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テンプレートは遺伝……する?



お茶会の全容を知ったルシウス様、ソファの上で頽れる。

そうね、親子三世代のやらかしを知ったらこうなるね。


「父上まで……僕にあんな説教してたのに……自分がやらかしてたなんて……!」

「そう言えば、お義父様のお説教は割とソフトでしたね。ご自分のやらかしを思い出して、内心は悶えてたのかも」


確かあの時は、お義母様に「あなたからも何か言ってやって」と突かれてたな……。

さてはお義母様、楽しんでましたね?

あの時の風景を思い出してると、少し回復したルシウス様が潤んだ瞳で見詰めてくる。


「……僕のお嫁さんがミューで良かった……。お祖母様の右ストレートも、母上の不貞ファイルも耐えられる気がしない」


そうですね。

お二人とも、攻撃力かなり高い。違う方向性で。


「そもそもやらかさなきゃいいんですけどね」

「ぐっ!」

「あと勢い任せに言ったのは、ルゥが初ですって」

「うぐ!」


喉詰まらせますよ旦那様。

潤んだ瞳は涙が溢れる寸前だ。

よしよし、頭を撫でておこう。


「お義姉様はお義母様から聞いて、なんならお祖母様にも直接聞きに行ったらしいんですけど。やっぱりルシウス様には恥ずかしくて言えないって、お祖父様もお義父様も勇気が出なかったそうです」

「……気持ちはわかる」

「それでね、ルシウス様」

「うん?」


「どうせルシウス様もやらかすだろうから、ルシウス様の妻には、『愛することはない』って言われてもどうにかいなせそうな女性がいいって、お義母様もお義姉様も密かに考えてたんですって。そのお眼鏡に適ったのが私です」


そこはドヤァっ!と言い切ろう。


瞬いた拍子に涙がひとつ溢れたけど、ルシウス様は嬉しそうに私を抱き締めた。


「母上と姉上の見る目は正しい」

「ふふ、そうでしょう?」

「僕のお嫁さんには、ミューしか適わないよ」

「私もそう思います」


ちゅちゅ、とこめかみにキスをして満足げなルゥが見詰めてくるが、もうちょっと話したい。


「お義父様の受けたシゴキって、どんなものでしょうね?」

「……辺境伯家には小さい頃行ったことあるけど、父上の従兄弟の子どもが『明日から鍛錬!』って一泊三日の山ごもりをしてたよ……」

「(泊数が合わない)………、ルゥは無理ね」

「無理」


これまたキッパリ言い切るルシウス様。

お祖母様に鍛錬を言いつからないよう、振る舞いには気を付けましょうね。


「あとね、ルゥ」

「なに?」

「このやらかしの記録、私達の子どもには伝える?」

「ーーーーっ!」

「私は言いふらすけど」

「ミュー!」


必死のルゥの顔に笑い転げつつ、伝えるべきか黙って見守るか、様々な検証に胸を踊らせる私でした。




◇◇◇◇◇◇◇


「セザールって、お義父様がやらかした時も廊下で待機してたの?」

「左様でございます若奥様。当時は旦那様付侍従でしたが、少々思い詰めた目つきをされてらしたので念の為控えておりましたところ、あのようなことに」

「お義母様に言われて、お祖母様に取り次いだんでしょう?時間も遅いし、お休みになられてた?」

「いえ、まだご夫婦ともに起きてらっしゃいました」

「じゃあ、お邪魔にならなくて良かったわね」

「それどころか、大旦那様には『助かった!』と涙目で感謝されました」

「助かった?」

「ご子息の式を無事に終えられ、感想を話し合ってるうちにご自分たちの式のことに話が及んでしまったらしく。入室した際には、大旦那様が絨毯の上で正座されてました」

「……そう」

「その後、リカルド様とミモザ様がいらしてご報告されてる間になんとか痺れは回復されたのですが、ミモザ様が退出されリカルド様がボロボロになって運び出された後に、今度は朝までご子息の教育に関して正座で説教となったそうです」

「足が死んだわね……。てか、そんなに内情を話しちゃって良いの?」

「若奥様には包み隠さずお伝えせよ、とソフィア様・ミモザ様より命じられております」

「本当に包み隠してないわね……」

「明日の我が身だそうですので、参考にしてほしいとのことです」

「ルシウス様に適用できるかしら。あ、でも絨毯に正座も土下座も経験済みだわ」

「お役に立てるなら何よりでございます」





◇◇◇◇◇◇◇


「でね、実はこのやらかしって、外に出てないだけでどこの家でも起こってるんじゃないの?と疑ったこともある訳よ」

「まぁ、人には打ち明けませんよね。取り繕いようもない恥ですし」

「そう。周りに聞いてもそんなことはないと答えるけど、あったとしても普通は言わないでしょ?」

「普通は言いませんね。私は聞かれたら喋りますが」

「ミューの体験はミューのものだから、そこは好きにしていいわ。でもって、わたくしの夫も先代王弟の長男だから、条件は揃ってる訳。政略結婚でもあるし」

「おぉ!確かに」

「だからこれはもしやあるか?と思って。お祖母様流右ストレートは会得できなかったし、お母様のファイルも手元にはなかったんだけど、言われた時にはどう返そうと色々シミュレーションしてたの」

「何パターンか考えたんですか?」

「場合分けをしてね。お祖父様のような見下し、お父様のような浮気、ルシウスのような……いやルシウスのやらかしは想定してなかったわね」

「勢い任せの失言ですからね。もはや言わなきゃ始められない呪いかもしれません」

「お父様の浮気って言うとまた泣かれるわよ、ローザ」

「泣いたんですかお義父様……」

「そりゃ愛娘にやらかしがバレた挙句、『お父様浮気してたんですか。最低ー。近寄らないでください』とか言われたら泣くでしょ。日中の執務室で大泣きよ」

「さすがはルシウス様のお父様です」

「とにかく。ルシウス以外のパターンを検討して、こう来たらこう!と準備万端にして初夜を迎えた訳よ」

「迎え撃つ気ですね!」

「もちろん。それでね、戦い前の高揚を抑えながら旦那様を待ってたら、扉が勢い良く開いて、旦那様が飛び込んできたの」

「おぉ!」



「俺は君を!生涯愛し抜くことを誓う!って叫んでたわ」

「真逆!」

「結婚式の誓いだけじゃ足りなかった、って後から聞いた」

「屋敷中に響き渡る、盛大な惚気ですね」



後日、ルシウス様にお義兄様の話を伝えたら、ものすごく凹んでた。

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