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学園長からの挨拶

アンベルティー魔法学園、それはインタリー王国に唯一ある魔法学校の名前である。

 アンベルティー国王が創設したこの学園は才能の有無に関わらず、魔法使いを目指す者は誰でもその門を開けている。年齢性別問わず、貴族も平民も同じ教室で机を並べ魔法について日夜勉学に励む学園である。

 貴族の子息も通う事から学園自体が城のような立派な作りになっており、門を潜れば学校の荘厳な建築と威圧感に平民は息を呑んだ。

 毎日多くの人が行き交う廊下には埃一つ落ちておらず、絵画や調度品が飾られており窓も鏡のように磨かれていた。

 国内でも随一の蔵書数を誇る図書館は古今東西あらゆる国や地域の魔導書が収められており、学生のみならず卒業した魔法使いや国外からも魔導書を求めて訪れる知識の宝物殿である。

 学園の真ん中にある学生達憩いの中庭も庭師によって毎日管理されており、四季折々に姿を変える学園自慢の美しい庭園である。

 アンベルティー魔法学園は最高学府に相応しい実績と品格を併せ持つインタリー王国自慢の学園であった。

 そんな学園の大ホールでは今年入学してきた生徒達が集められていた。新入生が注目している壇上では学園長からの挨拶が行われていた。

 新入生はこれから始まる新たな生活に期待を胸に膨らませ、輝く瞳で学園長からの話を熱心に聞いている。

 学園長はいかにも魔法使いのような老人で白い髪と長い髭を蓄えており、魔法杖も魔法の為というよりふらつく体を支える為に使っているように見えた。

 学園長はゆっくりと優しい声で新入生に語りかけている。

「その昔魔法は貴族だけが使えましたが今は誰でも自由に扱う事ができます。魔法が自由であるようにこの学園では貴方達を縛るものは何もありません。年齢も身分も階級も国籍も関係ありません。ただ魔法を学びたいと心に決め、この学園の門を潜った同志だけがいます。なので自分の好奇心、探究心に従い魔法を学び新たな魔法の世界を広げていって下さい」

 学園長が頭を下げて挨拶が終わったかと思いきや学園長は杖を前に突き出した。

「そしてこれは皆さんへ私からのお祝いです」

 学園長がそう言うと杖の先に火の玉が現れた。新入生はその当然の出来事にギョッと息を呑む。

 学園長が何かぶつぶつ唱えると火の玉の一部が少しづつ姿を変えていく。明らかに火とは違う動きをするそれは目を凝らすとようやく何か見えてきた。

 真紅の蝶である。

 新入生がそれが蝶だと気付いた瞬間その火の玉から次々に紅く燃え盛る蝶が飛び立っていった。

 蝶は真っ赤な鱗粉を羽ばたかせる度に落としていき新入生の頭上をヒラヒラと飛んでいく。鱗粉は不思議と熱くなく、手の平に乗せるとまるで雪のように溶けて無くなってしまった。

 ホールの中に新入生の入学を祝うように舞う蝶、その光景を新入生は目を輝かせながら見つめていた。

 もう誰も学園長を見ていない。誰もが皆入学式だと言うこと忘れてしまい、その美しい魔法に心を奪われ溢れんばかりの笑みを浮かべていた。

 

 

 

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