中庭にて
教室の一室からモクモクと立ち上る煙を学園長であるベルギウスが眺めていると庭師の格好をしたシリウスが作業道具を片手に近付いてきた。
「これは学園長、仕事は良いのか」
「ほんの少し休んでいるのです。私も歳ですから」
「私に庭仕事をさせておいてよく言う」
ベルギウスの返答に小言を言いながらもシリウスは庭木の剪定を始めた。
その手つきは手慣れており、誰がどう見てもこの男が貴族である事を微塵も感じせない澱みない動きをしていた。元々真面目な性格のシリウスは庭師となる為にしっかりと勉強をして学園の庭師に採用された。
そんなシリウスの努力を知っているベルギウスはわざとらしく質問した。
「庭仕事はお嫌いですか?」
ベルギウスが悪戯っぽく笑いながらシリウスに尋ねたら「いや、楽しくやってるよ」と顔を見ずに手を動かしながらシリウスは答えた。
「それは何よりです」
ベルギウスは満足そうに笑った。
「それより生徒から聞いたぞ、入学式では上手く蝶を出せたそうだな」
「ええ、シリウス様から教わって八年。ようやく成功出来ました」
最初はシリウスと同じ様にドラゴンを出そうとしたがシリウスと比べてベルギウスは圧倒的に魔力が少なく、全く成功しなかった。
そして改良を重ねて小規模で且つ蝶を生み出す事でベルギウスは何とかこの魔法を習得出来たのだ。
「これで君も立派な魔法使いだな」
「ありがとうございます」
ベルギウスは嬉しそうに笑った、シリウスに魔法を褒められたのが純粋に嬉しくほんの少し照れ臭かった。
二人が話していると中庭を駆け抜ける生徒がベルギウスに気付いて立ち止まった。
「こんにちは!」
「はい、こんにちは」
生徒は深々と頭を下げて元気よく挨拶するとまた走り出して建物の中に入っていった。それからも生徒達はベルギウスに元気に挨拶しながら通り過ぎて行く。
その様子を笑顔で見守るベルギウスはこの学園が笑顔で溢れていて本当に良かったと心の底から思っていた。
そしてそんな世界をほんの一部とはいえ屋敷に篭っていたシリウスに見せれた事が嬉しかった。
そんな事を思いつつベルギウスは額に汗を流しながら黙々と剪定をしているシリウスを見た。
「どうですか?シリウス様」
「何がだ?」
「魔法は?」
「そうだな……」
突然脈絡の無い質問にシリウスが顔を上げて話し出そうとすると、また教室の一室から大きな爆発が起こり窓から煙が吹き出した。
さっきの講義中の爆発を含めて二つの煙が校内から立ち上っている。
中庭を歩いていた生徒は立ち止まり上を見ながら、なんだ?なんだ?と騒いでいる。
もちろん煙が出ている教室からは更に騒がしく声が響いている。
そんな光景をシリウスを見ながら嬉しそうに呟いた。
「ああ、随分と賑やかで愉快なものだな」




