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352話 - 訓練半年経過報告

 対龍訓練を始めてからもう半年くらい経った。

 最初は億劫だと思ったダンジョン引きこもり生活。

 エステルのおかげで皆が度々訪れてくれるから全然苦じゃなかったね。


 ってか僕んちは重鎮メンバーの飲み屋みたいになってる……。

 僕料理人じゃないんだけどねぇ……。

 珍しい食べ物が食べられるのが嬉しいみたいだ。


 それにようやく待望の醤油が完成したんだ!

 おばあちゃん様様だよ……。


『これこれッ!くぅぅぅ……。醤油最高だッ!これが1番ッ!そして刺身うんまぁ……』


 ずっと待望だった醤油。

 僕の好物はお刺身だからね!

 マヨネーズも卵を仕入れられるようになった時に作ったんだけど僕的には醤油の方が嬉しい!


 ハイエルフさんには大人気だったけどね。

 野草ととても合うみたいだからね。

 色々作ってはいるんだけど忙しすぎて余りピックする暇なかったなぁ。


『おいしいけどそんなに~?クラムはパパがつくったやつならマヨネーズの方がすき~』


「……うん。……好きだけど塩でいい」


「私はまぁまぁ好みですけどね?1番かと言われると難しいです。クリームソースの方が好きですかね?」


『思い出補正だよきっと。あんまり覚えてないのに懐かしい気がするんだよね。でも肉じゃがとか色々レシピは増えるよ?また教えてあげるね?』


『わーい!』


「うまく行って良かったのじゃ!今量産しておるからの?」


『ほんとありがとおばあちゃん……。食が進むよ……グス』


 醤油は好評だったけど皆そこまで食いつくほどでもなかったみたい。

 刺身にはコレが一番って言ってたけどね。

 結局、地球の調味料はマヨネーズが1番好評だったね。

 醤油が作れたなら味噌も作れそうだなぁ。


 あ、そうそう。

 ずっと気になってた食物がある。

 それはお米だ。

 日本人の主食だもん!


 この世界ではロイスって言って家畜のえさとして使われてるって話だった。

 それを醤油が出来たこのタイミングで炊いてみたんだよ。

 寿司作りたいじゃん!


『うっわ、これダメだ……。すんごいパッサパサ。甘味もなんもない……。ってか何の味もしないよ……』


 ずっと期待してたのにここまで美味しくないとは……。

 がっかりだなぁ……。


「……マズい。……喉乾くだけ」


『クラムこれきらい~!』


「我もこれは要らんのぉ……」


「何とも言えないですね……。エルフに軟禁されていた時なら食べたでしょうか……」


 そだなぁ……。

 万が一飢餓とかになりそうなら食べられなくはない。

 味に癖もないしね。


 でも逆にうまみもゼロ。

 粉喰ってるみたいだよ……。

 敢えてこれを選ぶ必要はないって感じだなぁ。


『クラムがほーじょーでつくろっか~?』


『改良の余地はあるんだろうねぇ。でも、パサパサのお米でも美味しいかなって思ってチャーハンも作ったけどこれも微妙だ……。おかしいなぁ……』


「そもそもクロムの味覚が前世とは変わっとるんじゃないかぇ?」


『確かにそうかも……。そもそも別生物だし……。ってか今に至っては魔物だしなぁ。そう思えば醤油は美味しく感じてよかったね?』


「そうじゃのぉ。無駄にならんでよかったのじゃ!」


「では、今後も私のパンが主食でいいです……?」


『ん?元々そのつもりだよ?とりあえず食べてみたかっただけ。エステルのパンが1番!これからもよろしくね?』


「わかりました、ふふ♪」


 お米は外れだった。

 と言うより僕の味覚が合わないみたい。

 やっぱ要所要所魔物の姿の影響は受けてるみたいだなぁ。

 転生先が人でも同じ感想だったのかな?

 ま、いいや。エステルのパンが1番!




 こんな感じで生活も上々、もちろんみんなの訓練も上々だ。

 僕は皆の訓練を転々としながら見守っている。

 で、上手く魔物との訓練を挟んでステータスのバランスを取っている感じだ。


 1番心配だったエステルもちゃんと成長したよ?

 近頃はエステルに闘気を戻して訓練を開始した。


 具体的には闘気を使った身体強化の訓練だね。

 普通の身体強化とイメージは全く同じって話だ。


「はぁ……。精霊さんに頼りすぎていました……。もっと魔力を動かす練習をしておけばよかったですねぇ……。クロムさんなら出来たと思うのですが……」


『そんなことないでしょ。ってかエステルが苦手なのも僕等に比べたらでしょ?全然焦らなくていいよ』


「そうですね!少しずつ頑張る事にします!」


 闘気はなかなか思ったように体を巡らせることが難しいらしい。

 自称、魔力操作があまり得意じゃないエステルは尚更って事だ。

 この辺りは時間をかけてゆっくりだね。


『ふぁいやー』ボウッ


「”水化”」ジュウウ……。


 ゴオオオオォ……。


「ふむ……。クラム、終わりでいいのじゃ。炎はこれくらいでいいかの?そろそろ白炎に移行するのじゃ!」


『ほ~い!じゃ、つぎね~』


『それ、だいじょぶなの……?怖いんだけど……』


「痛ければちゃんと言うのじゃ?熱も感じておらんし全然平気じゃよ?」


『いや、見た目がさ……。ほんと頼むよ……?我慢しないでよ……?』


 おばあちゃんは水化を使った炎魔法の相殺を訓練している。

 とはいえ、もう殆ど相殺出来るようになった。

 もう溶岩階層の熱程度じゃ全く微動だにしないから火だるまになりながら訓練してるんだよねぇ……。

 おばあちゃんの訓練は怖いよ……。


 相変わらず回避に極振りしたおばあちゃんは凄いし回復も出来る。

 攻撃を捨てて回避と回復の練習。

 これも1つの最適解だなぁと思うよね。


「ほいっ。ほいっ。……ねぇクラマ~?」


「……なに、ココ?」


「ココとハチが攻撃してもクラマには当たんないよ~?」


『えぇ……。私の魔法を使ってもクラマ殿には……』


「……当たらなくていい。……ココとハチの訓練もついでにやってるだけ」


「ならいいけど~。じゃ、また氷投げるよ~?」


『では行きますよ……?”煉獄”』ゴアッ。


「”雷纏”」バチッ!シュンッ。


 クラマは妖術の持続力を主に伸ばしている。

 雷纏を使ってマラソンしてるようなイメージだ。


 動きのコントロールは徐々に出来るようになってるみたい。

 でも、どうしても消耗が激しい分少し持続力に不安が残るんだって。


 でも基本の妖術では殆ど妖力切れはしなくなってるんだよ?

 あとは満足できるまで頑張るって感じだ。

 これが良い所まで行ったら気配を消す練習を主体にするらしいよ?


『ハチ、ココちゃんお疲れ様。クラマは順調?』


「順調かなぁ~?ココは役に立ってる気がしないけどね~」


『私達はクラマ殿のおかげで強くなってるんですけどね』


「はは、クラマは面倒見いいからなぁ。訓練してもらってよかったじゃん」


「”雷纏解除”……。ふぅ……パパ。……混ざって」


『そだね。じゃ、僕と軽くおにごっこしよっか?クラマは雷纏、僕は転移ありでね?クラマは攻撃もアリでいいよ』


「……わかった。……本気で行く」


『軽くって言ったじゃん……』


 僕もよくここに混ざる。

 僕としても転移で避ける練習になるんだ。

 ライムもたまにこのグループに混ざってるよ?

 ライムが来た時はもっと魔法を嵐の様に出してもらうんだ。


 ってか家族に攻撃するのすっごく嫌だからなぁ……。

 むしろ攻撃アリにすると他の動きが鈍くなるんだよね。

 クラマは容赦なく攻撃してくるけどね……。

 だからおにごっこで良いんだ!


「……待ってた。……これが1番。……行くよ。”雷纏”。”双雷”」


『うッわっ!いきなりかよッ!”瞬間転移(ワープ)”ッ』


『これはおにごっこなのでしょうか……』


「いつものことでしょ~。じゃ、ココはお昼ご飯作ってくるね?」


『私もお供しましょう!』


 クラムはいつも特にいう事ないね。

 皆と訓練しているだけで皆に合わせて防御力が上がって行くもん。


『なんでクラムにはアドバイスないの~?』


『んなこと言われても、クラム僕の魔法全部覚えようとするじゃん……。僕が教えられる事なんて特に無いって……』


『え~。なんかちょうだいよ~』


『なんかって……。じゃ、電磁機関銃(レールマシンガン)打ちまくるから多重結界(シールド)いっぱい出す練習でもする?』


『じゃあぼーりんぐしよ~?クラムはしーるどピンね~?パパはれーるボール~』


『あ、そだね?じゃ、そうしよっか』


 僕等の訓練は今のところとても順調だ。

 訓練と言えど日々楽しむことも忘れないようにしてるよ。


 もちろんハイエルフさんや重鎮の訓練も進んでる。

 皆のステータスも3000近くなってきた。


 重鎮メンバーも仕事のストレス解消に皆に戦い方を教えたり、逆に魔法を学んだり楽しくやっている。

 今度の休みには久々にダンジョン40階層から先に進んでみようかなって僕んちで話してたんだ。


「なぁなぁ、久々にダンジョン潜らねぇか?兄者、キャシーの姉貴、行こうぜ?毎日仕事ばっかでたまんねぇよ……」


「まぁ、クロムの転移で帰って来れんなら別にいいか。じゃ、休み合わせるか?」


「私も最近忙しいですから久々に発散と行きましょうか!」


「ほう?私も混ぜろ。近頃ダンジョンに入っていないのだ。久々に入りたい」


 入ってるけどね。

 今、この家こそがダンジョン100階層だけどね。

 僕の家の庭だとか思ってんじゃないかなぁ……。


「会長なら大丈夫だな!マルスは来れねぇしその代わり……にしちゃ強すぎるけどな。歓迎だぜ!」


『いい加減マルスさん呼んできなって……。転移魔石あげるからさ?』


「心配しなくてもちゃんと呼んでるぞ?俺はちょこちょこ会うからな。でもあいつにゃちゃんと嫁さんがいるんだって。家に帰りたいんだとよ」


『あ、そういう事ね。じゃ、別に僕から無理強いすることでもないな。おっけー』


「マルスの事なんていいわ!それより私もダンジョンに行きたいんだけど!」


「王妃はダメです」


「付き合いなさいよスチュワード!代わりに休暇あげるから!」


「そういう事ではありません。私と隠密部隊の付き添いがあってもダメなものはダメです」


「……じゃあみんなダメよッ!私だけ仲間外れじゃないッ!」


「「「「…………」」」」


『まぁそりゃそうなるだろうね……』


 まぁ結局リトさんが仲間外れになるから却下されたんだけどね……。

 あ、そう言えばやっとリトさんのお腹が大きくなりだしたんだ!

 王様もリトさんもちゃんと子供がいるって実感が出来てきて嬉しそうだった。


 よくそのお腹でダンジョンに潜ろうと思うよね。

 地球で言えば3か月目くらいかなぁ?

 活発すぎでしょリトさん……。


 ベルのドワーフ国活動もとっくの昔に終了した。

 まぁ、特に問題ないそうだ。

 むしろドワーフ国は今儲かっているらしい。


 人々の被害もほぼ出ていないみたい。

 ベルはやっぱり仕事はバリバリできるんだろうなぁ。

 仕事は……ね。


 もちろんドワーフ国活動が終わった後も変わらず色んな地域を転々としてる。

 でも夜は絶対にエデンやダンジョンに帰ってくるんだ。

 呑気に酒を煽ってるから僕が心配するようなことはきっと無いんだろうね。


 キャシーはちょっと忙しそう。

 魔物討伐依頼はなかなか減らないみたいだ。

 たまにキャシーすら魔物討伐に出払ってるくらいみたいだよ?


 スチュワードさんは……何してんだろ……。

 裏で色々動いてるんだろうなぁ。

 僕等に見せる姿はいつも優雅な感じだけどやってる事多すぎて掴めないよ。


 王様の土地開発も順調。

 と言うか長々伸ばしてたくらいだ。

 クラムがやれば多分1日で終わる作業だもん。

 もうそろそろ終わるみたいだね。


 次はポートルの港開発だ。

 とは言えこっちも中々順調だってオグルのおっさんが話しに来る。

 ポートルのお金が増えて雇える人員が増やせてるんだって。

 それに王様からの支援も受けてるらしいよ?


 僕等も変わらず週1冒険者は続けている。

 むしろ最近活動に慣れてきて全員で動くことは辞めたんだ。


 残りの皆は個人依頼を受けてたり魔物を討伐しに行ったりしている。

 クラマやおばあちゃんは定期的に冒険者さんの指導依頼を受けたりしている。

 エステルはポートルの依頼が入り出したらクラムとポートルに行くんだって。


 今、冒険者活動中エステルが一番暇だ。

 パッと魔物を倒してパッと帰ってくるの。

 だから訓練したり本を読みながらスマホで僕のことをずっと見てるんだよねぇ。


 だから僕の冒険者活動の見張り番はほぼエステルって感じ。

 たまに女の子に撫でられすぎて怒られる。

 だって僕でっかい犬だもん。

 ちゃんと断ってるんだけどなぁ……。


 あ、あれから変な貴族トラブルはなかったよ。

 どうやら髭伯爵をかなり大々的に処刑したらしい。

 所謂公開処刑だ。


 それから悪い意味で僕に絡んでくるような輩は居なくなった。

 そう考えるとあのトラブルにも意味はあったのかもしれないね。

 失敗も成功のなんとやらだね。


 こんな半年だった。

 あのトラブル以降も相変わらず僕は3階層で教育をしている。

 獣人国側が僕に干渉してくることは全くなかった。

 王様が上手くやってくれたんだろうなぁ。


 冒険者のダンジョンの進捗に関しても上々だ。

 8階層にもクラムに頼んで休憩所を作ったんだ。

 僕等が見なくても8階層の方は上手く回ってるようだ。


 やっぱ基礎だよ。

 8階層まで行ける冒険者はある程度戦いに慣れてるからね。

 3階層の冒険者に比べるとアドバイスはあんまりいらないんだ。

 まぁ、たまに様子見には行くけどね。


「クロ様!どこが悪かったか教えてくれ!」


『攻撃が上手いのは分かるが少々前に出過ぎだ。パーティーにもっと任せるとよい』


「わかった!クロ様、ありがとう!」


「私はどこを直せばいいですか?」


『そうだな……。……汝は土魔術師か?』


「そうです!」


『どうやら人の世界では魔力を節約する習慣があるらしいな?それは間違いだ。日頃から使わなければ成長しない。強くなりたいならなるべく魔力を沢山使うよう改めるのだ。金儲けがしたいなら知らんがな』


「わかりましたッ!クロ様にアドバイスもらったわ~!ふふ♪」


「俺ももっと頑張ってアドバイス貰わないとなぁ……」


 この数か月で何故か僕は大人気になっている。

 たまに行列が出来ている始末だ。


 皆も気軽に話しかけてくるし特にビビる事も無くなった。

 偉そうな話し方にもちょっと慣れてきたからそれでかな?

 偉そうだけど嫌味にならない、くらいの塩梅の話ね。

 初めての人はギョッとしてるけどね。


 ってか僕の周りで戦闘するのもいいけどさっさと階層進めばいいのになぁ。

 4階層に行けそうな人も敢えて僕の周りで訓練してるんだよねぇ。

 まぁ多くても週1しか3階層には来ないしね。

 他の日はちゃんと活動してるんだろうけど。


 ついでにたまに見る魔術師には魔法を節約するなって教育をひっそりしている。

 これでちょっとはこの世界の発展が上向きになればいいな。


 じーっ。

 カリカリカリ……。


『ところで汝は何をしておるのだ……』


 なんかずっと見られてるんだよなぁ……。

 羊皮紙に炭持って何か書いてる人が居るんだよ……。


「あ、私、絵が趣味でして……。休憩に使徒様の絵を書いていたんですがダメでしたか……?」


『ふむ。見せてみろ』


「使徒様が私の絵を……」


 いや、そんなん良いって……。

 自分の絵を書いてくれてるって聞いたら気になるじゃんか。

 普通でしょ。


『ほう……。うまいな……』


 カラーではないけど白黒で綺麗に肖像画が掛かれてた。

 すごく繊細な描写で嬉しいなぁ。

 そしてやっぱアンの体ってかっこいいなぁ……。


「ほ、ほんとですか!」


『うむ。気に入った。感謝する』


「し、使徒様……。良ければ絵を販売してもよろしいでしょうか……?」


『ほう?何故だ?』


「や、やましい理由じゃないです!普段から自然の絵を書いているんですがお金が無くて……。私の絵や戦闘の腕じゃこれが精一杯なんです……。画材を買いたくて……」


 売りたいのか。

 まぁ娯楽品ならいいんじゃないかな?


 僕の体の絵って言ってもアンの絵みたいなもんだし恥ずかしさもない。

 アンに許可は取れないけど、この体はそのうち消えちゃうもん。

 いい思い出になるよ。

 いつかアンが生まれ変わったら一緒に眺めたりもできるかもしれないな。


『我の絵などを書いて売れるのか?』


「売れるに決まってますッ!いや……。本当は売りたくないんですけど画材があればもっと良い絵が描けるんです……。平民なのでお貴族様の肖像画なんて書けないし売り上げもごくわずかですし……。い、いや!お貴族様より使徒様の方が下とかではないですよッ!?」


『気にしておらぬが……』


 肖像画、かぁ。

 絵に関する職業は美術品とか肖像画とか、そんな感じなんだろうなぁ。

 貴族相手の仕事になってきそうだね。

 もっと仕事が増えればいいのになぁ……。


「本当はダンジョンに潜りたくもないんですがちょっとだけ魔法の才能があったので仕方なく……。親はせっかくの才能なのに兵士にならないのが勿体ないって言うんですよ!?兵士さんになんて興味ないんですもん……。仕方ないですよね!?あと!」


 良く喋るね……。

 日々苦労してるんだろうなぁ。

 やっぱこの世界でもそういうのはあるんだね。


 魔法の才能があれば職に困る事ない世界だもん。

 でも単純に嫌だよね?わかる。

 ココちゃんだってほぼ料理の為にしか魔法使ってないよ。

 それでいいよね。


『……わかったわかった。そのような理由なら構わぬ。好きに書くがいい。だが、その前に我にも1枚くれぬか?金も払おう』


「使徒様が私の絵を!?お金は要りませんッ!こんなに嬉しい事は……


『”結界”』ガンッ。


 ……きゃッ!」


『夢中になるのは構わんがここがダンジョンである事を忘れるな。裏に回れ。我が結界を張ってやろう』


「は、はい!ありがとうございますッ!」


『汝が画家として大成できるよう祈っている。今後も我の所に来れば結界を張ってやろう。対価にたまに絵を貰えぬか?仕事の邪魔にならん程度でよいのだ』


「是非っ!それに使徒様が私の夢を応援してくれるのですか……」


『変か?夢があることは良いことだと思うぞ』


「ぜ、絶対に叶えます!ありがとうございますッ!」


 この世界で画材なんて高いよねぇ。

 だから炭持って絵を書いてるんだなぁ。

 それなのにめっちゃうまいよ。

 ずっと練習してたんだろうね。


 僕はダンジョンの冒険者を強くするのが仕事だ。

 でも別に戦闘したくない人にまで勧めることはないよね。


「俺にも1枚売ってくれよ?もちろん金払うぜ!」


「あ、ありがとうございますッ!頑張ります!」


「人気だなぁ旦那?」


(そんなんじゃないって!)


 もちろん今日も今日とてウルフェンさんはいてくれる。

 ってか毎週同じ曜日に来てるからこの日は僕の為に空けててくれるそうだよ?

 まぁもちろんキャシーが決めてる訳だけどね。


 それにしてもダンジョンには色んな人が来るんだなぁ。

 低階層は綺麗な風景だし絵が趣味の人も居るよねぇ。


「あの……ク、クロ様……」


『汝は……。おお。あの時の小童か。息災か?』


 今日はよく訪問される日だなぁ……。

 確かこの子達は僕が天罰を落とした時に怪我してた高校生くらいのパーティーだ。

 ミスリル剣を上げた子達。

 前回と一緒で3人だね。


 孤児の子の面倒を見てるって言ってたんだよね。

 みんな問題なく生活出来てるといいけど……。


「ごめんなさいっ!」


『何故謝る?』


「クロ様から貰った剣を売ってしまいまして……」


 そう言えば僕が上げたミスリル剣は装備してないな。

 要らなかった剣だしいいんだけど一応理由を聞いてみるか。


『ふむ……何故だ?』


 話を聞くと、単純に自分達にはミスリルの剣はまだ不釣り合いで使わなかったそうだ。

 それならミスリル剣を売ってパーティー全員の装備を整えることや子供達を食べさせていく事を優先させたそうだね。


 僕に許可を取ってからにしようかと悩んだらしいんだけど僕と全然会えなかったんだって。

 今日ダンジョンに入ってたら僕が居るって聞いて謝罪の為に駆け付けたそうだ。


「本当にすみません……」


「俺は出来れば使いたかったんだけどよ……。ちび共が腹を空かせてるの見てられなくて……」


「せっかくのご好意を無駄に……」


 使いたかった剣を子供の為に売ったんでしょ?

 1番いい使い方じゃん。

 子供たちに間接的にご飯をあげられたと思ったら嬉しいんだけどなぁ。

 なんで謝る必要があるのか……。


『貴様らにやったものをどう使おうと知らん』


「で、では罰は……」


 罰って……。

 まぁこの子たちと会った時は盛大に神雷落としたからなぁ……。


『子を養うために売ったのであろう?』


「はい……」


『我にも子がおってな。子は我の宝だ。子を養うために売られたならその剣の1番いい使い方はそれだろう。汝らに剣をやった甲斐があった。罰する必要などない』


「は、はい!ありがとうございます!」


『我は気が向けばここに居る。稽古を付けて欲しければ訪ねてくるがいい。それはそうと、孤児は元気か?食事は行き届いているのか?』


「ウチの子ですか?えっと……」


 それからも少し話をした。

 孤児の子供達も元気だそうだ。

 この冒険者達も少し稼げるようになって以前よりまともな食事を取れるようになったらしい。


 ミスリル剣を売却したおかげでボロボロだった装備を新調出来たんだって。

 そのおかげだって言われた。

 いやいや、君達の努力の成果だよ。


 どうしても孤児の生活に困ったら王都の孤児院を尋ねるといい、と言っておいた。

 ラクトさんが気付いて保護してくれるはずだ。


 ・

 ・

 ・


「ほぉ~。うまいもんじゃのぉ?」


「……うん。アンの体のパパ。……いい思い出になる」


『だよね!買ってきてよかった~!みんなの分も書いてもらいたいなぁ~』


「私用のクロムさんの絵も買ってきてください!」


『いや、僕の絵は1枚でいいでしょ……。また違う画角とかで書いてもらったら買ってくるよ……』


 家に帰ってみんなに絵を披露した。

 あの子の絵は銀貨5枚だった。

 凄く安いよね?


 毛の1本1本まで丁寧に描写してあるんだよ?

 書きあがった絵を見ちゃったらお金払ってちゃんと買いたいから結局払ってきたんだよね。

 これで画材を買うって喜んでたなぁ。


『クラムのほうがうまいもん~!』


『もちろんクラムの絵が1番好きだよ?でも他の人が書いてくれるのも他の人の味があっていいでしょ?』


『あじ~?おりょうりみたいに~?』


『そうそう。おばあちゃんもエステルもココちゃんもクラムもクラマも皆美味しいでしょ?』


『そっか~!じゃ、クラムもパパのおえかきしよっと~!』


『うん、楽しみにしてるよ!パパもクラムを書いてあげよっか?』


『え~。パパへただからなぁ~。どうしよっかなぁ~』


 さすがにクラムの絵は描けると思うんですけど……。

 クラムはちっこいスライムじゃんか……。

 ほぼ丸だけで構成されてるじゃん……。

 エステルとか書けって言われたら断ろうと思うけどね!


 ……あれ?

 エステルが珍しく注文してこないな?


「私の料理……おいしいですかね……。ココちゃんに手伝って貰ったのですが……」


『めっちゃおいしいよ?ね?今日の料理は特にクラマが好物じゃない?』


「……うん。……普通に美味しい。……なんで作らないの?」


「クラムちゃんとクロムさんが上手すぎるんですもん……」


 最近エステルはまた料理を始めた。

 今日は僕を見ながら自分なりにココちゃんと料理してたみたいだね。


 今日の献立は芋とミルクと鳥肉を煮込んだやつだ。

 シチューみたいな感じだね。

 ちょっと野菜の切り方がぶきっちょな感じはする。

 久々だしそれは仕方ないよ。


 でもゴロゴロした野菜がたっぷりですごく美味しいんだ。

 エステルのパンにめっちゃ合うよ?

 エステルは苦手意識強すぎだよね。


「あ!これも作ってみたんです!材料が似ていたので……。是非食べてください!」


『え……。この色って……肉じゃがッ!?作ったの!?いや、うっまああああああッ!最高じゃんッ!』


「お醤油とお砂糖とお酒を入れるだけだって言われたので……。比率もクラムちゃんに教えているのを聞いてましたし……」


『にくじゃがおいし~!ほくほく~!』


「……うん。……これ、おいしい」


「これは美味いのぉ!好みじゃ!エステルはわしょく、と言うものが得意なのかもしれんのぉ?」


『そだね?エステルが作った料理で1番好きかも。醤油系の料理他にも教えよっか?』


「是非!ふふ♪よかったです♪」


 こうなると、やっぱみりんも欲しいよねぇ?

 後でみりんってどう作るのかおばあちゃんに調べてもらおっと。

 他に醤油で作れる料理はっと……。

 あ、ポン酢作ろっかな


≪クロムくん、みんなごめんねええええ!!≫


『ソフィア~?』


「……ソフィ、起きたんだ」


 そろそろ半年だもんなぁ。

 特に焦ってはなかったけどね。

 何も謝られる事ないって。

 それに、今晩御飯中だったし丁度いいタイミングだね。


『久しぶり!良く寝れた?』


≪ロキに起床装置止められてたのよ……。そっちの時間できっちり1か月で起きるつもりだったのに半年近くも寝ちゃったわ……≫


 あらあら……。

 まぁロキ様も心配してたんじゃない?

 それにしても神の寝坊は数か月単位になるんだなぁ……。


「では我らは風呂でもはいって寝るかの?ソフィア神とゆっくり話してくるのじゃ」


「そうですね?また必要なことは教えてもらえます?」


『あれ、みんな一緒に話さないの?』


「1人のほうが会話が纏まりやすいじゃろ。積もる話もあるじゃろうしゆっくり話してくるのじゃ」


≪それもそうね?じゃ、ちょっとクロムくん借りるわね?≫

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