第十九話「宴の夜」
初投稿です。
砦の門が静かに開かれる。
中から、拍手と歓声が湧き起こった。
「おかえりなさい!」
「よくやったぞ、若いの!」
村人たちが手に手に松明を掲げ、朔也たちを出迎える。
宗二が微笑みながら呟いた。
「今日は、勝利を祝うべきだな」
その言葉に、村人たちはさらに沸き立った。
ささやかながら、勝利の宴が始まる。
炊き出しが行われ、焚き火の周りに人々が集まる。
焼いた肉や温かな汁物の香りが立ち上る中、
茜が朔也のもとへ駆け寄ってきた。
「朔也さん、すごくかっこよかったです!」
顔を赤らめながら、無邪気な笑顔を向けてくる。
朔也は少し照れたように笑い、頭をかいた。
宗二は焚き火を囲む村人たちに目を向け、
「今回の戦い、よく踏ん張った」と静かに声をかけた。
村人たちは誇らしげに頷き合う。
——そんな中、朔也は一人の若者に歩み寄る。
体格の良い、たくましい青年──庄兵衛だ。
「庄兵衛、戦い、よく頑張ってくれたな」
声をかけると、庄兵衛は一瞬驚いたような顔をした後、
少し照れながら頭を掻いた。
「へへっ……俺たちにも、ちゃんとできるって証明したかったんです」
その言葉に、朔也は目を細めて微笑む。
「これからも頼りにしてる。村のみんなを支えてほしい」
庄兵衛は力強く頷いた。
「任せてください! 俺たちも、ここを守りたいんです!」
そんな頼もしい声に、周囲の村人たちからも歓声が上がる。
宴も盛り上がる中、朔也はふと思い出したように立ち上がった。
「みんな、ちょっと聞いてくれ!」
焚き火を囲む人々が注目する。
朔也は隣に立つ少女を紹介した。
「この子は舞。これからしばらく、ここで一緒に過ごすことになった」
舞は一歩前に出ると、ぺこりと頭を下げる。
「舞と申します。よろしくお願いします」
可愛らしい笑顔に、村人たちはざわめきながらも温かく迎え入れた。
宗二は警戒の色を隠しきれなかったが、朔也の決断を尊重して黙っている。
茜はきょとんとしながらも、興味深そうに舞を見つめた。
やがて、宗二が焚き火の明かりを背に言葉を紡ぐ。
「これから、もっと厳しい戦いが待っているだろう。今のままでは防ぎきれない」
朔也も真剣な顔で応じる。
「砦を強化して、仲間も増やさなきゃ。……ここを、俺たちの居場所にするために」
村人たちは、静かに、しかし力強く頷いた。
誰もが、もう覚悟を決めている。
宴が落ち着き、焚き火の前で朔也は一人、星空を見上げた。
薪がはぜる音だけが静かに響く中、心に誓う。
(絶対に、この場所を守り抜く)
少年の瞳に、確かな未来への光が宿った。
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