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パンデミック編

~病院にて~

 「昨日、アイドルの握手会に参加した・・・という事ですね」診察をしている医師が言う。

 「はい、伝染したのはその時で間違いないと思います。

 ぼくはもう三年間引きこもっていて、昨日の握手会の参加は三年ぶりの外出なんです。

 だから握手会以外で感染した可能性はないはずなんです!。」ぼくは熱弁を振るう。

 「いや、わかりませんよ。

 昨日、公共交通機関は使いませんでしたか?。

 どこかで食事はしませんでしたか?。

 公衆トイレには行きませんでしたか?。

 コンビニには寄りませんでしたか?。

 可能性はいくらでも考えられます。

 しかも感染する病気だというのもあなたの思い込みだと私は思っています。

 本当に感染すると信じているなら、私は防護服なしであなたの診察はしないでしょう。」医師はキッパリと言う。

 「何でそんな風に思うんですか?」とぼく。

 「ライブハウスという密室にファンが寿司詰めだったんですよね?。

 そんな状況であなただけが感染する、というのはおかしいと思いませんか?。

 そんな状況でパンデミックがおこったら、政府が何らかの通達を医療機関に出しているとは思いませんか?。」医師が正論を言う。

 「症状が出るまで個人差があるのかも知れません。

 ぼくは次の日には症状が出た、遅い人は一週間以上後に症状が出るのかも知れない。

 だからまだ通達が出てないのかも知れませんよ。」と僕。


 看護師の女の子が診察室に駆け込んで来る。

 「先生!テレビを見て下さい!。

 昨日のアイドルの握手会について速報のニュースがやってます!」


 医師はパソコンを操作してテレビをつけた。

 診察室にテレビはない。

 だが、診察に使っているパソコンがワンセグチューナー付きで、テレビを出力出来る、との事だ。


 警察署の前で報道陣がカメラを構えている。

 一人の手錠をかけられた男が刑事に引きずられるように警察署の中に入って行く。

 報道陣が一斉にフラッシュを炊く。

 テレビの画面にテロップが出る。

 『カメラのフラッシュの点滅があります。

 体調の変化にお気をつけ下さい。』

 

 握手会にウィルスを撒いた容疑者の動機がキャスターを通じて語られる。

 アイドルのプロデューサーに恨みがあり、ウィルスを撒いた。

 撒いたウィルスは全く女の子には害がない、との事だった。

 ウィルスがどんな悪さをするかもハッキリはわかっていない。

 ウィルスを作った女は『命にはかかわらない』と言っていた。

 容疑者は昔、『サガ』というゲームメーカー兼ゲームハードメーカーの信者だった。

 『サガ』はゲームハード『ドリームカスト』、略称『ドリカス』を発表した。

 『ドリカス』はライバルだった『プレイスタリオン2』より遥かにスペックが低かった。

 容疑者や『サガ人』と言う名の『サガ信者』達は「何でこんなスペックでハードを作ろうと思ったんだろう?。

 しょうがない、『サガ』の次のハードに期待しよう」と思ったという。

 その時に『サガ』内で明らかな方針転換があったらしい。

 それまで『サガは食わねど高楊枝』と言われるほど、『サガ』は負けを認めなかった。

 天神堂のハード『サミコン』にシェアで100倍以上差をつけられて「どこかのゲームじゃもうつまらない」とボコボコに殴られても表向きはケロリとしているパンチドランカーが『サガ』だった。

 突然『サガ』が負けを認めだした。

 『サガは倒れたままなのか?』

 『立ち上がれ!サガ!』

 サガ人は動揺した。

 負けても負けを認めないのが『サガ』だし、サガの良いところだと思われていた。

 そんなサガの反骨精神に心酔していた者も少なくない。

 サガ突然の方針転換は『ドリカス』にプロデューサーがついたことが原因だった。

 そのプロデューサーというのが今回の握手会をしたアイドルグループのプロデューサーだ。

 「簡単に負けを認めやがって、この後どうするつもりだ!?」とサガ人は憤った。

 『ドリカス』と『プレスタ2』のハードのシェア争いは『プレスタ2』の圧勝だった。

 「もう終わった事はしょうがない。

 『ドリカス2』で勝負だ」サガ人は怒りをおさめた。


 プロデューサーは遁走した。

 『ドリカス2』は出ず、サガはハード事業から撤退した。

 

 サガは身売りした。

 『サガエンタープライゼス』は消滅した。


 引き続きサガ人をやっている者はほとんどいない。


 サガ人のほとんどはどこかへ消えた。


 「ハードの消滅はしょうがない。

 サガはハードの進化についていけなかったんだ。

 早かれ遅かれこの結末は避けられなかった。

 プロデューサーを恨むのは筋違いだ。

 もう忘れよう。

 プロデューサーがゲーム業界に絡んできたから起こった悲しい事件だと思おう。

 二度とプロデューサーがゲーム業界に関わらないんであれば、我々も怨み言を言うのはよそう。」


 その後、元『ドリカス』プロデューサーはアイドルグループをプロデュースし、そのゲームを出す。


 容疑者は怒り狂った。

 「テメー、いい加減にしろよ!この首なしメガネ豚が!!!!!!!」


 「これが今回、容疑者が犯行に及んだ動機です。

 因みにウィルスは二次感染しません。

 培養器の外ではウィルスは12時間で死滅します。

 感染者の身体の中でも、既にウィルスは死滅しているでしょう。

 因みにプロデューサーはこの時、握手会会場にはおらず難を逃れています。

 繰り返します・・・。」


~再び病院にて~

 「・・・だそうです。」医師が言う。

 「『だそうです』って言われても、僕は関係ないのに!。」僕は取り乱しながら言う。

 「御愁傷様です。

 ですが、無差別テロでの被害で『無関係』は当たり前です。」医師は無慈悲に言う。

 「先生、ぼくはどうすれば良いですか!?」ぼくは医師にすがり付く。

 「どうしたいのかによりますね。

 容疑者の無念を晴らしたいなら、アイドルグループに入ってプロデューサーに近付くのはどうですか?。」

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