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80.

 アナの豊満な胸から解放され、わたしは領主の館の廊下を歩いていた。

 朝の冷たい空気が肺を満たし、少しだけ頭がすっきりとする。


「おはよう、主!」


 元気な声と共に、武闘派のボクっ娘であるキリカが駆け寄ってきた。

 彼女は目を輝かせながら、わたしの体にピタリとくっついてくる。


「すぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


「え、なに?」


 わたしは驚いてのけぞった。

 キリカは目を閉じ、恍惚とした表情でわたしの匂いを深く吸い込んでいる。


「リオン吸いさ。リオン様を吸うと、心地よい……♡ ほぉおお……♡」


 猫吸いという言葉は前世で聞いたことがあるが、まさか自分が吸われる側になるとは思わなかった。

 キリカの少し汗ばんだ熱い体温が、服越しに伝わってくる。


「大丈夫さね、大将。朝から愛されてるねえ」


 呆れたような声と共に、女性警備担当のガラが姿を現した。

 彼女はキリカと共に、館の周辺警備を担っている頼もしい仲間だ。


「外の様子はどんな感じ?」


「現在、館の周囲には『白骨樹海』という危険な森が広がっているさね。魔物が徘徊して、餌である人間を襲っているよ」


「ひっ!」


 恐ろしい報告に、わたしは思わず肩をすくめた。

 しかし、ガラはポンポンとわたしの頭を撫でて安心させるように笑う。


「大丈夫さね、大将。廃棄都市デッドエンドで拾った鉄ごみでアップデートされた外壁のおかげで、館の防衛は完璧さ」

「はぁ〜……。胎に、きっくぅ〜……♡」


 頼もしい報告を終えたガラが、なぜかそのままキリカに混じってわたしに抱きつき、深く息を吸い込み始めた。

 ガラの豊かな胸の感触が押し付けられ、むせ返るような大人の女性の香りが鼻腔をくすぐる。


 ふと、目の前の空間がぐにゃりと歪み、元魔族である廃棄族の少女エリーが瞬間移動で姿を現した。


「デッドエンドの西側農園のほうはどうだった?」


「無事です。農場の外壁のおかげで、みな安全に暮らせておりました」


 エリーは淡々と報告を終えると、じーーーーーーーーっとわたしを見つめてきた。

 その瞳孔が少しだけ開き、頰がほんのりと朱に染まっている。


「な、なんです?」


「リオン様吸いを……。すぅすぅ、はぁはぁ……。おかしくなっちゃいそう……」


 エリーまで参戦してきて、わたしの首筋に熱い吐息を吹きかけてくる。

 君もかいっ。


 わたしから、そんなにおかしな成分でも出ているのだろうか。

 三人の美女に囲まれて吸われ続け、頭がクラクラしてきたその時だった。


「あぉん♡ はふはふ……♡」


「うぁ!」


 突如として、猛スピードで突進してきた影に押し倒され、わたしは床にマウントをとられた。

 夜通し白骨樹海の浄化作業を行っていた鬼シスターの桜香だ。


 彼女の異能の炎は毒を焼き払うため、木材を抜いた跡地を燃やして土地を再生しつつ、夜間の魔物避けにも貢献してくれている。

 しかし、今の彼女の目には理性が微塵も残っていなかった。


「べろべろべろべろ! すんすん、かくかくっ!」


「やめてって! やめてー!」


 焦げた匂いと汗の香りを漂わせながら、桜香が激しく嗅ぎ回り、顔中を舐め回してくる。

 わたしは涙目でジタバタと暴れたが、鬼の怪力から逃れられるはずもない。


「こら、新入りが抜け駆けするんじゃないさね!」

「主が困っておるだろうが!」


 見かねたガラとキリカが、両脇から桜香を持ち上げ、物理的にしっかりとロックして引き剥がした。

 宙吊りになりながらも、桜香はわたしの匂いを求めて手足をバタバタと動かしている。


 どうしてうちの家臣たちは、みんな揃いも揃ってわたしにセクハラしようとするのだ。

 もう。


 わたしはガックリと膝から崩れ落ち、盛大に項垂れたのだった。

【おしらせ】

※3/1(日)


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― 新着の感想 ―
(´・ω・)私はインコを吸ってますが…何か?
ヘンタイが・・・タイヘンだぁ~www( ´∀` )
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