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103号室 その2

扉をバタン、と閉める。

頭が真っ白だ。

まさか、家賃を滞納したことで、このアパートが取り潰されることになるかも知れないなんて……

とにかく、どこかから借金してでも、三万五千円を捻出しなくちゃいけない。

つか、昨日まで金はあったんだ。

俺は頭を掻きむしりながら、吠えた。


「こんな未来になるなんて分かってたら、叙々〇で奢ったりしてねーよ!」


 ハッ、とした。

未来……

俺は、テーブルの上に置かれている、ハリーポーターの本に目をやった。

山猫さんから借りた、謎の本。

発行日が2001年になっていて、まるで、未来の本屋から取り寄せたかのような本だ。

元々は外国の文学らしく、翻訳を介しているため、文章にも癖がある。

だが、面白い。

この本の内容をパクれば、出版社の目に留まるかも知れない。


「っし、やってみっか」


 いてもたってもいられず、ノートパソコンの前にあぐらをかく。

ワードを起動して、執筆にとりかかろうとした時、すぐに気づいた。


「……一日じゃ、ぜってー無理だよな」


 いくらパクリっつったって、文章を打つだけでも、一日じゃきつい。

ダメだ!

俺は、本を傍らに持ち、サンダルを履いてコンビニへとダッシュした。








 プリンターに500円を突っ込み、俺はハリーポーターの内容を全てコピーする手に出た。

この仕上がった装飾の本を持ち込むことはできないだろう。

コピーだけなら、午前中あれば、どうにかなるはずだ。

後は、この本を見てくれる出版社を探す。

普通、デビューまでは新人賞を得てから、みたいな流れが一般的だが、今回そんな悠長なことは言ってられない。

この本で直接契約までこぎつけて、契約金三万五千円を提示し、手に入れる。

一時間ほど経過して、プリンターの紙を補充するサインが出た。


「ちっ」


「お客様」


 声をかけられ、振り向くと、店員と思しき男が立っていた。

名札に、店長、と書いてある。


「申訳ございませんが、プリンターを独占されるのは、他のお客様のご迷惑になりますので……」


「もうちょっとだからさ。 紙、補充してくんないっすか?」


「……」


 クソッ。

店長は俺の目を見たまま動かない。

紙、補充する気もねーらしい。

時間が惜しい。

俺は、コピーした用紙と、本を持ってその店を後にした。


「はあっ、はあっ…… 駅前まで行きゃあ、ファミマがある」


 俺は駆け足で駅前のファミマに向かった。

ところが、今度はいかにも機械音痴っぽいおばあちゃんが、コピー機を独占していた。


「えーと、お金はどこに入れるのかしら」


「そこの脇のやつっすよ」


 じれったくなり、俺は金を入れる細長い機械を指さした。


「あー、これね。 ありがとねぇ」


 礼はいいから、さっさとコピーしろって。

だが、ばあさんは、どのボタンを押したらいいんだい、とか、コピーしたいページをどうしたらいいのか、とか、めちゃもたつく。

しかも、手には分厚い料理本みたいなのを持っている。

俺は、恐る恐る聞いた。


「何ページコピーする気っすか?」


「これ、図書館から借りてきて、返さないといけないのよ。 だから、全部コピーしようと思って」


 ふざけんなっ!

俺は、コンビニから抜け出した。

他のコンビニを探すか。

いや、それより、図書館に行くのがいいかも知れない。

図書館ならコピー機があるし、何よりネットが使えたハズだ。

そこで、出版社を検索して、コピーしてる間に、電話をかけまくって持ち込みオッケーな所を探せばいい。



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