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二つの心音――弟が守護霊になり、霊と戦うことになった  作者: しょう
始まりの心音

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第八話 朝倉光流という騒音【後編】


 ――翌日の放課後。

 僕たちは再び、化学準備室に集まっていた。


「柊くん、颯くん。元に戻ったんですね」


 奏さんが、僕たちを交互に見る。


「はい……おかげさまで……」


 ――昨日の帰り道のこと。

 

「ほら!やっぱり共霊は危険です!!」


 案の定、奏さんは元に戻らない僕たちを見て声を荒げていた。


「大丈夫です!寝て起きたら戻りますから!」


「そんな都合の良い話、あるわけないじゃないですか!!」


 そう言い合っていたが――

 幸いなことに(?)、今朝起きたら、前回と同じように元に戻っていた。


「どういう原理なんだろうなコレ」


 颯が空中に胡座をかいたまま、僕を見下ろす。

 颯にも僕にも、解除のきっかけはまだよく分からなかった。


「あの後、絵梨たちは無事に帰宅できたそうです。メッセージが来ていました」


「そうだったんだ……!」


 僕はホッと安堵の息を漏らした。

 みんなが無事で、本当によかった。


「“もう危険な場所には行かないようにする”、と」


 奏さんがスマホのメッセージ画面を見せる。その表情は、どこか嬉しそうだった。


 ガラガラ……


 化学準備室の扉が、元気のない音を立てて開く。

 そこに現れたのは、斎賀先生だ。


「せ、先生……!大丈夫ですか!?」


 げっそりとした顔。目の下にくっきり隈を作った先生を見て、僕は思わず声を上げた。

 昨日の晩、一体何があったのか。想像することすら恐ろしい。


「ははは……君たちが……無事なら……それで、良いんです……ははは」


「疲労で壊れてねぇか、コイツ」


 颯が目を細めて先生を見た。


「先生。昨日は、すみませんでした」


 奏さんが、深く頭を下げる。


「奏さん。良いんです、良いんです……」


 斎賀先生は力なく微笑んだ。その笑顔が逆に痛々しい。


 そこへ。


「うぇーい!!」 


 あの爆音が、化学準備室に轟く。


「ねーねー!見てこれ!ホッピングー!!」


 なぜかホッピングに乗って跳ねながら登場したのは、昨日の金髪男子――光流くんだ。


 なぜ……ホッピング……?


 僕は思考が停止した。


「すげー!跳ねる!見て見て!!」


 その瞬間――


 ガッシャーン!!!


 跳ねたまま一直線に、器具棚へ衝突した。


「あああああ!!そこ!!顕微鏡の棚あああ!!」


 斎賀先生の悲鳴が、化学準備室にこだまする。


「何してんだ、てめぇ!!」

 

「うおおお!霊!?君、霊!?霊力どこ!?どこにある!?」


 光流くんが跳ねたまま、颯を指差す。


 というか、この人、怪我していないのだろうか。


「と、とりあえず降りて下さい!」


 奏さんが、光流くんを止めようと一歩踏み出して、手を伸ばす。しかし、


「いった!痛い!!」


 光流くんのブレスレットの棘が、奏さんの腕に突き刺さった。


「てめぇそれ凶器じゃねぇか!!」


 颯が、すごい剣幕で怒鳴る。


「……ああ……あああ……」

 

 斎賀先生は、床に散乱したガラスの破片と割れた器具を半泣きで拾い集めていた。

 

 ――カオスすぎる。

 

 僕は呆然と立ち尽くしていた。


「うぇーい!!」


 光流くんだけが、心底楽しそうに跳ね回っている。


「だから降りろっつってんだろ!!バカかお前!?いや、バカだな!?」


 颯の叫びも、まるで届かない。

 奏さんが両手で顔を覆った。

 

「さ、斎賀先生……私、あの方、少々……いえ……かなり苦手です……」


「奏さん、大丈夫……!僕もだから!!」


 斎賀先生の目にも、うっすら涙が光っている。

 

 そこへ、ぬっと大きな影が――。


「光流ゥ〜!!アンタ、良い加減にしなさァい!!」


 ドゴォッ!!


 あの霊だ。強烈なパンチを喰らって、光流くんが吹き飛ばされ――そのまま、斎賀先生に激突した。


「へぶぅ!!」


 斎賀先生の魂の悲鳴が響く。


「あら!先生、ごめんなさいねェ」


 巨体の霊は、倒れた斎賀先生をひょいと引き起こした。


「れ、麗子れいこさん……」

 

 斎賀先生が、震える声でその名前を呼ぶ。

 “麗子さん”、というらしい。


「ほら、光流。しゃんとしなさい。自己紹介するわよォ」


 麗子さんは、常識人寄りの方のようだ。

 少々……いや、かなり乱暴ではあるが。


 頭に大きなタンコブを作った光流くんが、ぴょんっと元気に立ち上がる。

 さっきもそうだけど……この人、痛覚ないのかな?


「はいはーい!俺、朝倉光流!こっちは俺の守護霊の麗子!よろしく〜!」


「麗子よォ。よろしくね、坊やたち」


「守護霊が契約者ぶっ飛ばすなよ」


「……颯だって、僕のことよく殴ってるじゃん。当たってないだけで」


「あーん?」


 “守護霊”。

 やっぱり、この二人も僕と颯のように、契約を結んでいるんだ。僕たちだけじゃなかった。


 思わず、表情が明るくなる。


「僕は、白瀬柊です。こっちは、僕の弟の……」


「白瀬颯!」


 颯が腕を組んで名乗る。光流くんが、僕と颯を交互に見た。


「全然似てなーい!」


「僕と颯は義兄弟なので……」


「ああ、ステップファミリーってやつ!?そっちの可愛い女の子は〜!?」


「霧島奏です……よろしくお願いします」


「よろしくね〜!!」


 光流くんが奏さんの両手を掴んでぶんぶんと振る。奏さんの表情は、引きつっていた。


 斎賀先生が、くいっとメガネの位置を正して話し始める。


「光流くんと麗子さん。この二人が、昨日話した協力者です。こんな感じですが……二人は非常に優秀なコンビなんです」


「そうそう!俺ら優秀なの〜!」


 光流くんが舌を出してウィンクする。


「まあ、斎賀先生からちょっとは話聞いてたし、理解した!君が交通事故で半霊化しちゃった颯くんで、その半霊と契約してるお兄ちゃんが柊くん。

 で、元に戻る方法探してるってことでオーケー?」


「お?意外と理解早いな、コイツ」


「こう見えて、光流くんは頭が良いんです……何故か……」


「いや、バカだろ」


 颯の言葉に、斎賀先生が困ったように視線を逸らした。


「しかも君たち、共霊しちゃうんでしょ!?昨日のアレ、共霊だったんだ!魂二つあったもんね!ウケる!」


 光流くんが僕を指差して、ケラケラ笑う。


「アタシたちも共霊は初めて見たのよォ」


「えっと……光流くんと麗子さんは、共霊しないの……?」


 僕の質問に、光流くんが即座に明るく答えた。


「いやいや、普通にできないって!共霊めっちゃ難しいからね!

 仮にできたとしても、俺のビジュアルやばくなりそで無理無理!!」


「……アンタ、それどういう意味よォ?」


 麗子さんが、低い声で光流くんをジロリと睨んだ。


「た、確かに想像するとヤベェ」


「……強そうだけど」


 脳内でマッチョオネェ化する光流くんを想像してしまった。颯も、同じ映像を思い浮かべたらしい。


 奏さんが、落ち着いた声で言う。


「共霊は、“器としての素質”を持つ人間にしか、できないことなんですよ」


「君たちは、才能アリってことー!」


「そ、そんな……どうして、僕が……?」


 戸惑う僕に、斎賀先生が穏やかに声を重ねた。


「それも、この世界を知っていく中で……少しずつ、明らかになっていくかもしれません」


 斎賀先生は、話題を切り替えて続ける。


「さて、光流くんは、霊力操作のスペシャリストなんです。高校生ではありますが、祓い師の見習いとして、麗子さんと共に霊害の浄化に協力してくれています」


「霊害危ないからね〜!」


「柊くん、颯くんには、光流くんから、霊力の使い方を学んで欲しいと思っています」


 斎賀先生の真剣な眼差しに、思わず背筋がピンと伸びる。

 

「自分の力を正しく知り、使いこなせるようになることで、気づくことも増えるはずです。元に戻る手がかりも。それに……」


 一拍置いて、斎賀先生は続ける。


「警察の方からの情報ですが、最近、この地域で霊害の発生が増えているようなんです。……原因はわかっていません」


 昨日の出来事が、脳裏に浮かぶ。

 霊害が、人を襲う事件が増えているということだろうか。

 ごくりと、唾を飲み込んだ。


「柊くん、颯くん。光流くんと麗子さん、そして奏さんと一緒に、“祓う力”を身につけてみませんか?」


 先生の声は静かだが、力強かった。


「君たちの力で、誰かを守ることができる。

 それは、君たち自身を守ることにも繋がります」


 僕らの力で、

 誰かを、守れるようになる?


「もちろん、簡単なことばかりではないでしょう。

 それでも……どうしますか?」


 僕は――。


 先に、颯が口を開いた。


「つまり、コイツらと祓い師の訓練しながら、元に戻る方法を探せってことかぁ?」


「確かに。光流くんと麗子さんのような、守護契約を結んでいる方々と行動することで、分かることもあるかもしれませんね」


 奏さんが、口元に手を当て思案する。


「まぁ、何もしねぇよりはいいんじゃね?ついでに人助けっていうのも悪くねぇし。な、柊?」


「……うん。やるよ」


 颯を戻す手がかりになるなら、何だってする。

 それに、

 僕自身も、誰かを守れるようになりたかった。


「そうと決まれば、早速訓練しちゃーう!?」


 光流くんが、意気揚々と人差し指を立てる。


「では、ホッピングは僕が預かりますね……」


 斎賀先生が、そっとホッピングを回収した。


「うぇーい!なんで!?」


「ホッピング禁止です!!あと、その危険な腕輪も外してください!!」


 奏さんが、光流くんのトゲトゲブレスレットを取り上げる。


「あ〜!俺のアクセ〜!!」


「凶器だろ!!」


「光流は相当な曲者だからねェ……アンタたち、これから苦労するわよォ」


 すかさず颯がツッコミを入れる。


「お前も大概変だぞ!?」


「何ですってェ!?」


 こ、このチーム、本当に大丈夫かな……。

 一抹の不安が、よぎった。


 そんな僕を見て、麗子さんがふっと笑う。


「坊や……アンタ、軽く見てるんじゃなァい?」


 その言葉に、ドクン、と心臓が鳴った。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新1月11日12時

第九話 霊の麗子さん

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