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こっくりさん編

「こっくりさん、こっくりさんおいでください」

 十円玉が動く。

 「おお!こっくりさんですか?」

 ”いいえ”

 「こっくりさんじゃないんですか?」

 ”はい”

 「ではあなたは何者か教えて貰えますか?」

 書かれている『あいうえお表』の上を僕と友人が指を乗せている10円玉が動く。

 ”か”

 「か」

 ”み”

 「み」

 ”かみ”つまり『神』らしい。

 待て、まだ慌てるべきじゃない。

 こっくりさんをする前に予備知識をネットで頭に詰め込んでいる。

 『こっくりさんは嘘つきである。』

 つまり、本当に神様じゃなくても『俺は神様だ』と言う可能性はあるという情報は織り込み済だ

 そしてもう一つ

 『降霊の儀式をしていると別の”何か”を呼んでしまう事がある。』

 つまり僕たちが今回呼んだのは『こっくりさん』じゃない、という可能性だ。

 『エクソシスト』という映画は少女が天使を呼ぶ学校で流行っている可愛らしい儀式で悪霊を呼んでしまうところから物語は始まる。

 こっくりさんでも必ずしも『こっくりさん』が来るとは限らない。

 運が悪いととんでもない悪魔や悪霊を呼ぶ可能性がある。

 しかし『邪神降臨』は予想外だ。

 嘘かも知れない。

 でも本当かも知れない。

 本当だった場合、最低でも埼玉くらいは消し飛ぶかも知れない。

 埼玉が消し飛ぶくらい、喜ぶ人はいても悲しむ人はいないだろう。

 でももしかしたら東京様に被害があるかもしれない。

 被害があったのが町田なら大した話題にもならないだろう。

 『町田は本当に東京か?神奈川じゃないのか?』という論争もある。

 それはともかく『大惨事』になる可能性もあるのだ。

 とにかくこの『自称神』にはお帰り願おう。

 聞きたい事もあったが、未曽有の大惨事が起こる可能性を考えるとそれどころじゃない。

 僕は下手に出ながら”自称神”に言った。

 「どなたか存じませんが今日はとりあえず帰っていただけませんか?」

 ”いいえ”

 はい出た、素直に帰ってくれないパターン。

 つーか大体素直に帰ってくれないよね。

 小学校の時も『どうしたら帰ってくれますか?』って言って野次馬だったヤツを裸で躍らせたんだった。

 因みにその時は僕が十円玉を動かしてた。

 アイツ、ムカついたんだよ。

 『こっくりさんとか怖い』とか言って参加しないクセに『〇〇ちゃんは僕の事好きですか?』とか外野からこっくりさんに質問しまくりやがった。

 それはともかく今回僕は10円玉を動かしていない。

 僕と一緒にこっくりさんをやっている男はオカルト好きでこっくりさんを信じ切っている。

 そして頭に『バカ』がつくほどの正直者だ。

 人を騙すという事を出来ない男だ。

 だからこそ『コイツは信用出来る』とこっくりさんに応じたのだ。

 「僕が動かさなせれば10円玉を動かすヤツはいない。

 それでも本当に10円玉が動けば『この世ならざる者』が動かしているんだ。」僕はそう思った。

 10円玉は動いた。

 そして『ソイツ』は自分を『神』だと名乗った。

 こいつはヤバい。

 お帰り頂こう。←イマココ


 「何かしたい事があるのですか?」

 ”いいえ”

 「何か見たい物があるんですか?」

 ”はい”

 何が見たいのか教えてくれますか?」

 10円玉が、あいうえお表の上を動きまわる。


 ”こ” ”い”

 「こい・・・鯉、つまりカープですか?」

 ”いいえ”

 「いいえ」を指し示すのが異様に早かった。

 「なんでやねん!」と速攻でツッコミを入れているようだった。

 「『恋』、『LOVE』ですか?」僕と一緒にこっくりさんをやっているヤツが言った。

 何か言い方が気持ち悪い上にイラっとする。

 ”はい”


 丁度良い。元々コイツの恋愛の行方をこっくりさんに聞こうとしていたんだ。

 コイツの恋愛を見せてあわ良くば『自称神』に力になってもらえば当初の目的も達成された上に、お帰りも願える。


 「コイツの恋模様で良ければどうぞ好きなだけ見て下さい。

 ・・・で、手を貸してあげれば喜ぶと思います。」


 僕のこっくりさんの相手も満更じゃない顔だ。


 パーフェクトコミュニケーション・・・と思いきや、『自称神』は中々返事をくれない。


 「何で返事をくれないんですか?。

 コイツの『恋』じゃダメなんですか?。」

 ”いいえ”

 意味わからん。

 筆談でもまどろっこしいのに、このやりとりは本当にストレスがたまる。

 僕も覚悟を決めた。

 「どういう問題があるのか、この『あいうえお表』で文章にして下さい。

 どれだけ時間がかかってもかまいません。

 お互いが納得するまで続けましょう。」

 ”はい”

 『はい』を指し示した後、10円玉の動きには迷いが消えた・・・ような気がする。

 ”か””れ””で””い””い””と””い””う””か””み””も””い””る”

 「かれでいいというかみもいる」

 「彼で良いと言う神もいる」


 「もしかして『神様』って一人じゃないんですか!?」

 ”はい”

 「二人ですか?」

 ”いいえ”

 「三人ですか?」

 ”いいえ”

 「もっと多いですか?」

 ”はい”


 詰んだ。

 人数が多くて、全員を満足させるなんてできっこない。

 現に今だって「コイツの恋だけじゃ満足出来ない」って意見がまとまってないんだから。

 「おい『いっせいのせ』で10円玉から指放せよ。こっくりさんの『あいうえお表』は学校の焼却炉に投げ込んで帰ろう。」

 「わ、わかった。でも呪われないかな?」

 「コイツらの言う事が本当で『神だ』って言うなら呪わないだろう。

 悪霊や悪魔じゃないんだ。

 神は呪わないと思うぜ。

 じゃあいくよ。

 『いっせいのせ』」


 二人は一斉に10円玉から指を放した。

 一瞬指先に電撃が走ったような気がした。


 「僕達はこっくりさんの『あいうえお表』をまだ火の消えていない焼却炉に放り込んだ。

 一瞬、焼却炉の火は大きく燃え上がった・・・気がした。


 「なんか迷惑かけちまったな。

 飯でも食ってかえろうか?。

 おごるぜ。」コイツは僕をこっくりさんに誘った事を申し訳なく思っているらしい。


 「そんな気分じゃねーや。

 今日はやたら気疲れしたよ。

 帰って寝たい。」僕は誘いを断った。


 僕は学校に隣接している下宿先に帰るとそのままベッドに飛び込み泥のように寝た。




 物音が聞こえる。

 物音というか騒音だ。

 騒音というほど一つ一つの音は大きくないが、如何せん足音や荷物を置く音、掃除をする音が多すぎる。

 一つ一つの音を足したら大騒音だ。

 ちょっと待て。

 何で僕の部屋でこんなに沢山の生活音が聞こえるのか?。

 この部屋に住んでるのは僕一人のはずだけど。

 僕はまだ寝ぼけているのか?。


 僕はだんだん覚醒していく。

 視界が開けいつもの六畳一間が目に入ってくる。

 少し寝すぎてしまったようだ。

 寝る前はまだ日が高かったが、薄暗くもう夕飯時のようだ。

 もう起きて、夕飯の準備をしないと・・・。

 疲れていようが、病気だろうが、自分で食事の準備をしないと誰も準備をしてくれない。

 具合が悪くても、おかゆを作るのも自分なのだ。

 

 「さてと起きるか。」

 「もう少しゆっくりしとけば良いのに。」

 「そうも言ってられないさ・・・ってアンタ誰やねーん!」僕は思わず関西弁になった。

 「誰って神ですよ。

 帰ろうにも、ちゃんと手続きしないで、帰る準備する前に突然梯子を外されて、帰ろうにも帰れない憐れな絶賛遭難中の神ですが・・・。」

 僕は突然『こっくりさん』をやめた事を思い出した。

 そのせいで彼女は神界に帰れなくなったのか。

 にわかには信じられない話だが、彼女の語る言葉には妙な説得力があり、嘘をついているようには感じない。

 「ごめんね、僕らが突然『こっくりさん』やめちゃったせいで。」僕は申し訳なくなり頭を下げた。

 「別に良いんですよ。

 どうせあの場で全員を満足させられなかったでしょうし、早かれ遅かれ中断するしかなかったんです。

 とは言え、今、遭難中にSOS信号を出して神界の救難を待っている状態です。

 神界の救助が来るまでこの部屋に置いてもらえませんか?。」と女神。

 「わかりました。救助がくるまで僕の部屋に滞在して下さい。」僕はかしこまって言った。

 よかった怒ってないみたいだ。


 「じゃあこの部屋でお世話になる女神たちを紹介します。」

 「私は『ラブコメの女神』」

 「私は『ツンデレの女神』」

 「私は『ラッキースケベの女神』」

 「私は『BLの女神』」

 「そして私は『TSFの女神』よろしくね!」


 「『よろしくね!』じゃない!。

 まず人数が多すぎるよ!。

 この六畳一間に5人女神が寝泊まり出来るかな?。

 それに男の部屋に女の子が何人も寝泊まりしちゃダメ!。

 何か間違いがあってからじゃ遅いんだよ?。」僕は心を鬼にして言った。


 「私達は神、秩序を重んじます、

 そんな事は充分考えています。

 だから男の神と女神を同じ部屋にはしていません。

 隣の部屋も借りていますが、その部屋には女は一切入らないようにしています。

 逆にあなたの部屋に一切男は入りませんし、入れません。」


 「わかったよ。じゃあ君ら神々が『これからどうするか』決めようか?。

 で、もう一人呼んでも良い?。

 今日僕と一緒にこっくりさんやってたヤツいたじゃん?。

 アイツだよ。

 あいつなら奇想天外なオカルト話信じるだろうし、何より口が堅い。」と僕。

 「わかりました、が、ここに彼を呼ぶのは無理です。ここには男を寄せ付けない結界が張り巡らされています。

 何人たりとも男はこの部屋に入れません。」

 「そうは言っても神々の許可があれば男でもこの部屋は入れるんでしょ?。

 だって僕は入れてるし。」

 「だから、あなたは私『TSFの女神』の力なしでこの部屋に入る事が出来ませんでした。

 しかし『BLの女神』が隣の男しか入れない部屋に君の友達を入れて様子を見たいと言っています。

 『BLの神』は君の友達の恋愛模様が見たいと言っていた神です。」

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