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三人のお茶会

長くなったので、分けました

『歴史は繰り返す』とはよく聞いたフレーズだ。

独創性が、というより「前も似たようなことやってたような?」と思うような事件やらなんやらが、それこそ歴史の至るところにあるのは誰しもが思うだろう。



『テンプレートは遺伝する』…のか?

とは、新たに家族となった女性たちとのお茶会で、首を傾げながら浮かんだ疑問。


教育でなんとかなった気もするが、それでも繰り返したら本当に遺伝子レベルのやらかしだわー。

驚きと呆れと好奇心が4:3:3の割合で湧き上がり、まだ見ぬ未来に対してうずうずしてしまう。



……自分たちに息子が生まれたら!

教える?!それとも教えない?!

方針決めたら統制しなきゃ…!


そんなうずうず。



◇◇◇◇◇◇◇


「ミュー、あの……、お茶会は楽しかった?」


いつものソファに腰掛け、なんだか恐る恐るルシウス様が切り出した。

なんの探り?と思いつつ、笑顔で「ええ。とっても」と答えると、ルシウス様の顔が引き攣った。

……なんで?


夜会の日にお義姉様と話したお茶会は、本日無事に閉会した。

最初の取り決め通り、参加者は私とお義姉様、お義母様。あとは各自の侍女、メイド。

つかそれが普通だ。

男性は送り迎えのみ……て言ったって、会場が我が家の庭なんだから、迎えに来るとしたらお義兄様くらいでしょう?それだって必要かと問われれば、時間が合えば?くらいの認識だ。

なんで王宮の勤めを早めに切り上げて、会場が自宅のルシウス様が私を迎えに来るの。

普段は玄関ホールでおかえりなさいと迎えるのを、逆に迎えに来させてしまった。

私におかえりのキスをし、お義母様におざなりな挨拶をし、お義姉様に「それじゃまた!」とこれまた適当に声を掛けて、そのまま部屋に連れ戻された。



お茶会、そんなに妨害したかったのか?と視線で問うと、目を逸しながら言う。

「いや……母上と姉上から、何を聞いたかなと思って……」

「何を、とは?」

「子どもの頃の失敗とか。学園時代のこととか、そうゆうやつ」

なるほど。そこを心配してたのね。

納得、と頷いた。

親戚あるあると言うべきか、主に若年層の子どもの頃を知ってる輩が話題にするやつだ。

相手が強めなお義母様とお義姉様だけに、何を吹き込まれるのか不安になった、という訳。



ちなみにうちの一族は、この親戚あるあるな『黒歴史暴露』を、私達世代が中心になって封じてる。

一人いたのだ、そういう話を殊の外好む叔父が。

男女問わず場を問わず、とにかくその場にいる若い子の昔のやらかしを話題にしてくる。

悪気なく……と言うには我欲があるな。

悪意はないが、面白い話題の中心になりたい見栄とマウントの保持があった。

それを、親族一の出世頭・尊い方との婚約が決まってる従姉に対してやりやがったのだ。


尊い方との婚約、すなわち引きずり降ろそうとする政敵がいるのに。

さらに言えば、従姉はプライドが高い。

貴族スマイル・極みを貼り付け、コロコロ笑ってる従姉の後ろで、私達は震えた。

そして巻き込まれた。いや、協力させられた?

「明日は我が身よ?!ミューも同じ思いを食らいたいの?!」と肩をガクガク揺らされながら、かろうじて賛成の意を表明したわ。

そこからの方法は至ってシンプルだ。

①叔父の黒歴史を、叔父より上の世代から情報収集

昔話を聞く体で調査すれば、祖父母たちは気前よく話してくれる。

あとは叔父の兄弟たちとか、なんなら幼なじみも教えてくれた。たぶん皆あの黒歴史暴露に思うところがあったんだろうな……。

②叔父が誰かの黒歴史を話したら、その場で叔父の黒歴史を3倍暴露する

対象にされた本人ではなく、その周りが話すようにした。

やり返す、ではなくあくまで話題の提供として。

それを3回やったところで、叔父は話す前に一呼吸置くようになったのだ。

ついでに言うと、情報収集したのは叔父のみではない。

他の人の話題もあることをちらつかせ、叔父を見せしめにしたことで、一族は黒歴史暴露を封印したのだった。めでたしめでたし。



てなことがあるなー、とも思ったけど。

ルシウス様の相手にはたぶん通じないだろう。

3倍返しにさらに倍返しとかされそう。

うん、うちのやり方を教えるのはやめておこう。



「ルシウス様の昔話ですか。興味はありますけど、今回()聞いてませんわ」

「今回“は”?」

「次回はわかりませんが」

「次回……やるの?」

「お誘いがありましたら、ぜひ」


にっこり笑って答えると、ルシウス様は深いため息をついて私の肩に頭を寄せた。


「あんまり聞かないでほしいんだけど」

「ルシウス様は私の親や兄から聞かないんですか?」

「聞きます……」


でしょうね。そこは止めない。

聞かれて困る話も(そんなに)ないし。


「じゃあなんの話をしてたの?」

「最初は暮らしに慣れたかどうか、ルシウス様との仲は一瞬聞かれましたけどやっぱいいわ知ってる、となって。料理長の一番の得意料理と一番美味しい料理が微妙にずれてることとか、庭師こだわりの一画がある場所とか、メリッサの謎過ぎる美魔女な秘訣とかを話してました」

「最後のは僕も知りたい」

「それで、初夜の話になりました」

「……は?」


ガバ、と頭が上がる。

顔が赤い。口元を抑えてる。


「……初夜?」

「はい」

「って、あの?」

「あの、とは」

「………僕らの初夜?!」


悲痛な叫びになるが、今更では?


顔面を覆って蹲ってしまった。

この体勢、まさにあの日のままねー。

ポンポンと背中を叩いてやる。


「私達の初夜の実態なんて、あの日のうちに屋敷中の全員が知ってますよ。そしてお義姉様も知ってました」

「なんで?!」

「それはお義母様がお知らせしたのでは?」


たぶんだけど。

顔を上げないけど、耳が赤いわー。

身内に知られたくない気持ちはわかるけど、開幕ぶっぱをしたのはルシウス様なんだから諦めなさい。

そして今日の話題はそこではない。

と言うか、そこからだった。


「それでね、お義姉様が『やっぱり』って仰ったの」

「……やっぱり?」


聞き捨てならない単語に、ルシウス様のお顔が上がる。


「やると思った、って」

「なんで?!」

「そういう家系だから」

「…………かけい?」


意味がわからない、て表情になる。

ですよねー。私もそう思った。



「お義父様もお祖父様もやらかしたから、ルシウス様もきっとやるだろうって予測してたんですって」




◇◇◇◇◇◇◇


なんてことないように話すお義姉様と、まったく動じないお義母様に、どういうリアクションを返してよいかわからず固まってしまった。

お義姉様はカップを持ってニッコリ笑う。


「とは言え、わたくしはその場にいた訳ではないから聞いた話ね。いつからかアイゼンバーグ家本家の長男たちは初夜にやらかす、語り継がれてる歴史よ」


語り……継がれてる?

お義母様に視線を向けると、こちらもニッコリ笑って「事実よ」と断言された。

事実……え、あのお義父様が?やらかしたってこと??

いかめしくも凛々しいお義父様のお顔が浮かび、瞬時にパニックになった。



「え、あの、お義父様ですか??長男たちって……まさか他の方も??」

「内容を語り継いでるのはお祖母様からだけどね。お祖母様も曾祖母様から、事実があったことだけは聞いたと言ってたわ」

「なんと……!」


衝撃だ。恐るべしアイゼンバーグ家。

ルシウス様のお祖父様は亡くなってるし、超スピード政略結婚には領地にいるお祖母様の体調管理が間に合わなかったから、お手紙だけいただいている。

そのうち二人で領地へご挨拶に伺うことにはしてるが、とにかく。

文面や伝聞からするに、元は辺境伯のご令嬢だったお祖母様なのでだいぶさっぱりした気性の方だということ。

そのお祖母様まで、あの名台詞を言われたと……?!


どうにか事実を飲み込んでると、お義姉様がニヤリと笑った。



「どういう対処をしたか、聞きたくない?ミュー」

「めっちゃ聞きたいです!!」


即答、なんならはしたなくも挙手してしまう。

私の正直な反応に、お義姉様は豪快に笑い、お義母様は苦笑した。


「ですって。お母様、教えてあげたら?

「こういうのは年代順に語るべきでしょう。まずはわたくしが聞いたお義母様、元辺境伯令嬢のソフィア様がどう対応されたか……ローズ、貴女からどうぞ。語りたいんでしょう?」


お義母様の返事に、お義姉様-ローザリア様はふふっと笑った。

私は心のメモを取るつもりで、拝聴する構えを取った。




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