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公共事業編

「高速道路が出来れば、都心に30分でつきますよ」


「都合の良い事ばっかり言いおって・・・。


高速道路が出来たら静かなここらへんも騒音や振動に悩まされる事になるんじゃろ?


しかも排気ガスや汚染水も流れ込んで来る。


『美味しい空気と湧き水の街』という唯一の売り文句も看板を下ろさなきゃならん。


違うか?」


(意外に手強いな、何か弱点はないだろうか?あっそうだ!)


「交通が便利になればお孫さんがもっと遊びに来ますよ!」


「うっ!」


(手応えアリ!一気に畳み掛けるぞ!)


「今までは夏休みのような長期休暇がないとお孫さんは遊びに来なかったんじゃないですか?


高速道路が出来れば『ちょっと出掛けたついでにおじいちゃんの家に寄った』なんて事があるんですよ!


年に二回くらいしか会えなかった可愛いお孫さんと年に十回以上会えるようになるんですよ!」


「いや・・・しかし・・・」


(もう一押しだ!)


「(ボソッ)おじいちゃ~ん、会いに来たよ~」


「わ、わかった!


土地は売ろう!」




「もう!


お父さん!


お兄・・・お姉ちゃんだって忙しいんだよ?


そんなしょっちゅう遊びに来る訳ないじゃない!


お姉ちゃんは旦那さんにベタ惚れなんだから、旦那さんが来るって言わないとここには来ないよ!」


「うるさい!


お前がフラフラしていないで家庭を築いていたらアイツと(たっくん)を心待ちにしなくて済むんじゃ!」


「私がフラフラしてたからこそお兄・・・お姉ちゃんは生け贄になったんだよ?


私がフラフラしてなきゃ、たっくんは産まれてないんだけど良いの?」


「う、うるさい!


口の上手さだけ母さんに似おってからに!」


「それにお姉ちゃんだって幸せそうだから良いじゃない。


『男なんて絶対好きにならない』って言ってたクセに見てた人の話じゃ『結婚してください』ってプロポーズに食い気味に『はい、喜んで』って言ってたらしいよ。


お姉ちゃんと旦那さんの初デートの時服貸してあげたのも、化粧教えてあげたのも、コーディネートしたのも私だよ?


私がいなかったら初デートは上手くいってなかったかも知れないし、たっくんだって産まれてなかったかも知れないんだよ?


だいたい素直じゃなかっただけなのよね。


お姉ちゃん、『全然好きじゃない』って言っておきながら一日スマホ睨んで連絡待ってたんだから。


・・・と、そんな事はどうでも良いの。


あの土地を売るって事がどういう事だかわかってるの?」


「『九尾狐里』が封印されてる土地を売ろうって訳じゃないんだからいいじゃろ?」


「良い訳ないでしょ!


この地の竜脈を寸断するように間に高速道路が出来たら、この地の竜脈を通る気の流れは枯れ果てるしかないじゃない!


『九尾狐里』だけじゃなく気を餌にしている妖魔は空腹で暴れ出すわよ!


それだけじゃなく妖魔が暴れ出したとしても竜脈から気を集めれないなら我々『退魔の巫女』は闘えないじゃない!」


「そうは言っても(たっくん)が来るんじゃぞ?」


「本当にジジバカね!


もう本当にどうなっても知らないから!」


「じゃあこの売買契約書にサインして下さい」






~3ヶ月後~


「ようやく基礎工事が終わった。


本当にここまで考えられないようなトラブルが頻発したなぁ。


大雨、崖崩れ、落雷・・・まるで誰かがこの工事に対して怒って邪魔しているみたいだった。


でもここからは早いぞ」


この土地の地上げをしていた土建屋の男が小さな(ほこら)の前を車で通り過ぎようとした時だった。


祠の横にある大木に落雷があり、大木は倒れて車の前の道を通行止めした。


男は驚いて車の外に出た。


車の外に出るとそこは黒い霧が渦巻いていた。





「お前か!


お前が竜脈を塞き止めたのか!


ワシは今機嫌が悪い。


お前は触れてはならん物に触れた」



男は黒い霧に飲み込まれていった。








祠の前には男が載っていた車が残されていて、道路脇には男の着ていた服に包まれた女の乳幼児が残されていた。


その後、男を見た者はいない。

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