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麻薬編

「随分と懐かしい人が来たもんだ。


芸能事務所の社長様が闇医者ごときに何の用事かな?」


「そう嫌味を言うなよ。


今は『コンプライアンス』が五月蝿くてな・・・。


芸能事務所と裏社会が繋がってたら絶好のワイドショーネタなんだよ。


アンタとの関係を俺が切りたがった訳じゃない。


アンタには『覚醒剤(シャブ)抜き』『入れ墨消し』なんかで散々世話になってるんだ。


アンタとの関係はむしろ大事にしたかった。


でも『芸能事務所社長と闇医者の関係』なんて、ワイドショーやゴシップ雑誌に餌をやる訳にいかなかったんだ」


「・・・で、何の用事だ?


一旦、関係を解消しようとしたアンタが再び俺の前に現れたんだ。


俺に頼むしかないトラブルがあったんだろう?」


「引き受けてくれるのか!?」


「話は聞いてやる。


忘れるな。


アンタは俺を裏切って一度は切り捨てたんだ。


しかし、いくら裏切られたとしても俺は『守秘義務』だけは厳守する。


俺は正規の医師じゃないし法律に縛られる存在じゃない。


でも『闇医者』ってのは『裏社会』『反社会的勢力』との関係が深い。


口が軽いんじゃ命がどれだけあっても足りない。


アンタの話が余所に漏れる心配はない。


たとえアンタが裏切り者だとしても、だ」


「『裏切り』『裏切り』しつこく言うなよ・・・。


確かにアンタに頼むしかないトラブルを抱えちまった。


トラブルの原因て言うのはこの小僧なんだがな」


「ほう、有名人じゃないか。


テレビで見ない日はない。


しかし酷いジャンキーみたいだな」


「わかるか?」


「ジャンキーの体臭っていうのは独特の臭さがある。


しかも俺は闇医者だ。


表情を見ればジャンキーかジャンキーじゃないかぐらいはわかるよ。


・・・って事はシャブ抜きか?」


「いやコイツはシャブを一時的に抜いたところで完全に警察にマークされている。


シャブの使用を再開したところで警察にすぐに捕まっちまう。


コイツの身体の中からシャブを完全に消したいんだ。


コイツが捕まるとコイツが出演してたドラマ、CM、映画、レギュラーを務めていた番組等々から賠償金少なくとも五百億円は請求されるんだよ」


「今までコイツに散々稼がせてもらったんじゃないのか?」


「それはそうなんだが・・・。


コイツ以外にも事務所にタレントは大勢いて『先行投資』としてソイツらに大金をかけてるんだ。


その金っていうのはソイツらが売れたら何倍にもなって戻ってくる。


今その金っていうのはコイツを始めとした売れてる連中が稼いだ金だ。


今のところ金なんてものは右から左へ消えて行く物であって、事務所には現金はほとんどない。


今の状態で事務所が『賠償金、五百億円払え』なんて言われたら破産するしかない。


要は賠償金を払わないようにすれば良いんだ。


コイツは既にほとんど廃人だ。


もうコイツに期待はしていない。


とにかくコイツから覚醒剤(シャブ)を完全に抜いてくれ。


結果、コイツが死んでも構わない。


というか恩を仇で返しやがって、許される事なら殺してやりたい」


「本人を前に凄い事言うな」


「もうコイツは半分こちらの言う事が理解出来ないぞ。


何だったら試してみるか?」


「・・・じゃあ質問してみるな。


『お前の職業は何だ?』」


「・・・ハイパーメディアプロデューサー」


「何だ?


コイツは何を言っているんだ?」


「だから言っただろう?


コイツはシャブ中の末期だ。


何だったらコイツの頭をおもいっきり叩いてくれ。


正気に戻らなければコイツは怒る事もない。


もう今となっては正気の時間はほとんどない。


ラリってる時にボーっとしてるのは当たり前なんだけどな。


こうやってシラフの時でもボーっとしてる。


もうこうなりゃ人事不省だな」


「コイツを仕事に復帰させるんじゃなくて『シャブ中の症状を消して欲しい』って事だな」


「そう言う事だ。


シャブ中で逮捕されれば事務所は莫大な賠償金を支払わなくちゃならない。


でもコイツが病気降板すれば事務所は賠償金を支払わなくて済む」


「話はわかった。


でもそんな都合の良い話はない。


シャブは抜ける。


でもそれは『薬物検査で覚醒剤反応が出なくする事が出来る』というだけで薬物の禁断症状が抜ける訳ではない。


何とか禁断症状を克服しても、その先何年もフラッシュバックに悩まされる」


「『コイツがシャブ中を克服した後』の事はどうでも良い。


どこへなりと行ってくれて構わないし、法に触れないなら殺したって全然構わない」


「なるほど『逮捕されなければコイツがどうなっても構わない』という訳だな」


「そう言う事だ」


「コイツも可哀想だな。


俺と一緒で切り捨てられた・・・って訳だ」


「嫌味を言うなよ・・・。


それで何とかする方法はあるのか?」


「あると言うか、無いと言うか。


今後コイツが今まで通り芸能界で活躍する方法なら『無い』と答えるが・・・。


コイツがもう二度と芸能界に復帰出来ないで警察に逮捕されない方法なら『ある』」


「おぉ!


それでかまわん!


・・・それともしその施術を俺がコイツに受けさせた事が警察にバレた時、俺はコイツの麻薬使用を隠そうとした罪以外に何かに問われるのか?」


「何を今更・・・。


闇医者と関わってる時点でもう真っ黒で捕まったら誤魔化しようがないだろうに。


大丈夫だ。


今から行おうとしている施術を裁く法律はない。


あえて言えば『コイツの意思とは別に施術を行った』というのが罪にあたる可能性もあるが、コイツがこんな人事不省の状態じゃコイツの意思は既に確認出来ない。


もし施術が表沙汰になった時『コイツが強く希望した』と主張をゴリ推しすれば良い」


「わかった。


で『復帰出来ない』と言う理由を聞かせてもらおうか?


いや復帰させる気もないし咎める気もないんだが、一応施術内容を聞いておこうと思ってな」


「よく知らないんだ」


「おいおい、今から行う施術の内容を『よく知らない』はないだろう?」


「俺は闇医者だ。


臨床検査が不十分な薬も使うし、動物実験があまり行われていない施術も行う。


闇医者を頼るヤツなんて言うのは、そういった不確定要素が高い施術を行って欲しいヤツや、法に触れているヤツだけだ」


「俺はその両方に当てはまる、という訳か。


何で『よく知らない』のか聞かせてもらって良いか?」


「今更所属タレントの心配か?」


「な訳ないだろう?


医療行為自体が違法なら『違法行動に加担した』事になる。


だから『どんな違法行為が行われるのか?』『足がつく可能性があるのか?』確認しようとしただけだよ。


知らなきゃ対処のしようがないからな」


「なるほど。


今回の施術は医療行為じゃない。


南米の地層から『蒼く光る砂』が見つかった。


これには身体の浄化作用があるらしい。


毒蛇、毒蟲に噛まれてもアマゾンの奥地に住む部族はこれで対処出来ると言う。


毒も伝染病も消える『蒼く光る砂』を飲めば、薬物に汚された血液も綺麗になるんじゃないか?


・・・これは推測でしかないが。


しかしこれが上手くいけば一躍ドル箱だぜ。


シャブ抜きなんてする意味がなくなる」


「なるほど。


前例がない訳だな。


だから『よく知らない』訳だ。


今回の施術が実験のかわりなら、その分安くしてくれよ?」


「値引きはしない主義だが。


もし施術が失敗してコイツが死んだ時、死体の処理として深海魚の餌にする費用は無料にしといてやるよ」


「しょうがない。


それで手を打とう」


「と言っても『砂を水に溶かして飲む』だけだからな。


『効果があるか、ないか』だけで死にはしないと思うけどな」


「そうか。


ほら、飲め」







「禁断症状は出てないみたいだな。


薬物検査反応もない。


実験は成功だ!」


「実験かよ・・・。


まあ上手くいったんだから良いけどよ。


おい、聞こえるか?」


「はい、聞こえます」


「これは驚きだ!


コイツが正気に戻ったのは実に3日ぶりだ。


これでコイツにはもう一稼ぎしてもらえる。


世話かけやがって!


以前と変わりないか?


ちょっとこっち向いてみろ・・・って!」


「なるほど。


『蒼く光る砂』を飲む部族はアマゾネスという話だったが、『蒼く光る砂』を飲むとアマゾネスになるんだな。


残念だったな。


コイツが以前のようにドル箱になれる可能性はもうない」


「いや、コイツはとんだ金の成る木だぜ?」


「そうは言っても、今まで男だったんだから喋れないだろう?」


「高慢な態度で、何か質問されたら『別に?』と言えば良いだろう」

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