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しゅわらじ! 戦わないJKたちの観光地ダンジョン配信、わたしたちの恋と青春のほうがよっぽど大迷宮です  作者: たーたん


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10/10

#10 しゅわらじ、スキル開放☆

「……好感度探知リレーション・レーダー?」


 つむりが首を傾げると、彩華もほるすも同じ向きに首を傾げる。


 【天龍】ほう。……探知系か。スキル覚醒時の感覚は特殊でな、自分にだけ一気に情報が刷り込まれていくんだ。つまり、アプリには簡易情報しか明記されない。

 自身に書き込まれた情報を自分なりに解釈し、拡張していく必要がある。

 しかし、職業配信者か。仕方ないが、ステータスの上限値も低いし、他3人のロールに期待だな。


 【ダンジョン攻略始めましたさん】なんかこの人、妙にイラっとするw


 天龍のコメントはリスナーとの距離感を広げる結果になったが、ダンジョンにおいて『配信者』という職業はハズレ枠として有名だった。

 戦闘力に補正がかからず、覚えるスキルも直接戦闘の役に立たない「ネタスキル」ばかりだからだ。


 ガチの攻略勢からは冷ややかな目で見られることが多く、ソロでダンジョンを踏破するのはほぼ不可能とされている。

 だが、そんなことはしゅわらじメンバーには関係ないだろう。彼女たちにとっては、どれだけ面白くて、かわいくて、メロい映像が撮れるかが最重要項目だ。


「しいちゃん! どんな効果なの!? レーダーって響き、なんでも調べられそう!」


 近づいてくるつむりから、しいは同じ速度で離れていく。その顔は何やら赤い。


「お手本、見せてほしいなあ」


 彩華は手を頬に当てながら微笑んでいる。


「ん……、相手の位置が分かる。みんなの居場所が離れてても分かるの」


「わああ! 凄い! じゃあ迷子になっても平気だ! 最強スキルじゃん!」


「ふふ、つむりちゃん、大事なのはそこじゃないんだよ。リレーション・レーダーって読むみたいだけど、ルビ元の漢字を見て? ほら、好感度って書いてあるの」


「ちょちょ! 勝手に覗くなって!」


「好感度?」


 いつのまにかしいは壁際に追いやられていた。


「人を探せるんだよ! あたしからの好感度高い人だけ……」


「うん?」


 最後の方が聞こえなかったのか、つむりは笑顔で聞き返した。


「つまり、しいちゃんの好きな人だけの位置が、わかるってことだよ。ふふっ、かわいいんだあ~!」


「わああ、なんであたしより詳しく知ってんだよ!! よし! 次、あやか、お前行け。あ、あたしはもういいだろっ!」


 【天龍】……。


 【ダンジョン攻略始めましたさん】黙るのはいいけど「……」でアピしないでw


「……ごめん王さんから、一番好感度高いのはきっとつむ……ごめん、百合の香りしかしない……」


「わー! 読み上げなくていい! ごめん王さんも何言ってんの!? バカなの!? 次行くタイミングだから!」


 しいはつむりからカメラを強引に引っぺがし、彩華を映す。それに対し彩華はサングラスを外し、カメラに向かってウインクしながらスマホを見せた。

 既に登録完了をタップしていたようだ。


 アナウンス【国武彩華 冒険者登録 完了しました】


 ぽん! と煙を上げて、彩華の指先に現れたのは、アンティーク調の革表紙に金の箔押しがされた、とても上品なスケッチブックと羽ペンだった。いかにもお嬢様な彩華にぴったりの専用装備である。


【職業:配信者 スキル:天恵演出ディヴァイン・ステージ


 うんうんと頷いた彩華は、スラスラと迷いのない線でスケッチブックに何かを描くと、ふっと爽やかな息を吹きかける。

 すると、平面だったインクの線が立体的にふわりと浮かび上がり、ページからするりと滑り落ちた。

 ニコニコした顔がついた星形のキャラクターが立ち上がると、その場で回転しながら愛嬌を振りまいている。


「かわいい! かわいい!」


 興奮したつむりは抱きしめようと星形のキャラクターに触れると、そのキャラクターは光の粒になって消えた。


「あっ……あやかちゃんごめんっ! 抱きしめようとしたら消えちゃった!」


「そっかぁ、いいんだよ~。衝撃が加わると消えちゃうみたいだね。私のスキルはこの手帳に描いたキャラクターを召喚できるみたい。ええと、持続時間は1分くらいかなあ。あと攻撃力と防御力は0だって、ふふ」


「……あーや、絵、上手だから役立ちそう……」


 【天龍】……。


 【ほる推し二年生】どうなんだ? 偵察に使えなくは……ないか?


 【ほる推し一年生】あやちゃんの絵はかわいいから癒し枠ですよ先輩!


 【さえこ】たくさん描いて出したら、すっごい素敵で映えるんじゃない?


 【偽りの遍歴者】2人とも職業配信者で、探知と1分の紙召喚?ww そりゃ配信してるけど、なんか違う職業出るだろ、腹いてー、次、次w


 彩華が出したシャボン玉の絵と遊んでいるつむりとほるす。早速、正しい使い方をしているようだった。

 すぐにしいに怒られて、ほるすはあせあせしながらスマホを取り出した。


「……つぎ、ほるす……押すよ」


 アナウンス【門坂ほるす 冒険者登録 完了しました】


【職業:配信者 スキル:反鳴反響エコー・リフレクト


 【ほる推し一年生】ほるちゃんのスキル来たあああ!!


 【ほる推し二年生】反鳴反響!? 名前からして勝っている!


 【天龍】……職業。


「ほる、へいき?」


「うん……大丈夫。けど、……なんかいっぱい頭に入ってきてて……混乱」


「大丈夫だよ、ほるちゃん。ゆっくりでいいからね」


 【KYO】※ほるすとしいは同級生です。


 【さえこ】全員同級生ね。


「わかってきた……。声、聞こえるようになった、みたい。手が届くところで、聞きたいって思えば……」


 左手は拳を作り胸元に。ゆっくり目をつむったほるすは、小さな右手を何もない宙に漂わせる。ほるすの細い指先が触れた空間が、まるで水面のように波打った。

 過去にその場所で発せられた『音』や、強く念じられた『心の声』が、ダンジョンの特殊な空気に定着して残響となって聞こえるらしい。

 ほるすはそれを、まるで見えない糸を手繰り寄せるように読み取っていく。


「……しいの声、さっき、ここで言ってた。……聞こえるよ」


 指先は何かの形を確かめるように小刻みに揺れる。


「なんでつむりに対する好感度がお母さんと同じなんだよ……って」


 ほるすがいつものようにトーンを変えずに読み上げる。

 コメント欄には書かれていない内容だ。


「って、うおおおおい!」


 ひな壇の芸人のようにしいが飛び出してきてカメラ越しに叫んだ。


「ふふふ、しいちゃんたら。そんなこと思ってたの?」


「うん??」


 突っ込むしいと察する彩華。きょとんとするつむりだったが、


(しいちゃんの、心の声ってこと……かな?)


 と分からないなりに頭をフル回転させていた。


「うん、なんとなく、わかった。……ほるす、読み上げの力、上がった……!」


「まあ、そういうことにしとこっか」


 彩華はそう言ってほるすの頭を撫でる。


 【ほる推し一年生】先輩、どういう能力なんでしょう。


 【ほる推し二年生】ほるちゃんが理解するまで辛抱強く待て。とりあえず凄い。と思う。


「……しいの声。ああ、あたしも私服着てくればよかった。これじゃ、あたしだけ仲間外れみたいじゃん……」


「ちょ、ほるす、やめてえええ!?」


 どうやらほるすのスキルは、しいのこれまでの尊厳をことごとく破壊する前衛寄りの効果のようだ。


 運がいいのか悪いのか、ここまでの3人のスキルは見事に戦闘向きではない。配信映えだけに特化した愉快なスキルが揃ってしまった。

 しゅわらじらしいといえばそれに尽きるが、しかし、高校の成績を懸けて本気で5Fのボス攻略を目指さなければならない彼女たちにとって、この「圧倒的な攻撃力のなさ」でどう攻略していくのか、しいはすぐにこの現実に頭を悩ませるであろうことは間違いなかった。


「――じゃあ、最後はわたしだね!」


 意気揚々とつむりは「じゃじゃん」と、地声で効果音を言いながらスマホを振りかざした。

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