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こんにゃく叩き職人が使うこんにゃくを作ってる人の話

こんにゃく叩き職人のまさかのつづきの話ができました。

意味がわからないのはあいかわらずです。

世の中には無くてはならない仕事がある。


病気を治すための医者や看護師、不自由な人を助ける介護士、食べ物を作る農家、人を育てる教師、そして魔物と戦う魔法少女とそれを支えるこんにゃく叩き職人だ。

だがそれよりも大事なのは、その人達を支える家族と、こんにゃく叩き専用のこんにゃくを作る人達である。




私は代々続くこんにゃく叩き職人達が使うこんにゃくを作っているこんにゃく芋農家の次期跡取り娘である。といっても言ってしまえばただの小さなこんにゃく芋農家の芋娘なのだが。そんな私には“姉さん”がいる。だが姉さんは家にはいない。何故なら姉さんは“魔法少女ハムカ”になったからだ。



我が家は昔から家族みんな仲が良かった。パパとママはこんにゃく作りで忙しくて、姉さんと2人で居ることも多かったが姉さんはいつも明るくて優しかった。たまに簡単な料理も私のために作ってくれた。でも正直姉さんの作る料理はいつも激烈で食べられたものじゃなかった。もしかしたら魔物だってこれを食べたら倒れるかもしれない。それぐらいのレベルの料理の出来なさではあったが、作ってくれた手前なんとか食べきっていた。姉さんはいつも料理を作る度に自分にはこの家のこんにゃく作りを継ぐことができないと落ち込んでいた。そんな姉さんが好きだったが、同時にコンプレックスでもあった。



私は勉強や運動も才能は無かったけど、頑張って努力したから人並みに良い成績は取っていた。だから先生や友達や家族から褒められた。嬉しかった。でもなぜか満たされなかった。いつの間にかずっと走り続けなきゃ行けない気持ちになって、自分の首をしめていたのかもしれない。“養殖の器用貧乏、ちょっと不幸”という感じだった。頑張ってるし全然ダメじゃないけどなんかダメな気がした。



一方の姉さんは小さい時から勉強も運動もイマイチだったが、何をしても何もしなくても周りに人が集まってきて愛されていた。まさに“天然物のカリスマアイドル”だった。私と似たような顔や目や鼻や口なのに私よりも可愛かった。1回だけ黙って姉さんの服を着てみたことがあるが、全然似合わなかった。何故同じ人間で同じパーツがついてるのにこうも違うのか悩んだ。自分と同じ血が流れてるとは全く思えなかった。何をどうしたって姉さんにはなれない気がした。



そんな私達に転機が起こったのは、姉さんが中学校に入ってしばらくしてからのことだった。姉さんのもとに魔法少女にならないかと“お迎え”が我が家にやってきたのだ。よく聞くのは可愛いマスコットみたいな存在が来るという話だったのだが、我が家に来たのは変なサングラスをかけたツインテールのよくわからない存在だった。ちょっと胡散臭くて怪しかったどうやら本物のお迎えらしく、姉さんはとても喜んだ。元々魔法少女に憧れていて、やれあのベテラン魔法少女が今日も活躍したとか、最近今までにいなかったタイプの新しい魔法少女が現れたとかいつも話していた。自分も誰かの役に立てると嬉しがり、パパとママはケガをしないか心配してたが喜んでいる姉さんを見て魔法少女になることを許した。魔法少女になることが決まったら姉さんは魔物がたくさん出る都会に行くことになった。生活は魔法少女支援団体やら何やらがなんとかしてくれるらしい。そんなこんなで私達は離れて暮らすことになった。



姉さんは定期的に私やパパとママに連絡をくれて、いつも気にかけてくれていた。最初はちゃんと返信していたのだがどんどん頻度が落ちていった。なぜなら私は姉さんが居なくなってから毎日がつまらなく感じていたからだ。そしてそれを認めたくなかったからである。コンプレックスでもあった姉さんと離れたのに、心にぽっかり穴が空いたようだった。気分転換に外に買い物に行っても知り合いのおじさんやおばさんがいつも「お姉さん元気?」って聞いてくる。私の事なんて誰も興味ないし深く聞いてこない。私にかける言葉が見つからないから姉さんの話題を出す。別にいいんだけどね。

………よくないけど。

どこに行っても辛くなるだけだからその気持ちを感じないようにするために家でパパとママと一緒にこんにゃく叩き用のこんにゃくを作っていた。2人は私の気持ちを知ってか知らずかたくさん手伝わせてくれた。地味でコツコツする作業は結構好きだったから楽しかった。人前に立つのは姉さんに任せて、私はこんにゃく芋農家の跡取りになる事を勝手に決めて色々妄想していた。



気持ちの整理がつかない事を畑仕事が忙しいからという大義名分にすり替えて姉さんからの連絡や電話を無視した日々をしばらくおくっていた。だがある日パパとママができたばかりのこんにゃくを契約しているこんにゃく叩き職人派遣会社に届けに行った日のことだった。車の荷台に出荷するこんにゃくを置いて、私は2人を見送った。やっと忙しい日々が終わった。畑に置いてある椅子に座って久しぶりに姉さんの事をぼんやり考えていた。うまくやってるのかな。普段何食べてるのかな。ケガとか風邪とかひいてないかな。





うまくやってるお前と違って

あの子はどこにいたってバチェロレッテ





うまいこと言うね(笑)そうだよな、うまくやってるよな。

きっとモテてるんだろうな。……………………え?





ここはこんにゃく芋畑

ただの畑で必要なくて

お前もホントは要らなくて

ただただ時間に流されて

自分のことすら知らなくて

あの子は能ある鷹だから

可愛い子だから旅をしていき

お前を置いて進んでく




なにこれ?




お前は魔法少女になれない女

足りない力 少しもない華

今からここを統べる我はこんにゃくの花



辺りを見回すといつの間にか畑がどんより暗くなって荒れていた。そしてさっきまで無かったはずの1本の真っ赤なこんにゃくの花があった。花は禍々しく咲いている。こいつだ!こいつが直接脳内に話しかけてきてる!畑が荒れているのもこいつがエネルギーを吸い取ってるんだ!


勝手に脳内に入って“口撃”してくるのはもちろん、私とこんにゃく芋畑を傷つけた。絶対に許さない。私は家の中に駆け込み、押し入れにしまってあった我が家に代々受け継がれているこんにゃく叩き棒と、今日作ったばかりの新鮮なこんにゃくをキッチンから持ってきた。よくもやってくれたな。いいよ、受けて立つ。こんにゃくを叩いて家を守りつつ、そのリズムに合わせて口撃する。私の口撃が効くのか分からないが、言われっぱなしは嫌だった。最近こんにゃくを作ってばかりで叩くのは久しぶりだったが、自然と体が覚えていた。私は全国のこんにゃく芋農家とこんにゃく叩き職人の為に戦う。神様、仏様、ご先祖様、そしてこんにゃく叩きの神様、私に力を!



〜私のターン〜


Yo! よくも侮辱してくれたな 私のことを!

覚悟しなさい うちの畑を荒らしやがって!

不気味なお前を倒す私は不思議の国のアリスです

お前の存在、姉さんに比べたらLike a アリのペニスです

小さすぎて何も見えないです!!



〜こんにゃくの花のターン〜


男は求める女のVirgin

女は求める男にBirkin

今の世の中居ないよ聖人

我に跪け人間全員



〜私のターン〜


魔物が作る世界なんて所詮偽り シルバニアファミリー

たとえちっぽけに見えても尊い人間達の営み

見せてやるよ 私の力の限り

世界を守るためなら夕べに死すとも可なり!!!



激しい戦いになった。でも私は口撃とこんにゃくを叩く手を緩めなかった。姉さんはいつも魔物と戦ってる。私だって姉さんと同じ血が流れてる。負けるもんか!この時私はこんにゃく芋畑でこんにゃくの花と心中する覚悟を決めていた。



そしたら急に「ーーーーちゃんっっ!!!」と遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと白い四駆の軽トラに乗った魔法少女姿の姉さんが猛スピードでこちらに向かってきていた。ついでに明るくて楽しげな音楽もどこからともなく流れてきた。「大丈夫?畑が禍々しい雰囲気だけどどうしたの?」と聞いてきたが正直こっちがどうしたの?と聞きたい。なんでいるの?魔法少女って飛べるんじゃないの?「久しぶりに家に帰りたくなって来ちゃった!オフだから久しぶりに魔法を使わないでレンタカーで来たの。最近免許とったんだ♡」そうなんだ。免許取れておめでとう。軽トラ選ぶあたりやっぱり魔法少女とはいえ農家の娘だね。

「ありがとう!ってそんなことはどうでもいいよ!どんな状況?」

魔物がうちの畑に大きいこんにゃくの花を咲かせてとり憑いたからこんにゃく叩きながらラップバトルしてた事を話したら、驚いていた。まぁ驚くわな。「よくここまで頑張ったね!あとは私に任せて!!」そう言うと姉さんはどこからともなく出てきた魔法のステッキでこんにゃくの花を根本から切った。そしたらこんにゃくの花についていた魔物は雄たけびをあげて消えていった。なんだ、切ればよかったのか。早く知りたかったな…



荒れたこんにゃく芋畑と白い軽トラをバックに魔法少女姿の姉さんが立っている。軽快な音楽はもう鳴り終わっていた。「それにしても久しぶりだね。連絡しても返信ないから心配してたんだ。…忙しかった?」姉さんに会った事と、白熱したラップバトルの後で感情が高まってしまい今まで閉じ込めていた感情がマグマのように溢れ出てしまった。


「私ずっと姉さんが苦手だった」

「え」

「かわいいし、優しいし、スタイルもいいし、どこにいても人気者で一緒にいると自分が惨めに思えて嫌だった」

「……」

「だから姉さんが魔法少女になって出ていった時、嬉しかった。やっと眩しくなくなると思った。でもすごい寂しくなった。自分でも信じられないけど姉さんのマズイ料理も食べたくなった。でも1人で頑張ってる姉さんに絶対言えなくて、どうしたらいいか分からなくて連絡できなかった。」


手に持っていたこんにゃくがいつの間にか生温かくなっていた。形も崩れている。


「でもさっきこんにゃく叩きながら戦ってて思ったの。やっぱり昔から姉さんの事が好きだし、憧れだったから嫌いになれないって。絶対私と姉さんとパパとママの居場所であるここを守りたいって。」


こんにゃくだけじゃなくて私の顔も崩れた。

そしたら姉さんは私に抱きついてきた。


「あの、あのね、私そんなキラキラした人間じゃないよ。何にもできないやつだもん。昔から勉強は頑張っても良い点取れないし、身体は硬くて運動はできないから皆に笑われるし。派手で可愛いお洋服が好きだから着てるけど、知らない人からジロジロ見られたり嫌な事言ってくる人もいてムカついてる。でもそれは全部私のせいだから別にいいんだけどね。教習所通ってた時だって予約した日1日間違えて行っちゃったり、料理だってできないからコンビニで買った辛いラーメンとかサラダうどんとかツナマヨおにぎり食べてばっかりだし。それで肌荒れしちゃってるから魔法でたくさん誤魔化してるんだ。この前もせっかくの憧れの〈魔法少女アヤコ〉や〈ネキ・ロココ・ウィッチ〉と一緒に戦えるようになったんだけど、私失敗ばかりで足を引っ張ってるの。2人共優しいから全然大丈夫だよって言ってくれるんだけど、その優しさがつらくて。……だからしょっちゅう連絡してたのは私が寂しかったから。でもそんな事言ったら心配させちゃうかもしれないし言えなくて、でもみんなに会いたくて帰ってきたの。免許取ったのも魔法少女として活躍できてないから、違うところで少しでも頑張ってる所見せたかったからだし」


姉さんが泣いてる所を見たのはこの時が初めてだったのかもしれない。私は味わった事ないけれど、どうやらスポットライトが当たっている場所は観客席よりも熱くて目を開けてられないほどの光を浴びてるらしい。


「姉さん、ごめん。私姉さんのこと全然知らなかった。私は姉さんの辛さを分かち合えないけど、でも姉さんがどんな姿やどんな場所にいても大好きだから。それは覚えていて。」


「…っっん、うん。。ありがとう。。。」

姉さんは自分にかけていた魔法を解いたのか、肌が荒れて髪の艶が無くなった姿になった。服も普通のTシャツとズボンに変わった。それでも姉さんはあの頃と変わらず可愛い姉さんだった。


「それにしても魔法少女じゃないのに魔物と戦ったなんてすごいね。私よりも全然強いよ!」「そんなわけないじゃん」「そんなわけないことないよ!だってこんにゃく叩きながら魔物とラップバトルするなんて私にはできないもん」それはホントにそうだと思う。冷静にさっきの自分をふり返ってみたら笑えてきた。それにつられて姉さんも笑い出した。


そんなこんなしている内にパパとママが帰ってきた。姉さんは帰ってきてるし、畑は大荒れだしでびっくりしていた。事情を話すとお前たちが無事で良かったと強く抱きしめられた。



荒れたこんにゃく芋畑を家族総出でこんにゃくを叩きながら整備している時に姉さんが「私もいつか立派な魔法少女になれるかな…?」とつぶやいた。

「なれるよ。それでいつかTVにも出て有名になって、姉さんを目指して魔法少女になりたい子が出てくるよ。そしたらこんにゃくの親芋みたいにその子がまた誰かの憧れの人になったりして」姉さんは「そうかな〜」と少し照れていた。


「ていうか私もね、実は魔法少女になったんだよ」「え???」

「こんにゃくの花言葉覚えてる?不死・再生・神秘じゃん?コレって魔法少女にピッタリでしょ?私がやってるこんにゃく作りとかこんにゃく叩きって結果的に街を守る事に繋がってるわけだから、私も姉さんと同じ魔法少女だよね?」

自分でもあまりに暴論過ぎるとは思う。でも姉さんは一瞬豆鉄砲を食った表情をしたあと、いつもの優しい笑顔になって何度も頷いてくれた。畑だけじゃなくて姉さんとの間にあった要らないくぼみも均せた気がした。



夕飯は姉さんがみそ田楽を作ってくれたので家族みんなで食べた。あいも変わらず料理は下手だった。みそに砂糖を入れ忘れたのでめちゃくちゃしょっぱかったが、でもなぜか不思議と甘さも感じた。





つづく…?

前回に引き続き勢いで終わらせました。正直こんにゃく叩き職人関係ないけど、思いついちゃったので記念に書きました。オタクなのでラップを1回はしておきたかったので満足です。終盤はまどマギ映画のED曲(君の銀の庭)の雰囲気を思い浮かべながら書きました。

ちなみに姉さんが白い軽トラを借りてきたレンタカー屋さんは、〈井村レンタカー〉といいます。もしかしたらパパの名前はハムレットで、ママの名前はユウカかもしれません。

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