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鉄血女帝アナスタシア 第六十四話

「レンネンカンプ大将、観測機からの報告です。侵攻してきた敵部隊約4万の無力化に成功」


「新型のエフェッチ榴弾砲の威力はすさまじいな。自分がドイツ軍では無くて良かったと心底思うよ」


 今回使用された武器は155mm牽引榴弾砲だ。蒼龍の前世ではFH70と呼ばれていた武器である。自衛隊での通称はFHえふえっち。この砲弾に近接信管付の榴散弾を使用した。近接信管のレーダー波によって地上40メートルで爆発し、数百発の鉛玉を地面に向かって射出する。榴弾一発でテニスコート二面分程度の面積を制圧できるため、集団で侵攻してくる歩兵にとってはまさに悪夢と言って良い。牽引榴弾砲だが小型のエンジンも搭載していて、時速15キロ程度で自走もできる。


「よし、偵察の二輪部隊を出せ。生きている敵が攻撃してくるかもわからんから十分に注意させろ。偵察が終わったらドイツ軍に連絡しろ。負傷者救助と死体の回収を許可する。期限は明日の24時までだ。その間にもし敵対行為があったら反撃するとも伝えておけ」


 最前線に配備されている二輪車は、昨年から生産されているスーパーウラル110にブロックタイヤを装着したハンターウラルだ。110ccのエンジンを搭載していて最高速度は80キロ、悪路でも50キロ以上の速度を出すことができる。ロシアではこのハンターウラルは主に郵便配達に使われているのだが、ほぼ同じ物が軍にも採用されて偵察任務に当たっていた。


「皇帝陛下はお優しいですな。戦場の現実を出来るだけ報道して、こんな悲惨な行為を止めるように各国の国民に訴えるとは。愚かなドイツ軍にはその御慈悲の欠片かけらも理解できないのでしょうな」


「私も同意見だよ、副官。鉄血女帝などと呼ばれることもあるが、本当はとてもお優しい方だ。国民の生活を一番に考えていらっしゃる。そして神聖な我が領土を侵す敵兵であっても必要以上に殺傷しないよう強く命令された。そして捕虜や市民への暴行や略奪は厳罰に処される。我々の部隊からそんな不届き者が出たら私は皇帝陛下に顔向けが出来ないよ。綱紀の引き締めを頼むぞ、副官」


 ◇


 ドイツ第八軍第一軍団 前線司令部


「バカな!進軍した4万の部隊がたったの30分で全滅だと!」


 侵攻した部隊からの信じられない報告に前線司令部のフランソワ大将は動揺を隠せなかった。何かしらの罠がある事は考慮していたが、それでもたった30分で全滅など考えられなかったのだ。


「はい、フランソワ大将。ロシアの榴弾攻撃を受けた模様です。ほとんどの砲弾が空中で爆発していたという情報があるので、おそらく時限信管による正確な攻撃かと・・・」


「そんな・・・時限信管でそんなに正確な爆発をコントロールできるのか?それにロシアの防衛線まで10キロ近くもあったんだろう。そんな距離を榴弾砲が届くのか?列車砲では無いのか?」


 ◇


 サンクトペテルブルク


「・・・・・・シュタルペーネン方面の戦況報告は以上になります」


 参謀本部の若い士官が報告に来ている。緒戦は何とか被害も無く撃退できたようで本当に良かったわ。でも、ドイツの若い兵隊1万5000名程度が死んで2万名が重傷を負ったらしい。たったの30分で。本当に悲しいことだわ。この惨敗でしばらくおとなしくしてくれれば良いんだけど。


 今回の戦いではエフェッチっていう新型の大砲が活躍したらしい。元々大砲を作る技術はあったから、蒼龍の設計図と技術指導によってこの榴弾砲の大量生産が始まってるのよね。蒼龍曰く“砲兵は戦場の神”なんだって。誰の言葉なのって聞いたら“スターリンですよ”ってねぇ。あいつ、よくレーニンとかスターリンの言葉を引用するのよね。共産趣味者ってホント性格が歪んでるわ。


「ん?報告は以上でしょう?もう下がって良いわよ」


 参謀本部の若い士官は顔を赤くしてなんだかモジモジしているわ。なんだろう?そういえばこの士官、最近ちょくちょく報告に来る人だわ。20才くらいでけっこうイケメンね。私に気があるのかしら?あれ?でもチラチラと横を見てる。その視線の先には・・・ルスラン。ああ、そっちに気があるのね。


「はい、失礼いたします、皇帝陛下」


 その士官は深々と頭を下げて踵を返した。体をひねる瞬間、ルスランの方をできるだけ不自然にならないように見たわ。ルスランと視線が合ったみたいね。ルスランはその視線に気付いてニコって微笑み返した。ルスランって基本的に誰に対しても優しいのよね。私の最側近だから、みんなから少しでも好感を得ようと努力してくれてる。なんて可愛いのかしら。でもね、その優しさが勘違い男を生むのよ。罪な女ね。


「そういえばルスラン、最近蒼龍は戦略研にこもりっぱなしなのね。ちゃんと会ってる?」


 蒼龍は戦争が始まってから戦略研にこもって様々な情報の分析をしているのよね。既に蒼龍の知ってる歴史から逸脱し始めてる。だから最新の情報を常に精査しないといけないんだって。でも本当は平安京エイリアンで遊んでるんだと思うわ。


「はい、皇帝陛下。あの、毎日、ちゃんと会って・・・してます・・・」


 うわぁー、すごいわね。毎日してるのね。蒼龍は13才の体だからいろいろと有り余ってるのよね。そういえば前世で長男のミハイルの部屋に入ったときに“ななな何だよ、母さん、急に入って来んなよ”って言いながらズボンを直してた事があったわね。まっ赤になった顔が可愛かったわ。あれって多分自分でしてたのよね。USUIHONだとあそこでお母さんが手伝ってあげたりするんだけど。あのときも13才くらいだったかしら。この年代の男の子って猿みたいに自分でしまくるって言うけど、こんな美女をパートナーにしちゃうと毎日でも要求するのね。まったく、ルスランの体のことも少しは考えて欲しいわ。


「毎日?すごいわね。毎日求められて、体力大丈夫?無理ならちゃんと断れば良いのよ。私から注意しておこうか?」


「いえ、その、私の方から蒼龍の部屋に・・・・・・」


 あー、そっちね。ルスランの方だったのね。確かに蒼龍は前世でもかなり経験があるはずだから欲のコントロールも出来るんだろうけど、初めてあの快感を知っちゃったルスランの方が求めちゃってるのね。解るわー。私も勝巳といろいろと試したわ。なんだかちょっと下の方がむずむずして来ちゃった。


「そ、そうなのね・・。まあ、しっかり蒼龍のことつなぎ止めておきなさいよ。そういえば戦略研ってわりと大学卒業したばかりの女性士官が多いんじゃ無かった?浮気の心配とか無い?」


「皇帝陛下!蒼龍が浮気なんかするはずありません!ど、どんな誘惑があったとしても・・・・」


「あ、あはは、ごめんなさい、ルスラン。ほら、蒼龍っていい男でしょ?ちょっと心配したけど、蒼龍なら大丈夫よね。うん、あいつ、浮気なんか絶対しないから大丈夫よ」


 はぁ、ルスランに心にも無いことを言ってしまったわ。ちょっと罪悪感。




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― 新着の感想 ―
前半は核被害レベルの惨劇。 後半はコメディ。 コントラストが鮮やかですね。 ところで、 →ルスランはその視線に気付いてニコって微笑み返した。 確かロシアは愛想笑いをしない国だったのでは?
更新お疲れ様です。 今話でちょうど500話到達ですね! おめでとうございます!!(祝祝祝) ここまできたら、もうロシア帝国が世界の覇権を握るとこまで見てみたいですね(笑) 蒼龍の未来技術知識で、歴…
まぁ13歳っていったら風が吹いても起つ年齢だからなぁ……と思ってたらそっちかいw
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