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私のわがままな自己主張2(プロット)  作者: とみQ
第1章 椎名、バイト始めました!
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椎名恵子

私の家は築35年を過ぎた木造のアパートだ。


物心つく前にお父さんを病気で亡くして以来引っ越してきたのだという。


部屋は上下に二世帯ずつで合計4部屋しかない。

建物の真ん中には階段がついており、階段を登りきった所に両側にドアがあり、それが部屋への扉だ。

片方が私の住んでいる部屋で、その向かいの部屋は大屋さんの物置小屋に使われており、二階部分は実質椎名家のみが住んでいる。


部屋の中はというと、フローリングで8畳のダイニングキッチンとその隣に襖を挟んで畳の6畳の部屋の2DK。母親と2人暮らしするには十分な間取りだ。

お風呂とトイレはもちろん別だけど、お風呂は今時珍しいガスで焚くタイプのお風呂で、そこは昔ならではでちょっと不便かもと思ったこともあるけど、慣れれば特に気にならない。

住めば都ってやつ?


そんな部屋に住んではいても、家は貧乏で、私のお母さんである椎名恵子はほぼ毎日休みなく働いている。

パートを3つ掛け持ちしているみたいで、朝は6時頃から仕事で夜は9時頃まで働いている。


そりゃ過労で倒れるわよとは思うけれど、7月に実際倒れるまではお母さんの大変さを見に染みて感じていなかったんだろうと実感した。


だからこそ私は、この8月に部活を辞めて、少しでもお母さんを楽させるためにアルバイトをする決心をしたのだ。

そして高校を卒業したら、就職をして、お母さんには出来るだけ無理せず暮らせるようにしてあげたい。



「ただいま。」


「あ、お帰りなさい!お母さん。」


私はいつも疲れているであろうお母さんを笑顔で元気よく迎えることに決めている。

少しでも私が元気でやっている姿を見せたいから。


私のお母さん、椎名恵子は身長170センチくらいあり、女性にしては大きくて、すらっとしていて、普段過労がすぎるのか、細すぎるくらいに見える。

髪も切りに行くのが面倒なのか、背中まで伸ばしており、自分ではよくわからないけれど、人からは親子で顔がよく似てると言われる。


お母さんはやっぱり疲れた顔をして、帰ってくるといつも洗濯機を回した後、お風呂でシャワーだけを浴びる。

そしてそのままお風呂を洗って出てくるようにしている。

その後簡単に家の掃除をして最後に洗濯物を干して10時半過ぎには寝てしまう。

と、こんな風に時間を無駄にはしないように生き急いでいるように見えてしまうのだ。

そして朝は4時過ぎには起きて、簡単な朝食とお弁当を作ってくれて、洗濯物を取り込んでささっとしまった後、テーブルに千円を置いて、6時前には仕事に向かう。その他のことは3つの掛け持ちのパートのうちどれかがない時にやっているようだ。

とにかくうちのお母さんは忙しなく生きている人だ。


「ねえ。お母さん。」


服を脱ぎかけたお母さんに私は声をかける。


「何?どうしたの?」


お母さんはいつも淡々と話をする人だ。

冷たいわけでもないけれど、特に優しく話すでもない。

感情の起伏が乏しいというのだろうか。

そしてさっきも述べたけれど、生き急いでいるように、どんな時でも止まって話をしようとはしない。

今も話しながら服をぱっぱと脱いで、洗濯機に入れている。


「私今日部活辞めてきたよ?」


「どうしたの?何かあった?」


そういう話をしながらも、お母さんは手を止めることなく、洗剤と柔軟剤を洗濯機にセットしていく。


「うん。私、バイトしようと思って。」


「・・・そうなのね。わかったわ。好きになさい。」


そう言って洗濯機のスイッチを入れて、そのままお風呂へ行ってしまった。

反対されるのも面倒なんだけど、特に興味も無さそうにさらっと答えられてしまうのも、なんだかね。


しばらくしてシャワーの蛇口を捻る音と水が流れる音が聞こえてくる。


「はーい。好きにしまーす。」


私は誰に答えるでもなく呟いた。





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