カウント7
----- Rider Side -----------------
「はーっ。結局やるんですか?」
電話越しに伝えられた指令に俺は溜息交じりに言葉を返した。着信が来たのは自宅のプレイルームで愛犬の顎を膝に乗せて映画鑑賞をしている最中だった。
これからクライマックスだったのに興が冷めさせてくれる。その電話相手も、その内容も酷い者だった。
『――――』
「…まぁ私達の存在理由的には…でもあちら側も今大事な所じゃないですか。それなのに無闇に茶々いれるってのはどうかと…」
やんわりと反感を口にして入るが、指令が出た以上は拒否することは出来ない。それでも口に出しておかないとやっていけないものがある。
『――――』
「!?」
俺達が駆り出される理由の一端を耳にして背筋が凍る。タイミングが悪い。
「タイミングが悪い」
思ったことがつい口から溢れてしまう。それほど本当にタイミングが悪い。
もっと早ければなどとおもわずにはいられない。半年、いやせめて一月前なら俺もこんな気持ちにはならなかっただろう。
「失礼しました。えぇ、わかりました。拝命いたします。部下の方には私から。はい、それでは」
用件だけの電話は一分とかからず通話を終えた。指令の詳細は後ほど送られるらしい。
「はぁ…」
溜息をついて目の前のテーブルに携帯を放り投げる。非常に憂鬱だ。
俺の心境を察したのか、はたまた位置が気になったのか、愛犬が顔をする寄せてくる。
馬鹿な飼い主が故に前者と思い込んで愛犬の頭を撫でてやる。
プレイヤーのリモコンを手に取り一時停止した映画を再開しようかと思ったが、その手は再び先程投げた携帯電話へと向かった。
いつも通りに操作していつか撮った写真を見る。スライド操作で二枚の写真を見比べてみた。
交互に映し出される二組の男女。奇しくも同じ構図なことに溜息がまたでる。
奇しくも、ではない二組とも写真を撮る際俺がこうするように指示したのだ。
俺はその時、その二組の男女に同じ願いを抱いていたはずだ。
それを壊してしまいそうな事に腹の奥が軋む。
それでも、指示されたら動かなければいけないのだろう。
俺は空いた手でプレイヤーのリモコンを取ると電源ボタンを押して止めてしまう。
この映画のエンディングはまた今度観よう。それよりも気にある結末がある。
愛犬の首元を軽く叩く。意図を察した愛犬は上体を起こし、ソファーから降りる。 俺も立ち上がり手に持った携帯電話である人物に電話をかける。幸いと通話は間もなくつながった。
『はい、もしもし?』
「キャスターか、俺だ」
『キャスっ!?……はぁ、仕事ですかライダー』
俺の言い回しで察した部下は先程の俺と似た反応をしていた。思わず笑いそうになるが、気を引き締めて言葉を続ける。
「その通りだ、【特殊部隊】所属【対魔王戦小隊】に、色慾の魔王サラ・ラスト・リリステレス討伐の指令が下った」
二組の写真でまだ新しい方に映った男女を思い浮かべる。珍しくも紅いウェディングドレス纏った新婦の新婚だ。
罪悪感はある。それでも、国を護る歯車の一部にしか過ぎない俺達には逆らうことは叶わない。
願わくば今日中断した映画を観る際、晴れやかな気持ちで観れればと思うばかりだ。
「決行場所熱海だ」




