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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【32話】 強情リリア

ストーンヘンジまであとわずか。

小さな村。

村は小さいが、1日の移動距離の休憩にちょうど良い場所にあるため、村が設置した柵の傍に商人キャラバンが柵を立ててキャンプサイトを作って日の出まで休憩している。休憩を兼ねて屋台を出すので、村人にも旅人にも安全で便利な憩いの場所。

リリアのパーティーもキャラバンに混じり、馬車で一晩を明かした。


もう日は高く上り、各キャラバンも旅行者もとっくに出発してしまった。

また、夕方移動してくるキャラバンが集合してくるまでキャンプサイトはがらがら。

わずかなパーティーしかサイトに残っていない、リリア達のパーティーも含み。


リリアのパーティーも日の出とともに出発予定だったが、リリアはミーティング中に出て行ってしまった。


ことの発端は昨日の夜、キャンプサイトがスケルトン兵士団に襲われた事。

リリアをはじめ、武器を持てる者は全員戦うのだが、人間は目で見て戦うのに対し、連中は夜でも生命の力を感知して襲ってくる。剣をはじめとする武器、弓等を手に正確に攻撃してくる。

問題は戦闘中だ。スケルトン兵士団は弓から接近戦とある程度、分業し、戦略的に襲って来るのだが、連中は生命に反応するため闇では有利。各冒険者、護衛が応戦するが、キャンプサイトに近づかれるまで、戦果が上がらない。結局リリアも含め接近戦になってしまった。

乱戦の中リリアは傷ついては治癒魔法を受け、戦う。切られて、大けがして激痛に呻いていても、治癒魔法を受けたらたちどころに立ち上がれるのだ。

“リリアには勇者の血が流れているのよ”最初は感謝と勇気を持って立ち上がれた。

三回目くらいから疑念を持ち出す。

“何のためにこんな犠牲を払うのか…”

治癒されると痛みも無くなるが、傷つく瞬間は生身の体にざっくりと刃が通るのである。肉が裂かれ、血が噴き出る。激痛だ。

四回目、ファイヤー・ボールの誤射を受けスケルトンと一緒にすっ飛ばされる。

飛ばされた拍子に、相手の剣が体に刺さる。

「ぐっ… ぅうぅ…」倒れていても助からない、止めを刺されるだけだ。涙を流し、食いしばって、剣を体から引き抜く。見ると傷つき物陰で休んでいる者もいる。羨ましい、不公平だ。

「もう、ほっといて!もう、戦わない!」言いかけたが、治癒されてしまった。

「リリア、まだウジャウジャいるのよ、立ちなさい!」ペコが言う。

“もともと誤射のせいだろ”腹が立つが、剣を持って立ち上がる。

五回目、倒れた人の救護をしていたら、肩の後ろ辺りに矢がざっくりと刺さる。

「があぁぁ… いだぁぃ…」矢が手に触れるが力の入らない場所に刺さった。

激痛だ、気を失いそう… いや、神様リリアを失神させてください。

リリアがもがいているとペコがやって来て、無理矢理ボロ雑巾を口に押し込むと“ぶちっ”と矢を引き抜いた。

「ぅぐぅ…」リリアがうめく。背中が生暖かい、出血がわかる。

「アリスはあなたに構えないのよ、これ飲んで」ペコがポーションを差し出す。

「もう、いいでしょ!あたしもうやらない!」

こんなの拷問だ! いや、拷問の方がまだましだ。発狂するような痛みを何回味合わせる気だ。人権問題だ!ヒューマニズムに欠ける事おびただしい。

「冒険者ギルドの人間でしょ!勇者なんでしょ!立ちなさいよ!」

「いやよ!簡単に言わないでよ!後ろに隠れてないで、ペコがやりなさいよ!!」

「泣き言は後でいくらでも聞いてあげるわ、今はやることやりなさい」

ペコはリリアの首をひっつかむと回復のポーションを口に押し込み、リリアを物陰から引きずりだした。

こんなの生き地獄だ、死んだ方がましだ。

“そうよ、中途半端に生き残るからいけないのよ、一思いにいったほうがまし…”

リリアは剣を取るとやけくそになってスケルトンの群れに暴れこんだ…

夜明けまでには全てかたづいた。

残念ながら生き残ったリリアに皆が

「お嬢ちゃん、鬼神のごとき働きとはお嬢ちゃんのことだねぇ」口々に称える。

命を捨てきって戦ったのだ、鬼神も裸足で逃げていく…



そんなことがあって出発前ミーティングの時、ペコがリリアの昨晩の態度を注意した時だった。

リリアがいい加減人使いが荒すぎると反論したのだ。ペコもアリスもこの業界で生きる人間、黙っているわけがない。

「いい加減にしなさいよ、皆治癒されながら戦うのよ、場合によっては蘇生されて次の一撃で快心の一撃をくらわすのよ!」とペコが反論。

「しらないわよ!あたしは自然学を勉強して調和の神を崇拝するのよ!ギルド登録書見てよ!死亡の際は蘇生を希望しないにレ点してあるわよ!」リリアが登録書を投げつけて怒鳴り返す。

「自分だけ死んで楽になろうなんて虫が良すぎる!断ったって勝手に蘇生して戦ってもらうわ!」ペコも引かない。

「どちらも死ななければ治癒出来るから決闘も安全よ」アリスが言う。

結局リリアは「あんたらは人の形をした魔物よ!魔物が可愛く思える。あたしは魔物とパーティー組むからさようなら!」と捨て台詞を吐いてパーティーを飛び出てしまった。


今、そんな状態…



リリアは近くの川まで来ると、水浴びをし、皮のブーツとグローブを修繕していた。

昨晩、お気に入りの新品寝間着の上に装備を付けたので、寝間着は戦闘で破れ、血みどろになったしまって廃品になった。人が2,3回失血死する程の血が付着しているのだ、着替えの時にみたら寒気がするような代物。ブーツもグローブも中で大量の血が固まって気持ち悪い。

水で皮をダメにしないように注意しながら掃除して、破れを糸で修繕する。

“もうどうにでもなれ、知った事か!”

気がつけば、髪にもまだまだ血がこびり付いている、洗い直さないと…



「リリア、起きなさいよ」

声をかけられてリリアは目を覚ます。どうやら川辺で寝てしまっていたようだ。

日が西に傾いている。見るとペコとアリスが立っていた。

「…… 寝てたのね…」どうやら干してある皮装備類も乾いたようだ。

「すぐ帰って来ると思えば… 心配させないでよ…」アリス。

「今日はペコちゃんのスペシャルチキンカレーなのよ」

「……………… チキンカレー… キャンプの定番」呟くとリリアは立ちあがって装備を着け始めた。

「今日は早く寝て、明日に備えるからね」ペコが言う。

「襲撃がなければいいけどね」アリス。

「……… リリアはチキンカレー食べたらまたいなくなるのよ…」


「リリアって思った以上に強情なのねぇ」二人は呆れている。

川のせせらぎ続いている。


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