3.私達を守って!
はぁ、ここが‘傭兵ギルド’かぁ。酒場っぽい。
理想的には、絶対に裏切らない・強い・いい人 がいいけど、そんな人なかなかいないよね……。
裏切るかどうかは私が提示した労働に対する報酬。
『村にある、お金が大量にある家を守ってくれ』なんて裏切って、そこのお金を盗むんじゃないか心配だなぁ。あ、あと私の護衛。
とりあえず、受付にこんなのなんだけど……という話をした。
「ギルドマスターに相談しますので少々お待ちください」
少々ってどのくらいだろう?
本当に少々だった。ちょっと待ったら、すぐ来てくれた。
今後自分が稼ぐつもりである事と、お金の大半を実家である村の方に置くという話をした。
「あー、あいつらなぁ。裏切らないといいんだが……保証ができなくてスマンなぁ」
どうしよう?
私に忠誠を誓ってくれる人が理想的なんだけど……。
‘忠誠を誓う’?
そうだ、騎士団!騎士様なら強くて、忠誠心高くて、いい人だよね。
騎士団って勝手に平民が行っていいもんだろうか?
とりあえず、行ってみよう。
ものすごい熱気と言えばいいけど、正直汗臭い。そうだよね。たくさんの人が一気に思いっきり汗かいてるんだから。
「こちらの責任者の方はどなたですか?」
「私が騎士団長のポールだ。平民からの叩き上げだから家名はない」
この人を連れていけないかなぁ?同じ平民だし。
「他に平民出身の方っていらっしゃいますか?」
「何が目的だ?間者か?」
「どちらかというと聖女です」
「ほぉ、聖女を騙る女が現れるやもしれないから注意しろと、今朝上層部からお達しが来たばかりだ」
早いな。
「まぁ、見てみます?団長様は、打ち身をしている様子…」
「この程度明日には完治している」
「まあまあ」
私は団長様のありとあらゆる怪我が完治しますように祈った。
「っ?!」
「どうですか?怪我が完治した気分は?」
「加えて、体力まで回復している。認めようじゃないか、貴女は聖女だ」
私はちょっと嬉しくなった。
そこで先ほどの平民出身の騎士様の話。傭兵ギルドだと裏切りの恐れがあるという話を包み隠さずに団長様に伝えた。
「なるほどな。俺はあなたの護衛に立候補する。正直なところ、この団長という地位に辟易していたのもあるんだが、どうにも貴族出身の騎士の奴らから疎まれているようでなぁ」
騎士団という組織も大変だなぁ。
「他のいい人材は?平民出身の騎士様がよいです。給金は勿論はずみます」
「うーん、‘俺は推してるんだがなぁ’ってのがいる。周りの、それこそ貴族出身の騎士がいい顔をしなくて、なかなか上に上がってこないんだ」
そんな彼をスカウトしましょう。
「他には?家を保護するには最低2人は必要かと思います」
「そうだなぁ。最近入ってきたんだが、なかなか剣を握らせてもらっていない奴がいる」
イジメ?どこの世界もあるのね。
「では、その方で」
翌日、騎士団では団長のポール、フェン、レスの3人が辞任届を提出。受理された。
その翌日より三人は私に忠誠を誓い、家族とともに村に帰ることとなった。
護衛に騎士団長は贅沢…。いいなぁ。