見えない問題
『そんなに成長していたら私の時よりも国民は日本のことが好きなんでしょうね』
昼ごはんに使う薄焼き卵をフライパンで焼きながら今川は彼女の言葉を脳内で反復させる。
たしかに彼女が生きていたと思われる大正時代は,
第一次世界大戦,関東大震災,シベリア出兵,性別や出身地による差別・・・
比べると今はとてもよくなった。だからと言って国民全員が日本が好きとは言いずらい。
感染症の拡大,円安,産業の衰退・・・
いまだに多くの問題を抱えている。そして明らかに変わったのは『愛国心』。昔は生きずらかったが愛国心は必ずあった。少なくとも今よりは。
「今川先生何をつくってるんですか?」
これがいいことか悪いことかは一画的に判断はできない。日本のために頑張るというのはいいことかもしれないが,それが行き過ぎたがゆえに日本は二回目のの大きな戦争で・・・
「未来の料理は卵を真っ黒くなるまで焼く料理があるんですね!」
驚いた木下の声に今川は我に返った。フライパンを見ると真黒く焦げた卵がフライパンに広がっている。
「あーー!!!」
急いで火を止める。ジュウジュウと焦げていく音は止まった。
「これがどんなもんになるんやろうか?」
興奮交じりに木下は言う。その横で今川は肩を落としたいた。
「ハイカラじゃ~」
満面の笑みを浮かべて昼食のオムライスを頬張る。向かい合う形で今川はチキンライスを食べていた。
「先生は卵を乗せなくていいんですか?」
「最近,卵が高騰してるんだ」
そうなんですね,と興味なさそうに返事をして昼食を続ける。
「先生は男の人じゃけど料理が上手なんですね。安心しました」
「昔の人も変わらないと思うが」
昼食を作る前に一悶着あった。
「先生,私が作ります!」
「いや,それはできない!すまないが料理は私の趣味なんだ。やっと私の本領を発揮するときなんだ。それに今のキッチンは使い切れないだろう」
「教えてくれれば使えます!マッチはどこですか!?」
「この時点で全く使いこなせるとは思はない!君はあちらに座っていなさい」
「信じてよかったです!」
「最初は否定していたと思うが」
まあ,時代が違うなら仕方ないかと今川は納得した。
「それにしても料理が趣味なのに失敗するんですね」
「いつもはしないが,少し考え事をしていてな」
そう言って黙々とチキンライスを食べる。
「何を考えていたんです?」
ん~と今川は言うか言わないか数十秒考え込んだ。まあ,別に言っても何ともないだろうと思い話す。
「今の人たちは日本が好きなのかな思ってな」
え,っと木下は動きを止めて絶句した。大正時代からしてみれば愛国心はあって当然のようなものだからこの感覚はわからないかもしれない。
「でも,日本は私の時代よりも発展してるし、さっき歩いてた人たちも暗い顔なんてしてなかったですよ。」
小さな声で木下は言った。続けて,
「それに誰も社会的な運動をしているようには見えませんでしたし」
大正時代といえば,大正政変から国民による社会運動が盛んに行われていた。大正デモクラシーという期間である。国民が力を合わせ積極的に政治を変えていった頃だ。
「今は大正に比べればよくなったが,また新しい問題も発生しているんだ」
「新しい問題?」
木下は首を傾げた。
「でも、こくさいれん、めい?とかで戦争を起こらなくなりましたし、飢えて苦しんでいる人だっていないみたいでしたよ?」
「今は目に見えない問題が多くあるんだ」
「目に見えない?」
「確かに君の生きていた時代に比べれば、よくはなったが少し解消されただけだ。差別だっていまだに根強く残っているし日本経済が良いものとは言えない」
「それならどうしてみんな声をあげないんですか?」
「それは日本特有の同調圧力みたいなもんだろう。誰もが目立たないように生きていきたいから大きなことを起こせない」
「同調圧力?」
「ああ、ある意味太平洋戦争の特攻のときと同じことだ」
その時木下は訳がわからないという様子だった。その姿を見て今川はしまったと椅子から立ち上がり、
「あ!今のは忘れてくれ!大丈夫だから」
「太平洋戦争ってなんですか?それに特攻って・・・?」
木下は何かに怯えるように顔を真っ青にして問いかけた。少し泣いているようにも見える。
「大丈夫だから!」
「日本はまた戦争をするんですか?」
今川にはただ木下をなだめることしかできなかった。
こんにちは!春桜結分です!
言った通りこっちの方も進めていきますよ〜
『弱者と能力者』の方はごりっごりのライトノベルみたいな感じですが、こっちは一般的な小説とライトノベルの間みたいな感じでどちらとも書いてて楽しいです。・・・以上です!(書くことなくなった)
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!




