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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第1章 椎名、バイト始めました!
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面接2

奥の部屋は面接をする部屋、というよりは喫煙ルームだと思う。

部屋に入った途端にタバコの臭いがしたし、壁が黄ばんでて、空気清浄機とイスが3つだけ置いてあった。

広さは4畳くらいだろうか。

とにかくあんまり広くはない。

私は向い合わせで2対1の格好でイスに座った。


「自己紹介がまだだったな。オレぁあのバカ息子の親父の工藤一郎ってんだ。そいでこっちが家内の陽子だ。」


「今日はよく来てくれたね!よろしく!」


工藤くんのお父さんはしゃがれた低い声で簡単に挨拶してくれた。

工藤くんのお父さんは頭のてっぺんがちょっと禿げてて口の回りに髭を蓄えている。口も鼻も大作りだけど、目が垂れ目でシワがいっており、がさつそうだけど柔らかい印象を受けた。

腕の肘から下が太くって、体全体ががっしりしている。


お母さんの方は肩まで伸びた髪を三つ編みにして結んでおり、目がキリッとしていた。鼻もすっと通っていて、一見すると美人だけど、女性らしいというよりは男勝りな雰囲気があり、おっかさんという印象だ。


「あの。椎名めぐみです。よろしくお願いします!」


私は新ためてご両親に挨拶した。


「やめとくれやめとくれ!堅っくるしいのはあたしたち小に合わないんでね!めぐみちゃん?だっけ?あたしたちのことはそれぞれ陽子さんとチーフとでも呼んどくれよ!他のみんなもそう呼んでるからさ。」


「そうだな!俺たちゃそれで構わんから気にせんでくれよ?んじゃあこれからよろしくな!」


そう言ってえっと・・・チーフ?は握手を求めてきた。


「え?よろしくって、面接しないんですか?」


「あ?あー。何か質問でもあったか?」


「えっと・・・まあ採用していただけるのなら構わないんですけどね。なんか・・・あっさり過ぎて拍子抜けしちゃったというか。」


「あー。気にしないでおくれよ。まああのバカと仲良くしてくれてる物好きに悪いやつはいないだろうからね。推薦入学みたいなもんさね。めぐみちゃん!いつも淳也と仲良くしてくれてありがとね。これからもまああんなんだけど面倒見てやっておくれよ。なんならうちの嫁に来ないかい?」


そう言ってニヤニヤしながら陽子さんは私の肩に手を回してきた。あはははははは・・・。


「こらババア!椎名にいらんこと言ってんじゃねーっての!」


急に工藤くんが部屋に入ってきて抗議の声をあげ始める。


「あんた盗み聞きしてんじゃないよ!そんなんじゃめぐみちゃんに愛想つかされちゃうよ!男はもっとどっしりと構えな!」


「だから椎名はそんなんじゃねーっての!」


それからしばらくして親子のやりとりが終わり、工藤くんは部屋から追い出された。


その後はチーフと明日以降のシフトを決めて、チーフは売り場に戻ってしまい、陽子さんと契約書を書いて終了したのが6時頃になってしまった。


その時間ぐらいになるとお盆で忙しいのかみんな忙しなく動いていた。

しょうがないのでこの日は他のアルバイトの人にはきちんと挨拶せずに帰ることになったのだけど、代わりと言ってはなんだけど工藤くんとその妹さんと一緒に帰ることになった。


「淳也!ちゃんと椎名ちゃんを送っていってあげるんだよ!」


「ちょっ!わかったっての!母ちゃん声でけえんだよ!」


それは子供にもしっかりと引き継がれているとは思ったけれど、そこは言わないでおく。


「っていうかお構い無く。一人で帰るのとか慣れてるし。」


「ばあか!そんなことしたら俺が母ちゃんに殺されるっつの!」


「・・・はあ。まあいいけど。」


そんなやりとりをお兄ちゃんの陰から様子を伺う女の子が一人。


「て言うか工藤くん。そろそろ紹介してくれない?そこの可愛らしいお嬢さん。」


「おっ!?そうだそうだ!こいつは俺の二個下の妹の茜ってんだ!そうだろ!可愛いだろ!おいっ!茜!挨拶しな!」


工藤くんの妹さんの茜ちゃん。二個下ということは中学三年生か。背丈は160センチくらいだろうか。頭を後ろの上の方で二つ括っており、目鼻立ちはスッキリしているが、少しつり目で気が強そうな印象を受ける。鼻回りはそばかすがあって、思春期を思わせる。体のボリュームはさすがに私の方が勝っていた。


「こんにちは。茜ちゃん。あたし椎名めぐみ。よろしくね!」


と挨拶してみたものの、茜ちゃんは私の顔をじっと見たあと、


「ふんっ!」


とそっぽを向かれてしまった。

ありゃりゃ?なんか嫌われちゃってるっぽいや。


「おいっ!茜!兄ちゃんに恥かかせんじゃねーよ。ちゃんと挨拶ぐらいしろっての!」


「あ、いいのいいの!気にしてないから!それよりやっぱり私一人で帰れるから!自転車だし。そんなに遠くないし。じゃーねっ!」


そして私はさっさと自転車を走らせる。


「え!?おいっ!椎名!?」


「工藤くん!今日はありがと!また明日!」


自転車だと家まで五分もあれば着く。


わざわざ気を遣わせるようなことでもない。


「・・・もしかして、前途多難!?」


私は空に向かって呟いた。



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