...わかるぞ」
「はい...?」
「なに、俺も若い時は同じだった...」
「え..!? そうなんですか.. 全く想像できません」
若者は信じられないという様子だと首をふった。
「そうだ、今は、年取って慣れてしまっているのかもしれない。こういう時はな、大切な人や未来のことに目を向けるんだ。お前、恋人がいたり、夢なんかはあるのか?」
「は、はい。村に嫁が一人とお腹の中に赤ん坊がいます」
「なら、お前は生きて帰らないとな。今なら、まだ引き返せるぞ」
宗二は肩に手をかけ、若者に言った。
「...... いえ、城に行かせてください...! もちろん、村に帰りたい気持ちはありますが、それ以上に白金領を変えたいという思いが強いのに気づきました。これから生まれてくる子供のためにも、私も一緒に戦いたい!」
若者は震えが止まり、まっすぐな眼差しで宗二を見た。
「..ああ!いくぞ、この白金領を変えにいくぞ」
「はい!」
宗二が若者から離れたあと、周りにいた兵士たちも同じ気持ちなのか肩を組み、各々の村や気持ちを話しながら歩みを進めた。
———
その頃、白金城内では緊迫した空気が漂っていた。
忠範の下で指揮を執る家臣たちは、雷堂の反乱と義勇軍の進軍を前に、動揺を隠せずにいた。
「玄馬が敗れたのは痛い……雷堂が裏切った今、白金城の威光も地に落ちたと言っていい」
「雷堂に通じた者がいるやもしれぬ。忠誠心を確かめるべきでは——」
忠範は、玉座に座ったまま、苛立ちを露わにしていた。
「黙れ……民のため?理想のため? 戯言だ! 力をもって治める、それが領主というものだろうが!」
そこへ、密偵の報告が届く。
「雷堂とその一党、今朝より白金城へ進軍を開始しました。現在、街道を北上中。三日もあれば到達するかと」
忠範は立ち上がり、吠えるように叫んだ。
「迎え撃て!雷堂を討て! 奴の首を持ち帰った者には、領内五村を与える!」
その狂気染みた声に、家臣たちは顔を見合わせながらも、ひとまずは従うしかなかった。
———
進軍中の朔也たちは、やがて最初の関所跡に差しかかった。ここには忠範軍の前哨がいるとの情報があり、警戒が強まる。
「……来るぞ」
先頭にいた陣内が声をあげた。
木々の陰から、忠範軍の斥候兵が姿を現した。数は五十人。小規模ではあるが、明らかに殺気立っていた。
「ここから先は通すなとの命だ」
陣内は、銀の旗を背に、笑みを浮かべる。
「それは困るな。こっちは、お前ら腐った領主たちを討ち取り、未来を自分たちで作る道を通ると決めたんでな」
次の瞬間、風を切る音とともに小競り合いが始まる。だが、数の上では義勇軍が勝っていた。
数分で一部生き残っていたものは撤退し、周囲に静けさが戻る。
「とうとう、忠範も自身の状況が危ないと気づいたな。これはあくまで前哨戦に過ぎない...」
雷堂がつぶやいた。
「生き残った者が数名いたな... おそらくこれで、俺たちの規模や進行具合が忠範にも届くだろう」
朔也は前方の白金城の方向を見つめながら、拳を握った。
「俺たちはもう狼煙を上げたんだ… 俺たちは、止まらない!」
戦いは、すでに始まっている。
次に待つのは、本陣との激突——。
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