捕鯨編
「厳密に言うと絶滅に瀕している『クジラ』という種類の生き物はいません。」
「嘘をつくな!。」
「絶滅が危惧されているのはシロナガスクジラやマッコウクジラなどです。
ミンククジラなどは絶滅の心配は全くありません。
それを同じ『クジラ』と分類して捕鯨禁止にするのは乱暴な論調です。
クジラは約70種類います。
捕鯨して良い種類、してはいけない種類を分ける必要があるのではないでしょうか?。」
「それは捕鯨したい者の理屈だ!。」
「理屈って・・・。
そりゃ理屈を言いますよ。
捕鯨したいんですから。
正論を言って何が悪いんですか?。
間違った事は言ってないつもりですが。
あなたがどれだけ馬鹿馬鹿しい事を言っていると思っているんですか?。
例えば・・・。
オナガドリは絶滅に瀕しています。
だから鶏は食べてはいけないんですか?。
ウシ科のニホンカモシカは準絶滅危惧種です。
だから牛は食べてはいけないんですか?。」
「極端な事を言うな!。」
「これくらい極端な事をあなたは言ってるんですよ。
あなたの言っている事と何が違うんですか?。
あなたは『シロナガスクジラが絶滅危惧種だからミンククジラも捕鯨するな』と言っているんですよね?。」
「クジラは賢いんだ!。
クジラを食べるなんてとんでもない!。」
「クジラは70種類以上いるんですよ。
賢い種類もそうでもない種類もいて当たり前じゃないですか。
犬でもボーダーコリーが賢いとか、鳥でもカラスが賢いなんて言うじゃないですか。
それに『賢いから殺すな』というのは危険思想です。
あなたは『知能が低いから死んでも良い』とは思わないはずです。」
「屁理屈を言うな!。
とにかく俺が『捕鯨反対団体』にいる間にはクジラは食べれないと思えよ!。」
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帰宅後、冷蔵庫からビールを出す。
別に鯨に思い入れはない。
だがゴネるのは金になる。
何かの商売の邪魔をして『邪魔をされたくなかったら金を出せ』と言うのは反社会的な団体だ。
悪は取り締まられる。
だから『正義』のフリをするのだ。
明確な『悪』でなければ取り締まられない。
やっている事は『ゆすりたかり』だ。
だがアホが資金援助を申し出たりする。
自分で言うのもなんだが『正義』のフリをした『悪』ほど質の悪い物はない。
ピンポーン
自宅のアパートのインターホンが鳴る。
こんな夜に誰だ?。
俺は不機嫌にドアを開けた。
そこにはトレンチコートを着た二人の男が立っていた。
「こんな時間に誰だ?。」
俺はぶっきらぼうに口を開いた。
「我々は君の同士だ。
我々も君と同じく『選民意識』は強い。
『この国は賢い者達によって治められるべきだ』『知能の低い者の生殺与奪の権利は知能の高い者が握るべき』と思っている。」
「いや、俺は・・・。」
「一応確認の為に君の知能指数を測定させてもらえないか?。
念のため君が同士かどうか確認させて欲しい。」
「い、いや・・・。」
「時間は取らせない。
我々は自分で言うのも何だが優秀だ。
我々の開発した知能指数を測定する器具を五秒額に当てさせて欲しい。
額に当てる体温計と同じ要領だ。
・・・IQ75だと!?。
残念だが、我々は知能の低い者の人権を認めない。
つまり君・・・いや貴様の扱いは実験動物以下だ。
おい、臨床試験中のこの薬を飲め。
貴様に拒否権はない。
優秀な女性は家庭に入りたがらないし、我々としてもあまり仕事を辞めて欲しくはない。
だから貴様には『子供を産む機械』になってもらう。」




