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スキル編

 十五歳になると『スキル』に目覚める者がいる。


 『スキル』は昔からあった訳ではない。


 真偽は定かではないが、言い伝えによるとサイタマの北にはグンマという人外魔境があったという。


 グンマには百九十三万人の人が暮らしていたと言われている。

 『言われている』と言うのも定かではないのだ。

 誰も好き好んで人外魔境に行く訳がない。

 犯罪者や逃亡者・・・訳あって隠れ住む必要がある者達がグンマに住んでいた。

 グンマは『見放された大地』と呼ばれ、日本の統治下にはなかった。


 そのグンマに巨大隕石が落ちた。

 正しい統計はないから推定でしかないが、約百九十万人が命を落とし、グンマは壊滅した。


 しかしグンマが壊滅したニュースは別の大きなニュースに書き消された。

 『上野の動物園でパンダの赤ちゃんが産まれる』

 誰しもグンマの壊滅など、どうでも良いのだ。


 しかし、隕石落下にはどうも裏があった。

 隕石と言われていた物は実は異星人の宇宙船だった。

 異星人は地球を『未開惑星保護』を目的とし、不干渉とした。

 しかし地球に干渉はしないつもりでも、干渉せざるを得ない場面もある。

 それが宇宙船が不時着しそうな時だ。

 異星人は国連に秘匿回線を入れた。

 「『日本』という島国付近に不時着しそうだ。」

 「海に落ちても大津波が発生する。

 出来れば指定した場所に不時着出来ないか?。」

 「わかった。

 指定された場所に不時着出来るよう、努力しよう。」異星人は答えた。

 日本政府は宇宙船の不時着場所にグンマを指定したのだ。

 墜落して不時着した宇宙船はグンマを壊滅させたが、被害はグンマの外には一切出なかった。

 つまり日本にとっては『グンマが消えただけ』という痛くも痒くもない結果に落ち着いた。


 誰もがグンマを忘れていた。


 しかし、壊滅したと思われていたグンマ県民も三万人ほどは生き残っていた。

 しかも不時着した宇宙船の乗組員だった異星人も数千人生き残っていた。


 異星人は見た目は地球人と変わりなかった。

 グンマ県民と異星人の混血は進んだ。

 異星人は地球人より文化も進んでいたし、色々な事が出来た。

 母星から迎えの宇宙船が来て、異星人達は帰って行った。


 だが、異星人と混血の地球人達は地球に残った。


 なのでグンマには多くの異星人とのハーフがいた。


 異星人とのハーフは異星人のように色々な事が出来る訳ではない。

 ただ、十五歳になるとひとつ『スキル』という物に目覚める。

 グンマは元から人外魔境だ。

 宇宙船が墜落した事でグンマは更に荒廃した。

 宇宙船の墜落の原因は宇宙船にとりついたモンスター達だ。

 もちろん墜落の火災で多くのモンスターは死んだ。

 だが生き残ったモンスターが悪かった。

 生き残った中に『リッチー』というモンスターがいる。

 『リッチー』は『ゲート』を召還する。

 『ゲート』は一説によると魔界に繋がっている。

 異星人の話では、『リッチー』を全滅させないとモンスターは『ゲート』からいくらでも溢れてきてしまう。

 繁殖力の強いモンスターがいる限り、『リッチー』を退治してもモンスターを駆逐するのは難しいが『ゲート』さえ出現しなければ核を何発も打ってグンマごと滅ぼしてしまえば良い。

 リッチーは墜落の熱に耐えただけあり、核を含むミサイルの爆発ではほとんどダメージを与えられない。

 それに核でほとんどのモンスターを殺したところで、一匹でもリッチーが生き残っていたら、ゲートから何万体ものモンスターが出てきてしまう。

 つまり現状、核でモンスターは滅ぼせないのだ。

 グンマからモンスターがいなくならない原因はそれだけではない。

 日本人と異星人は取引をした。

 異星人が母星と交信して迎えに来てもらうには、先ず交信機を直さなくてはいけなかった。

 交信機を直すにはグンマでは手に入らないレアメタルが必要だった。

 その交信機修理のための材料を異星人に提供する代わりに、グンマの県境に結界を張り、モンスターをグンマから出てこなくして、グンマから出てきたモンスター達を退治する事を求めたのだ。

 異星人達はモンスター達をグンマに押し込め、グンマの県境に結界を張ってモンスターを出てこれなくした。


 異星人が『結界を張れる』と聞いてピンときた人もいるかも知れない。


 異星人は『スキル』を使える。

 冒頭に戻る。

 異星人とハーフの日本人は十五歳になると一つだけ『スキル』に目覚める。


 しかし、ハーフが覚える『スキル』は一つだけだ。

 しかも十五歳になるまで『スキル』は覚えない。

 そして覚える『スキル』はランダムだ。

 決して選べない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 俺は『忘れられた大地』『捨てられた大地』グンマで産まれた。

 父親は日本人だ。

 母親は異星人だ。

 異星人は美的感覚が独特だ。

 日本人の美的感覚ではオヤジはブサイクだ。

 日本人の美的感覚では母親は絶世の美女だ。

 異星人の美的感覚ではオヤジはイケメンだ。

 異星人の美的感覚では母親はブサイクだ。

 そして俺は母親似だ。

 母親はオヤジにベタ惚れで、地球に残りたがった。

 しかし地球は異星人にとって保護対象、『決して触ってはいけない存在』で、全ての異星人は母星への帰還命令が出ていたのだ。

 母親は泣く泣くオヤジと俺を置いて母星へ帰還した。

 俺が13歳の時の事だった。


 異星人達は母星に帰ってしまった。

 逃げようにもグンマの県境には結界が張られていて逃げられない。

 モンスターは出没する。

 母親は帰還の命令を無視し、オヤジと俺を守り続けた。

 いよいよ命令が無視出来なくなった頃にスキルに目覚める者が出始めた。

 つまり十七年前に産まれたグンマ人と異星人のハーフ達だ。

 まだ俺はスキルに目覚めてはいなかったが、グンマ人の中にも何とかモンスターと戦える者が出て来はじめたのを見て、母親は母星に帰って行った。


 そして今日は俺の十五歳の誕生日、スキルに目覚める日だ。

 『目覚める』と言ってもスキルは選べる訳じゃない。

 異星人のようにいくつものスキルを覚える訳じゃない。

 誕生日の朝になるとスキルが使えるようになっているのだ。

 

 自分のスキルはどんな物だろうか?。


 どうせなら役立つスキルが良い。

 そして身の回りの人を守れるスキルが欲しい。


 俺が手にした『スキル』は『反転』だった。


 スキルにはレベルがある。

 最初からスキルの全てを使う事は出来ない。

 『反転スキルレベル1』で反転出来るのは『飛び道具反転』だった。

 「俺に飛び道具は効かないぜ!。」と言えると思ったのは一瞬、とんでもない役立たずスキルだった。

 確かに飛び道具でダメージを受ける事はない。

 だが、モンスターにダメージを与える手段もない。

 「モンスターに飛び道具を跳ね返せば良いじゃん。」

 そんな事出来る訳もない。

 ビリヤードをやった事があればわかる。

 撃たれた飛び道具と跳ね返る飛び道具は違う弾道を通る。

 つまり『入射角と反射角は違う』のだ。

 『ビリヤードみたいに計算で入射角と反射角は予測出来るんじゃないの?。』俺が壁みたいに平面ならある程度は予測出来るかも知れない。

 しかし人体は平面じゃない。

 それに「入射角が20°なら反射角は160°だ。」なんていうのは真空で摩擦のない世界の話だ。

 鋭角は摩擦で更に鋭角になり、鈍角は摩擦で更に鈍角になる。

 難しい事を言ったが、一瞬でどう跳ね返るか計算出来たとしてその通りに跳ね返る訳ではない。

 跳ね返りかたが正しく、思った通りに跳ね返せるのならビリヤードほどつまらない遊びはない。

 思い通りにならないからビリヤードは楽しいのだ。

 前置きは長くなったが、飛び道具がどう反射するかは予測は難しい。

 『反転スキルレベル1』では直接攻撃は反射出来ない。

 俺はモンスターの目前には出れない。

 攻撃手段も防御手段も乏しいからだ。

 だからと言って後衛に俺を置いてくれる仲間もいなかった。

 当然だ。

 俺に向かって跳んできた飛び道具は反射する。

 つまり「近くにいると、と予測不能の跳弾が跳んでくる」のだ。

 俺はグンマ県民の中でも役立たず扱いされた。

 だが俺はスキルレベルを少しずつ上げ続けた。

 飼い犬の「マコト」を連れ、今日も攻撃手段が遠距離攻撃だけのモンスターを狩る。

 「マコト」は柴犬系の雑種で賢く、無駄吠えもしない。

 「お手」や「お座り」などの芸も無難にこなすので普通の犬だと思い込んでいたが、間違えて尻尾を踏んだ時に驚いたマコトが火を吐いた。

 マコトにはモンスターの血が混じっているようだ。

 そういえばマコトは首が2つある。

 俺は長男だ。

 母親が母星に帰った後の家族を守らなきゃいけない。

 俺は三人兄弟の長男だ。

 長男の俺は京介(きょうすけ)。


 二歳下で次男の弟は寅泰(ともやす)。

 背が高く、器用だが歌は下手だ。


 四歳下で末っ子の弟は常松(つねまつ)。

 無口であまり動かない。


 俺の名前はグンマでは珍しくない。

 珍しくない・・・というか石を投げればグンマでは『京介』に当たる。


 因みにオヤジは『大介』だ。

 何故だかグンマには頭文字(イニシャル)がDの名前が多い。

 全く関係ないがグンマには海はないが『拓海』という名前も何故だか多い。


 グンマ県民にはほとんど名字はない。

 俺にも名字はない。

 だが『藤原』姓は意外に多い。


 グンマにはモンスターハンターという職業がある。

 そしてハンターギルドも存在する。


 ギルドはハンターパーティに名前を付ける。

 ギルドで一番の実績を残しているパーティは『マリオネット』という名前だ。

 『ビーブルー』、『クラクディハート』なんてパーティも有名だ。

 俺もハンターギルドに登録している。

 俺もパーティに所属している。

 だが俺が所属しているパーティには俺と飼い犬の「マコト」だけだ。

 パーティ名は『メモリー』

 ・・・カッコ悪い。

 葬儀場のような名前だ。

 「マコト」はどんどん強くなった。

 火炎放射攻撃も2つのアゴで噛む攻撃もどんどん強烈になってきた。

 それに比べて俺は役立たずだ。

 だがパーティの経験値は俺の経験値でもある。

 俺のスキルのレベルも2になった。

 俺は『反転スキルレベル2』の『直接攻撃反転』を覚えた。

 しかし『攻撃を消せる』訳ではない。

 『攻撃を跳ね返せる』というのは『攻撃を受け流せる』というのと似ている。

 つまり俺の近くにいるとモンスターの攻撃に巻き込まれるのだ。

 俺はレベルが上がっても相変わらずの疫病神だった。


 だが、俺は家族を守りたい。

 俺と「マコト」のパーティ『メモリー』は戦闘を繰り返した。

 俺は相変わらずの役立たずだったが、マコトはどんどん強くなった。


 『反転スキルレベル3』で『魔術攻撃反転』を覚えた。

 『反転スキルレベル4』で『天候反転』を覚えた。

 『天候反転』は『晴れ』を『雨』に、逆に『雨』を『晴れ』に出来る。

 『反転スキルレベル5』で『昼夜反転』を覚えた。


 ついに『反転スキルレベル10』を覚えた。

 レベル10で覚えたのは『己自身反転』だった。

 『己自身』の反転?。

 意味がわからない。

 試しにスキルを使って見るか。

 ・・・何も起きない。


 何なんだ?


 オヤジが俺の部屋に来る。

 「ジュリエット帰ってきたのか!?。」

 ジュリエットは母親の名前だ。

 正確には『わがままジュリエット』

 狂っている、人間の名前じゃない。

 『わがままジュリエット』はオヤジがつけた母親の名前らしい。

 異星人は互いを番号で呼び合っていて名前はない。

 オヤジに名前をもらった母親は大喜びだったらしい。

 

 それはともかく、何でオヤジは俺と母親を見間違えたんだ?。

 

 

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