2Day ––––––– 10Day
♤|1;00:00:00
私はごん、という物音で目を覚ました。
一面真っ白の部屋。自分の部屋では無い。
それは、昨日の出来事が全て現実である事を悟っていた。
微妙な感情になりつつも私は部屋の扉を開け、外へ出た。
「お、起きたか“如月”、おはよう。」
男が声を掛けてきた。
“如月”、私の名前だ。本名は“如代月”。
そんな私は、謎の『ゲーム』に『プレイヤー』として参加している。
「おはよう“水瀬”、えっと…皆んなは?」
先程声をかけてきた男、もとい“水瀬”。
彼は私と同じく『ゲーム』に参加している『プレイヤー』だ。
彼は現在私たちが居る2階の階段手すりに腰掛けていた。
「他の奴らはまだ起きてないぜ、『端末』を見てみろよ。」
“水瀬”にそう言われ、私は着ているジャージのポケットに入れていたスマホ状の『端末』に目を移した。
そこには
{Game Time|1;--:--:--
Your Start;♤2}
という表示と共に{05:59}と、現在時刻が表示されていた。
「まだ6時だ、他の皆んなは起きないだろうよ。」
“水瀬”の通りだった。6時は高校生の起きる時間にしては早い。
普段から早起きする私にとっては通常の時間だが。
「あ、そうだ“如月”。」
と、“水瀬”。
何の用事かと不思議に思いながら疑問符の相槌を返した。
「俺、1番乗りに起きたから昨日調べて無かった2階を軽く探索したんだ。その報告を、と思ってな。
まず、構造は1階と全く同じだった。縦長細廊下に部屋が10。1番奥に一回り大きい扉があったぜ。」
“水瀬”はその後も淡々と続けた。まとめると以下の様になる。
“2階の10部屋の内の5部屋は個室。残りの5部屋は居住に必要な部屋。
大浴場や脱衣所、休憩室などが残りの5部屋に当てはまるらしい。
そして1番大事なのが1番奥にある一回り大きい部屋。
構造は俗に言う“食堂”、だったと言う。”
「“食堂”には真ん中に大きなテーブル。部屋の周りには食材?が置いてあった。」
“食堂”の名の通り食事をする場所なのか、そう思いながら私はそこに向かうことにした。
♤|1;00:03:27
その扉は、1階の『♡』の部屋と同じく、他の部屋とは違う威厳の様なものを放っていた。
開けるには少し気が引けたが、勇気を出して扉を開け放った。
「確かに、テーブルと食材がある。1階と部屋の構造は同じみたいだけど…」
“食堂”内部は“水瀬”の言った通りだった。
テーブルの周りには色とりどりの食材。そして、1階の『♡』の部屋と同じ位置に階段があった。
今回は最初から上に行けるのか、そう思っていると背後から声がした。
[おや、起きたので御座いますか。お早う御座います。]
聞き覚えのあるイントネーションだった。
律儀で、近寄り難い雰囲気を持つイントネーション、“アート”と同じ喋り方だった。
だけど…声の高さが違う。
“アート”は小学男子の様な高い声を持っていた。だが、今後ろから聞こえてきたのは紳士的な少し低めの声だった。
恐るる振り向くと、黒スーツを着た“片羽の無い妖精”が居た。
[お初にお目に掛かります。私、“アロマ”と申します。]
“アロマ”と名乗る妖精は薄ら微笑みを浮かべながら言った。
彼は“アート”とは全く違う、正に執事を思わせる素振りをしていた。
しかし、私が1番に目を奪われたのはそこでは無い。
なんとこの“アロマ”、私より身長が高かった。
妖精なら小さく浮いてろよ、そんな要望が通じない体だった。
[私はこの2階の執事を務めております。
何卒、お見知り置きを。]
どうやら本当に執事だったらしい“アロマ”は親交を求めてきた。
その親交に対し適当に相槌を打って、私は質問へと移った。
「この部屋は一体?」
“食堂”に関する質問だった。
態々執事がこの階には居るのだ。何か重要な意味があると、そう思った。
[ふむ、この“食室”に関しての質問ですか。
簡単に言えば、“食事をする場所”ですね。]
部屋の使い方に関しては“水瀬”の読み通りだったが、この部屋は“食室”、そう言うらしい。
別に食堂でも良いと思うのだが
「オイ“如月”、そいつ誰だ?」
私が“アロマ”に質問を投げかけていると、着いて来たのであろう“水瀬”が言った。
早朝に確認した時は“アロマ”は居なかったのだろうか。
そう思い説明しようとすると、“アロマ”は自ら喋り始めた。
[貴方はもしや今朝部屋に来た方で?]
“アロマ”がそう言うと“水瀬”は薄ら頷いた。
その動作を見て[ああ!]と感動詞を言いながら“アロマ”は続けた。
[あの時の『プレイヤー』様で御座いますね!
いや失礼。あの時の私は…]
その喋りは妙に高テンションだった。
テンションの高さに少し困惑しながらも“水瀬”は言葉を遮るように応えた。
「俺の事は別に良いからよ、お前は何者か、教えてくれ」
…私が説明する事も出来るが、“アロマ”の口から言わせる事にした。
また高テンションで返すのかと思ったのだが一転、最初のテンションに戻っていた。
[これまた失礼を。私<Second Floor Master>の“アロマ”と申します。]
この時、“アロマ”の口から新単語が出た。
<Second Floor Master>、その言葉である。
愚直な意味で考えるならば<2階の支配人>。正しいのかは分からぬが恐らくそうなのだろう。
そして、今眼前にいる“アロマ”が<2階の支配人>ならば。1階で出会った案内役“アート”は<1階の支配人>になるのでは無いか。
そんな予想を立てたが、今考えても無駄。私はその思考を捨てた。
すると——
「おはよう」
と、“食室”に白髪ロリっ子こと“笠木”が現れた。
“笠木”も“水瀬”と同じく1Dayを共に過ごした『プレイヤー』だ。
小さな身長に今すぐにでも潰れそうな弱い声を持つ女の子だった。
[おや“笠木”様、お早う御座います。]
アロマが声を掛けた。
“笠木”は驚きはしたもののすぐに立て直し返答をした。
「おはようございます、執事…さん?」
アロマは何度自らを説明すれば良いのか、と言った表情をしながら名前と
<Second Floor Master>である事を説明した。
最後にアロマは
[残りの『プレイヤー』様方を起こして来てくれますか?]
と言って黙った。
その言葉に応えるため、私は“十月”の部屋へと向かった。“九十九”の部屋には
“水瀬”が向かった様だ。
♤|1;00:11:34
「“十月”さん、起きてる?」
と、私はノックと共に声を掛けた。
数秒待ってみたのだが返答が無かった為少し声量をあげてもう1度言った。
「“十月”さん、起きて?」
今度は反応があった。
寝起きの揺らぎ気味の声と共に“十月”は姿を現した。
「あら…“如月”様? おはようございますわ。」
彼女は典型的なお嬢様口調である。
カールの掛かったハニーベージュ色の髪とパーツの揃った綺麗な面立ちをしている人だった。
♤|1;00:13:08
“十月”を起こした私は彼女と共に“食室”へと向かった。
♤|1;00:13:59
“食室”には“アロマ”と“笠木”の2人が居た。
“水瀬”が居ない事から“九十九”が未だ起きてない事が確認出来た。
「“十月”ちゃん、おはよう。」
ちゃん付けで“十月”を呼ぶのは“笠木”しか居ない。
そう思いながら声の方を向くと予想通り、“笠木”だった。
すると、“水瀬”が“九十九”と共にやってきた。
こうして、“食室”に全員が揃うと口を閉ざしていた“アロマ”が声をあげた。
[改めまして皆様方、お早う御座います!
私<Second Floor Master>兼執事の“アロマ”と申します。
以後お見知り置きを。
と、挨拶はこのぐらいにして、朝食と致しましょう!]
“アロマ”は高テンションでそう言った。先程もそうだったが、“アロマ”は情緒不安定系なのだろうか。
考えながら“アロマ”の方を見ていると、突如として中央の机に向かって手をぱんぱん、と鳴らした。
「えっ…?」
誰かがそう言った。困惑、私も同じ感情だった。
“アロマ”が手を叩いた瞬間、机に食事が現れたのだから。
[私の“魔法”で食事を用意致しました。毒などは入れていないのでご安心を。]
♤|1:00:15:44
そう言われたものの食べる者は居なかった。
こんな状況下で食事をすると言うならば、それはよほど腹が減っているのか命知らずなのかの二択と言っても過言ではない。
故に、誰1人として食べなかった…のだが。
「本当に毒は入って無いんだよな…?」
“水瀬”が言った。どうやら朝の探索でお腹が空いているらしい。
皆んなの面前に並べられた豪華な食事を食べたいのだと一同は瞬時に理解した。
[はい、毒は入れてませんのでご安心を。]
その言葉を聞くと“水瀬”は机の中央に置いてあったローストチキンに齧り付いた。
無邪気な姿だとは思ったが、その様子を見て毒がないのを確認した私を含む5人は各々朝食をとり始めた。
「一悶着あったけれど、食べれたから良いとしますわ。」
ナイフとフォークを使い行儀良くローストビーフを食べる“十月”が言った。
知らぬ者が見ればただの朝食。だが知っている者は悟る。
食事が終わったら——また『ゲーム』が始まる——探さなければならない。
『カード』を。
♡|1;00:45:04
俺は飯を豪快に食べながら、考え事をしていた。
♡|1;00:45:23
今朝、俺は他の4人よりも早い5時半頃に目を覚ました。
始めこそ他の皆んなを起こそうと思ったが申し訳なさを感じ、2階の探索を始める事にした。
♡|1;00:03:11
「何だコイツ…」
“それ”は2階の隠し部屋に居た。
隠し部屋、それは休憩室から行く事の出来る11個目の部屋だ。
探索をしていた時、偶然見つけた。
黒い執事服を着た片羽の生物であろうモノを。
「“アート”と同じ妖精…か?」
疑問形ながらも俺は脳内でそう完結させた。
その隠し部屋を軽く探り、俺はその部屋を後にした。
♡|1;00:46:11
そう、俺は“如月”が“アロマ”に出会う前から“アロマ”を知っていた。
わざと“アロマ”とは初めて会った、そんな反応をしたんだ。
“アロマ”を知っていた事を隠した理由は——
♤|1;00:17:23
“水瀬”はおそらく何か隠してるだろう。
“アロマ”の“水瀬”に対する喋り方が明らかにおかしかったからだ。
だけど、何を隠しているのかが分からない。私が“アロマ”に会う前から面識があったのは確定だと思うけど。
♤|1;00:22:34
[それでは皆様、朝食も終わったことですし『ゲーム』を再開致しましょう。]
全員の食べ終わりを確認すると共に、“アロマ”が言った。
『ゲーム』、1Dayで行ったトランプ探し。
私は『♤の2』から始まり、1階で『♢の5』、そして『ゲーム』に関する情報が書かれた紙を2枚、獲得した。
「結局今日も今日とて探さなければなりませんのね…」
と、“十月”。
お嬢様は面倒臭がりなのだろうか。無理やりの『ゲーム』なのは私も百も承知だが。
♤|1;00:23:09
私は1度2階のゲーム用自室に戻った。
♤|1;00:30:11
「さて、じゃあ3階から探索するか。」
別件を終え、私は“食室”内の階段の前に立った。
階段は1階と全く同じ、特にトラップも無いようなので普通に登り始めた。
——3,4段ほど登った時、音が上から聞こえた。
[“Open” Access]
扉の開錠の際に聞こえる音だった。
久々…と言っても1日ぶりだが、その時間空けて聞いたが故、新鮮味を覚えた。
♡|1;00:59:32
「“カード”見っけ」
俺は3階『♧』の部屋で昨日同様、カードと『ゲーム』内容の書かれた紙を見つけた。
紙には以下の一文。
“各階、隠し部屋あり。”
“アロマ”が寝ていた2階の隠し部屋が他の階にもあるという情報だった。
建物に関する情報は初めて見つけた。重要な情報であろう。
「カードは…『♡の4』じゃねえか!更に進行した!」
俺は1階の探索で『♡の3』を見つけていた。
つまり俺はすでに3段階目に立っているのだ。
「このまま進めて1番にクリアしてやるぜ!」
俺は『♧』の部屋を去った。
♤|1;00:36:34
私は3階1番奥『♤』の部屋に居た。
構造は1階、2階の1番奥の部屋と同じ。他の部屋より一回り大きい事に加え、4階へ向かう階段もあった。
だが、
「この扉は…何?」
それは、『♤』の部屋中央にあるマットの裏にあった。
恐れ恐れ開いてみると、下に向かう梯子が付いている暗い空間が下に広がっていた。
「“マップ”のどこにも表示されてない…この梯子は何?」
私は『端末』メイン機能の1つ“マップ”を駆使しながら探索を進めていた。
建物内の部屋を表示するだけの機能であり、アニメなどで見る通りの見た目をしている。
「そんなマップに表示されない部屋…“隠し部屋”って事?」
私は好奇心故か、その“隠し部屋”に入った。
♤|1;00:37:48
「暗っ…」
梯子を降りてなお、暗さは継続していた。
手探りで暗所を探したところ、レバーと思しきものに触れた。
がちゃり、そんな音と共に電気が灯った。
「ここは…監視室?」
その部屋には計10台のモニターが並んでいた。
恐らく3階の部屋を監視する為のモニターだろう。10台と言う部屋の数と一致する事と3階の隠し部屋であることから私はそう結論づけた。
そんな時、
[おや、“如月“様? 何故…ここに?]
後ろから、先程とは違う“アロマ”の声がした。
圧と言うべきか怒りと言うべきか、そう言う感情がこもっているであろう声だった。恐らくこの隠し部屋は、“バレてはいけなかった”のだ。
[誠に失礼ながら“如月”様、立ち去って頂いても?]
私はその言葉に恐怖を覚えた。
そして、私は無言でその場から立ち去った。
後ろから聞こえた声、“アロマ”に顔を合わせる事は出来なかった。
♤|9;00:01:38
その後、私は計9日を掛けて建物内を探索した。
そして10日目探索開始直後、カードがやっとのことで揃った為私は1階『♡』の部屋に向かった。
そして、事件は起こった。
「…は?」
『♡』の部屋には、見事なまでに惨殺された“九十九”の死体が転がっていた。
また、“九十九”の隣には“笠木”が見つけて所持しているはずの“ナイフ”を持った
“十月”が立っていた。
「何…で?」
“十月”は私を見つけるなり優しく微笑んできた。
嘘の微笑みであろうと瞬時に見抜き、私は咄嗟に後ろへ飛ぶ。
「“如月”様?どうしたんですの?」
狂気だった。“十月”が放つそれは、狂気だった。
そして——
[Fifth Killer;『プレイヤー』“十月”]
特殊通告が入った。
…“5番目の殺し屋”という意味で。
♤|9;00:10:47
[死傷者が出た為、ゲームを中断致します。]
特殊通告が入った後私たちの目の前に“アート”が現れた。
突如出現した“アート”が放った第一声が、先の言葉である。
「ゲーム中断…ですのね。」
“十月”が言った。何か含みのある言葉だったがその時は考えてる暇などなかった為思考を捨てた。
[残る全『プレイヤー』に告ぐ、死傷者発生の為残る全『プレイヤー』は“強制ゲームクリア処分”とす。]
“十月”の言葉が空気に溶けると同時、新たな特殊通告が入った。
“強制ゲームクリア処分”、その言葉が私たちの耳に入ると、『♡』の部屋に“アロマ”が乱入してきた。
[“如月”様、“十月”様、お疲れ様で御座いました。こちらへ。]
と、“アロマ”は私と“十月”を入口まで連れていった。
他2人の『プレイヤー』、“笠木”と“水瀬”は私が外に出て数分後に姿を見せた。
「一体何が…?」
と、“笠木”。
私も未だ理解に及んでいない。“九十九”が、殺されたのだから。
——こうして、“Round1”もとい、“Searching;Trump”は、幕を下ろした。
—Log—
10Day経過、現状を記す。
1.『プレイヤー』“十月”が『プレイヤー』“笠木”発見の“ナイフ”を用いて
『プレイヤー』“九十九”を斬殺。
2.『プレイヤー』の死傷に伴い、“強制ゲームクリア処分”が発動、生き残った
『プレイヤー』計4人が建物外へ脱出。
3.対応措置終了後、“Round2”へと移行予定。
4.なお、 “███”様は██せず██。




