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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【38.5話】 リリアとゴルとケンタと

秋晴れの空、高く青い空に千切雲がパターン良く浮かぶ。夏の湿気がなくなり、サラっとした空気が心地よく髪を撫で去る。


リリアはオーガの男性に肩を貸しながら道を急ぐ。ルーダ港までもう少し。

かれこれ3時間近い道のりをオーガに肩を貸しながらやってきた。リリアは全身汗でびっしょり。リリアより一回り以上大きい体つき、筋肉の塊のような戦闘種族、重厚な装備だけでも相当な重量だ。

オーガの名はゴルアークと言うらしい。夜中パーティーが山中で襲撃に合い、戦ううちに大けがを負ってしまって、仲間とはぐれたと言うのだ。ポーション類も使い切り、骨折した足で這うようにして下山して来たところをリリアが保護した。

間の悪い事にリリアもルーダ港での買い物予定でポーション類等を全て使い切ってしまっている。

大都市の近くだし、すぐにキャラバンでも通るだろうと担いで道を辿り始めたが、こんな時に限ってなかなか誰も通りすがらない。


「お嬢ちゃん悪いな、オーガが人間の娘に担がれるとはな」ゴルが言うが、特に済まながっているようでもない。

「プライドが許さないなら下ろして先いくわよ」大汗のリリアもサラっと言う。

「わっはっは、たまにはノンビリ野原に寝るのもいいが、今はこの髪の毛の香をかぐ方がいい」

出た、冒険者ギャグ。心臓さえ動いていれば後は全てユーモア。

「リリアはオーガを乗っけるの初体験よ、乗車賃が欲しいわよ」リリアも口だけは立派な冒険者。

「このまま夜まで乗っかるか。お嬢ちゃん人間の男じゃ物足りなくなるぜ」威勢は良いが、はやり痛いのだろう、ゴルも冷や汗が凄い。

「上等よ、夜の戦いならリリアが一枚上よ」よいしょっと担ぎなおすリリア。

それにしても誰も通らないと思っていたら、ようやく背後から馬蹄の音が近づいて来た。

やれやれ、一度ゴルを肩から下ろして水筒を口にする。



馬蹄の音の主はケンタウロスの男性。どうやら郵政局員の配達人だそうだ。

本人曰く

「俺は速達係りなんだぜ」と得意そう。名前はケンタらしい。

「ケンタ?それじゃ、油揚げの鶏肉屋さんと一緒の名前ね」リリアが相づち打つと

「この地方じゃケンタだが、俺の祖国ではケーエフシーだ!」っと怒り出した。

ちょっとした冗談じゃない、和もうとしだけよ、生真面目ね、リリアは思う。更に

「この人怪我人なの、ここまで担いだけど、ルーダ港まで乗っけてくれない?」とリリアが頼むと

「乗っけるとはなんだ!!俺は馬かなんかか!テメェ俺を舐めてるのか!」大激怒しだした。

いやいやいや、ここで放っていかれては大変だ。そんなつもりじゃなかったのとリリアも謝罪する。

「ほら、表現よ、あたしだって夜、男に乗るとか言うじゃない、表現表現」言い訳するリリア。まぁ、言い訳もなにも元々リリアは大した意味もなく発言している。

「そうか、ま、今回はおさめてやる」とケンタがようやく誤解をといた時だった

「俺は馬に乗るくらいなら、女に乗っていく」ゴルが突然口を出してきた、しかも余計な一言。これで大喧嘩再燃。

「この筋肉だるま」とか「この畜生」とか「ぶっとばすぞ」とか「後ろ足で蹴上げるぞ」とかヒートアップ。

ゴルも何を考えているのか… 素直に好意を受け入れれば良いのに…

「まぁまぁ、ちょっとちょっとお二人さん」と割って入るが、それが気に入らなかったのか

「俺を馬のようになだめやがって」と、収拾がつかない。これじゃ自分で担いだ方が早いかも。


何だかんだ皆落ち着いてきて、ようやくゴルをケンタに… おんぶしてもらう。

また馬のように扱いやがってと怒られないようにリリアはなるべく…

その… 乗せる感じではなく、できるだけ人体側に近いおぶさる感じにゴルを担いでもらう。

「何だそれは、お前バランス変だぞ、走りにくいだろ、もうちょっと胴の方だ」とケンタに注意された。そこはこだわらないらしい…

馬上の人… いや、担がれたゴルがリリアにお礼を言う。国民を助けるのは勇者リリアのお仕事ですよ。

「ケンタ、大変だけどよろしくね」リリアがお礼を言う。

「おう!馬だからって道草食ってられねぇからな」そう言うとケンタは逞しい歯並びを見せ笑って去って行った。



「何あれ… 結局自分で馬って認めてるじゃないねぇ」後ろ姿を見ながら呟くリリア。

水筒の水を一口飲むと、ルーダ港に向かって歩き出す。

草原にはたんぽぽの綿毛とトンボの群れがいっぱい。


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