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二つの心音――弟が守護霊になり、霊と戦うことになった  作者: しょう
始まりの心音

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第十三話 初出動【前編】


 特訓を終えた颯と麗子さんが、こちら側の河川敷へ戻ってきた。


「二人とも、お疲れーい」


 光流くんが手をひらひらと振る。


「おい!光流!早く霊力くれ!!このままじゃ終われねぇ!!」


 颯がすごい形相で光流くんに詰め寄り、その胸ぐらを乱暴に掴んだ。


「ちょちょ、顔コワッ!落ち着いて〜!」


「早く!!」


 颯が光流くんを揺らす。


「付与してもらう立場なのに、ずいぶん図々しいですね」


「せっかちな男はモテないわよォ〜」


「颯……光流くんを離してあげて」


 僕たち三人に責められ、颯は舌打ちをして光流くんを離した。


 光流くんは咳払いした後、


「颯!霊力はあげるよ〜!俺じゃなくて、柊だけど!」


 そう言って、手のひらで僕を指した。


「え!い、いきなりやるの!?」


「あー?お前、できるようになったのかよ?」


 颯が眉間に皺を寄せ、目を細めてじっと僕を見た。

 ……な、なんか、すごく機嫌悪いな。


「柊くん、大丈夫です。自信持ってください」


 奏さんの優しさが、胸に沁みる。

 彼女の言葉に励まされ、僕は意を決した。


「……よし!やってみる!」


 そっと、颯に手をかざす。

 届け……僕の霊力……!


 しかし――


「うっ……うう……うー……」


 ……何も、出ない。

 空気だけが、指先を抜けていく。


 そんな僕を見て、光流くんがすかさず声を上げた。


「!!まずい、奏ちゃん!柊が……ふんばりモードに入ってる!!アレをやるしかない!!」


「汚いです!!……でも、アレをやるしかないんですね」


「……アレってなんだよ」


 颯が、顔をしかめた。


 すると、光流くんと奏さんが、ゆらゆらと手を波のように揺らし……あの儀式を始める。


「はい!リラックス〜」


 光流くんに、奏さんが続いた。


「ああ、コレのことねェ。はい、リラックス〜」


 さらには麗子さんまで、なぜか自然に加担する。

 僕は謎の動きをする三人に、がっちり囲まれた。


「てめぇら、ふざけてんのか!?」


 颯がキレた、その瞬間。

 僕の手から、淡い光が颯に向かって放たれた。


 ほわっ。


 一瞬遅れて――

 颯が再び、その輪郭を取り戻した。


「おっ!できてんじゃん!!」


 颯が自分の腕を見て、満足そうに笑う。


 成功した。

 僕にも、颯に霊力を付与できたんだ!


「やったぁ!」


 僕は思わず、光流くんと奏さんに抱きついてしまった。


「わっ、しゅ、柊くん!」


 奏さんは、驚いたように声を上げた。

 

「柊〜!すごい〜!」


 光流くんが、そのまま強く抱き返してくる。


「あ、ご、ごめんね!」


 慌てて二人から離れる。


「いえ。良いんですよ。柊くん、頑張りましたね!」


 奏さんは、少しだけ頬を赤らめ、小さくガッツポーズをした。


「できたはできたけど〜、うん!出力、めっちゃ弱いね!」


「うっ!」


 喜ぶ僕に、光流くんが笑顔のまま容赦なく刺してくる。


「まあ、これから調節できるようになればいいか〜。

 でもさ、柊って、持ってる霊力自体は強いはずなのに……」


 光流くんの笑顔が、ほんの一瞬だけ消えた。


「なーんか、変なんだよね〜」


「今日、初めてやったのですから……仕方ないのでは?」


 奏さんが、さりげなくフォローしてくれる。


 ――なんか、変。

 その言葉だけが、引っかかった。


「それはそうなんだけど〜、どう思う?麗子」


 光流くんが見上げると、麗子さんも腕を組んで考え込んでいた。


「そうねぇ……」


 麗子さんは、何も答えずに僕を見た。

 その視線に、胸がざわつく。


 ――なんでだろう。

 成功したはずなのに、釈然としない。


 ヘソの上が、ひどくむず痒い。

 まるで、そこに“何か”があるみたいで――


 僕は、無意識にその場所を押さえた。




読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:1月16日21時

第十三話 初出勤【後編】

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